「暮らしびらき」をテーマに大阪の長屋が一斉にオープン!「オープンナガヤ大阪2024」イベントレポート
イベントレポート
「商いの場として」「生活の場」として今も様々なかたちで活用されている大阪の長屋たち。このイベントはそんな価値・魅力・可能性を多くの方に発信し、つながりを生み出すべく、大阪公立大学生活科学部の学生たち主導のもと2011年度から毎年秋に開催されています。この記事ではイベントの様子の一部をお届けします。
今年は大阪市、堺市、東大阪市に残る長屋36戸が開放されました。住居として使われている長屋もイベント期間中はその一部が来場者に開放され、長屋での暮らしを拝見することができます。タイミングが良ければ家主や住人の方に直接長屋の暮らし等、ここでしか聞くことのできない話を聞くこともできるかもしれません。2日間で全て回りきるのはなかなか難しいので、WEBで公開されているパンフレットを見て巡りたいエリアを決めておくのがおすすめです。一部の長屋でガイド付きツアーも開催されますので事前にチェックしましょう。
●オープンナガヤ2024|大阪公立大学
WEB:https://www.omu.ac.jp/life/opennagaya/
Instagram:https://www.instagram.com/opennagaya/
今回は大阪市生野区、平野区の長屋を中心に巡りました。
道の両側に長屋が数十軒と軒を連ねる街並みが残る「須栄広長屋」
大阪環状線外側の戦火を逃れたという古い町並みが残る一角。この長屋たちは取り壊し直前に奇跡的なタイミングで長屋再生を推進されている大学の先生との縁が繋がり再生されたそうです。今ではこの長屋の魅力に共感した若者を中心に入居中。どの長屋もとても丁寧に使われており、寒さなど長屋暮らしの大変さもありながら工夫してそれぞれ楽しんで暮らしている様子を見せていただきました。
まずはシェアハウスとして利用されている長屋の共用部を見学。それぞれが食事をしたり談笑したり…普段の生活はもちろん、年末には周辺長屋の住人とオーナーとの忘年会もここで開催されているそうです。
未改修の長屋も見学することができました!未改修とはいえ状態がよく、大切に使われていたのだろうなと暮らしを想像しながら見るのが楽しいです。今ではなかなか見ることのできないデザインの欄間や型板ガラス等を見ることができるのもこのイベントの魅力の一つ。
都市型で職住混在の長屋暮らし「ヨシナガヤnew」
大阪のまち残る長屋を改修し続けている建築家・吉永規夫さん(Office for Environment Architecture)のヨシナガヤシリーズ最新作を見ることができました。
街から気軽に入れるように土間スペースが続いていて、上がり框を超えると仕事ができるカウンターに。そして階段を登ると住まいへと繋がる。パブリックとプライベートのグラデーションがすごく気持ちいい空間でした。かつて憩いの場として使われていた玄関土間に小商いや打合せスペースとしての要素が加わり、長屋の良さと可能性を感じます。
大阪に眠る長屋を再生する本拠「ヨシナガヤ」
大阪市内にある築80年を超える平家の2軒長屋。吉永さんご夫婦の住まい兼設計事務所として2014年に改装された長屋。改修前にご自身が住んでいたこともあり、長屋ならではの音問題など実体験を元に改修されています!ヨシナガヤは両日10時から22時まで見学できるという寛容さ。夜は吉永さんご夫婦と参加者、スタッフの皆さんとワイワイしながら夜会を楽しみました!
オープン長屋の期間中は「長屋を壊すのか、活かすのか」などの相談も沢山聞こえてきました。長屋保全の第一歩としてこのような場は大切だなとしみじみと思いました。
これからの長屋の可能性と継承
「長屋は価値のある建物」という考えはまだまだ世間に浸透していないように思います。そのため大阪のまちでも歴史ある長屋が取り壊され、マンションや駐車場になってしまうという風景をよく見かけます。しかし大阪の長屋は、大阪の暮らしや文化を継承するための重要な資産なのだといくつかの長屋を回って改めて感じることができました。この記事を読んでより多くの方にこのイベントについて知っていただき、長屋の可能性を感じて欲しいです。そして長屋ファンが増えることで大阪長屋の魅力が継承されることを願います。