【鹿児島県霧島市】想いを明日へ継ぎ、社会に臆することなく挑戦できる世界をつくる / 和繼 表現者・井料明歩さん 彫金師・小平幸洋さん
インタビュー
「和を継ぐ、私を継ぐ」を概念に、和柄と個々の想いを掛け合わせ、着物の価値創造と和装に合わせる装飾品を手がけ「日本の文化」を提供するブランド『和繼』。2023年7月7日に立ち上がり、表現者・井料明歩さんと彫金師・小平幸洋さんの2人で活動を展開しています。そんな2人から立ち上げの背景や今後思い描く未来像などについて聞きました。
思うがままに、自己表現を
2020年。グラフィックレコーディングやイラストなどを通し「自分のやりたいことは何なのか?」と模索していたという井料さん。あるイベントに出店した際、自身のブースに目を留められない現実を目の当たりにし、一つの区切りをつけたといいます。
「その時は“何者かになりたい”“自分の表現した作品の価値を感じてほしい”という想いが強かったと思います。多くの人に興味を示してもらうために、一目でわかりやすい動物や地域ゆかりの絵を描いていたのですが、私が本当に表現したいことではなかったんだと気づきました。」
当時、着物といった和装にちなんだ活動も取り組みつつ、それに加え、井料さんなりに感じたことを思うがまま自由に描くスタイルを確立していったそうです。
「元々存在しているモノだとカタチや色合いなどを認識されているので、周囲の評価を気にしてしまい、思うように表現できませんでした。でも、描きたいものを思うがまま自由に描く方が楽しいですし、自己表現にも繋がってきたと感じています。」
2021年。当時、会社員として勤務していた小平さんはオンライン上で彫金師の存在を知ります。次第に興味が深まり、趣味レベルで指輪などを製作し始めたそうです。
「どんどん趣味の範囲を超え“自分がつくったモノがもっと多くの人の目に触れてほしい””そのためにお店をつくりたい“と思うようになったんです。それが2022年の夏頃でした。その年の11月には彫金師として開業し、今に至ります。」
そんな井料さんと小平さんの出会いは2022年の秋。小平さんが店舗を構えていた場所へ井料さんが偶然訪れたことがきっかけだったのだとか。
井料さんの名刺に描かれていたデザインを見るなり、その世界観に心魅かれ、小平さんから「このデザインで彫金の作品をつくってみたい」と提案があったことが今の2人の動きへと繋がっていくのです。
想いを明日へ繋いでいく
デザインをもとにバングルとして仕上がった作品は小平さんとして納得のいかないものだったといいます。その時の心境をこのように語ります。
「改善点が多く、僕としては未完成の状態だと感じました。商品化に至っていませんが、カタチとしては仕上がっているので、徐々にブラッシュアップしてきちんと完成させたいです。」
未完成とはいえ、自身が描いたものが現実世界にカタチとして出てきたことに感動を覚えた井料さん。現在は和繼の象徴マークになっている「寄り添い」の帯留(デザイン:井料さん 彫金:小平さん)をつけて外出するようにしているのだとか。
そんな2人にとっての転機が2023年4月に京都へ訪れた時のこと。ご縁で現地の着物屋と繋がり、それがきっかけで帯留め(デザイン:井料さん 彫金:小平さん)をつくったそうです。実際のオーダーにはならなかったものの、2人の中である想いが芽生えたといいます。
“自分たちのブランドを立ち上げたい。”
そこから着物の絵付、箸や和柄を取り入れた宝飾品を拵えたブランド『和繼』が誕生したのです。
「和」は“日本の伝統”や“調和する”。
「繼」は“より強く受け継いでいく”をそれぞれ意味します。
人と人との関わりを大事にしつつ、これまで受け継がれてきたモノや紡いできた人の想いときちんと向き合い、それらと和柄を掛け合わせたい。『和繼』の名はそんな二人の気持ちから由来しているといいます。
「お客様には和繼を通して“今の自分の想い”に気づくきっかけにもなってほしいと思っています。そこから、その想いを明日へ繋いでいってほしい。そんな気持ちも名前に込めました。」
「ブランドを立ち上げてから“自分が大事にしたい世界観が伝わる人がいて嬉しい”という声もいただいています。まだまだ反省点も多いので、一人ひとりのお客様としっかりと向き合えるように初心は忘れないようにしたいです。」
井料さんはお客様の想いを聴き、それをデザインに。
小平さんそのデザインにお客様の想いを乗せてカタチへ。
それぞれが役割を担い、感謝や尊敬の念をお互い持ち合っているからこそ、和繼だからこそ表現できる世界観が一人ひとりの手に届いているように感じます。
「将来的には海外にも販路を広げたいと思っています。オーダーはもちろんですが、私たちの自己表現した作品を評価してもらい、手にとった誰かが人生を歩んでいく上で少しでも笑顔に繋がるきっかけになれたら嬉しいです。」
臆することなく挑戦できる世界へ
今年8月、仕事仲間を一緒に『合同会社chinjuuuuu』を立ち上げ、さらなる挑戦の幅を広げています。和繼とは違った視点や力を持つメンバーと組むことで、クリエイターが苦手とするところを補い、それぞれの力に自信を持ち、社会に臆することになく挑戦できる世界を目指しているといいます。
2人は拠点づくりとそこから各メンバーへと繋ぐ役割を現在担っているのだとか。
「拠点づくりもですが、情報収集や仲間づくりにも力を入れています。将来的には私たちの拠点周辺を中心としたクリエイターが集まるまちをつくりたいと思っています。そのためには、クリエイターや関わる人たちが住む場所も必要です。そのための空き家調査や家主との交渉を霧島や伊佐周辺で行っていく予定です。」
「和繼としてモノづくりが得意ですが、たとえば販路開拓や経営、広報といったところは苦手だったりします。おそらく他のクリエイターも同じような課題を抱えている人は多い気がしていて。だから、そういう人たちをサポートできるような環境づくりもできれば、今まで以上に自信をもっていろんなことに挑戦できると思うんです。」
少しずつ仲間や武器を増やしつつ、表現の可能性を広げる井料さんと小平さん。そんな2人から今後の展望を最後に聞きました。
「2人とも共通しているのは人との繋がりを大事にしてるところです。今は拠点づくりや仲間探し、情報収集といった基盤と固まっている段階なので、それらを強みや国内や海外にも僕らも含めたクリエイターが羽ばたけるような環境をつくっていこうと思います。」(小平さん)
「ありがたいことに私たちが持っていない力を持つ仲間が少しずつ増えつつあります。だからこそ、私たちは自分たちの力を発揮しながら表現し、信頼してくださる人たちのお役に立てるように、尊敬と感謝の気持ちを忘れず努力を続けていきたいです。」(井料さん)
屋号 | 和繼 |
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備考 | ●和繼 SNS https://www.facebook.com/p/和繼-100094346081143/ インスタグラム https://www.instagram.com/wakei0707/ X |