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ふらっと、若狭路の旅へ。【文化編】〜金沢から北陸新幹線でゆく福井〜

2024.12.04

金沢から福井・若狭路へ、ふらっと小旅行。【食編】に続き、今回は【文化編】ということで、 若狭路の文化にまつわる場所をご紹介。今回めぐった中には、時”や“命”に向き合うきっかけとなるような、印象深い場がありました。

ふらっと、若狭路の旅へ。【文化編】〜金沢から北陸新幹線でゆく福井〜
三方五湖(みかたごこ)レインボーライン展望台からの眺め

積み重ねられた“時”を想う。「年縞博物館」

ふらっと、若狭路の旅へ。【文化編】〜金沢から北陸新幹線でゆく福井〜

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「年縞(ねんこう)」とは、プランクトンや鉄分など、季節によって異なるものが湖の底に毎年積もることで、縞模様になった泥の地層のこと。福井県にある三方五湖の中で最も大きな湖である「水月湖」の年縞の長さは約45mと、なんと世界一。7万年間、毎年途切れることなく積もり続けて形成されてきた“年代を知るものさし”。年縞に含まれる花粉の種類や量、火山灰などから、当時の気温や降水量、火山活動がわかるといいます。

円柱状の年縞シアターでは、美しい映像が正面だけでなく床面にも映し出され、地中に潜るような体験をしながらガイダンスを聞くことができます。ガイダンスの中の「年縞とは、過去の景色 を教えてくれるタイムマシン」という言葉が印象的でした。

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没入感を味わえる

そして、“年縞のステンドグラス”ともいわれる、採取した年縞の実物標本の展示は圧巻。

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膨大な時間の積み重ねを目の当たりにし、圧倒される

書き込まれたコメントから過去の景色を想像し、思いを馳せます。

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過去の景色を想像してみる
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裏側には人類と環境の展示も
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わかりやすい展示と、ガイドさんの熱い解説も見どころ。ジェスチャーを交えて語ったり、「4万1000年前は、花火ではなくオーロラを見て愛を誓っていたのかも…?」なんてロマンチックな想像が飛び出したり、年縞について楽しく学ぶことができます。

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ジェスチャーを交えながら、熱く、丁寧に解説

土の積み重ねは、時の積み重ね。過去と現在と未来が同じ場所にあるような、果てしない時間と向き合うことのできる空間でした。

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極楽浄土から“今”をみつめる。「西福寺」

「西福寺(さいふくじ)」は、応安元年(1368年)に開基された浄土真宗寺院で、創建以来、 歴代天皇家や足利将軍家の勅願所となり、歴代領主の庇護を受けた由緒ある寺院です。

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現在は御影堂ほか 1棟は保存修理工事中。210年ぶりの大修理で、令和4年から始まり、約15年間と長期にわたって行われます。見学会も定期的に実施予定とのことで、この“令和の大修理”の目撃者になれるチャンス。 今回は、修理中の御影堂以外の阿弥陀堂や書院、四修(ししゅう)廊下などを見学。

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極楽世界への道である「四修廊下」

中でも興味深かったのが、極楽浄土を表現したといわれる国名勝指定の書院庭園。庭園内は散策が可能で、少し高い場所から書院の方を見下ろすと、“あの世”から“この世”を眺めているという構図に。“あの世”と“この世”を行き来し、書院に降りた自分は「もしかしてすでに生まれ変わってい るのかも?」そんなことを考えるような体験でした。

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“あの世”からの眺め

軽やかなテンポで丁寧に案内してくださった舘(たち)さんは、西福寺の血縁者ではないけれど、好きな場所であり、守りたいという思いから運営をお手伝いをされているんだとか。永く愛されて、守られてきた寺院であることを強く感じました。大修理を終えた姿を見られるのが今から楽しみです。

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一滴の水の中にも“命”あり。「若州一滴文庫」

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「若州一滴文庫(じゃくしゅういってきぶんこ)」は、福井県大飯郡本郷村(現おおい町)出身の作家水上勉氏(1919-2004)が主宰した若州人形座の拠点、宗教・美術・文学などの資料を展 示する施設として、1985年に開設されました。現在は、水上氏の想いを受け継いだ NPO 法人一滴の里により運営されています。
「若州一滴文庫」という名称は、儀山善来(ぎさんぜんらい)和尚の「曹源一滴水(そうげんいってきのみず)」という「一滴の水の中にも命があり、粗末にせずきちんと活かしてほしい」という教えが由来となっているそう。

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1984年竣工の本館は、外観は平屋、内部は三階建大壁造りの土蔵風の建物で、立派な梁や、手斧(ちょうな)で削った手すりなど、触って感じることができるのも見どころ。
車椅子でも見学ができるようスロープを中心とした展示となっていますが、40年前の建築にも関わらずスロープがついているということは、当時からすればとても珍しいこと。水上氏がバリア フリーをいち早く取り入れたのは、障がいを持って生まれた次女のためでもあるそうです。 障がいのある人には部屋を与え、その決められた小さな世界で生涯を過ごすようにと考えられていた時代。その中で水上氏は、障がいのある人に「役割」と「場所」を与えるために、竹人形文楽という文化、そして、演者として社会に参加することができる場所である、くるま椅子劇場を作ったのだといいます。

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舞台背景にあたる開口部。竹人形のスケールに合わせて、あえて細い竹を植えているのだそう

竹人形館では、水上作品に登場する竹人形を約60体、人形の頭約250点を展示。二階は、竹や文楽に関する様々な展示を行うスペースになっています。今回訪れたときは、これまでの公演の写真が展示されており、生気が宿った表情のあまりの生々しさにドキッとしました。
若州人形座による竹人形文楽の上演は一年に一度。2025年には、水上氏の代表作「越前竹人形」が上演される予定とのこと。この機会は見逃せません。

旅のおわりに

【食編】【文化編】と綴ってきましたが、福井の、若狭路(嶺南地域)の無限の魅力に驚き、それに関わる方々の愛の深さがひしひしと伝わってくる体験の連続でした。【食編】にも登場した久住昌之さんがおっしゃった「おもしろいことって時間がかかるし、いっぱい歩かなきゃ出会えない」という言葉。その言葉通りで、実際に訪れなければわからなかっ た魅力とたくさん出会うことができた小旅行でした。

おもしろいこと、おもしろいものたちは待っています。ふらっと、小旅行に出かけてみては。