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Uターン次女の就農日記(9)/習うより慣れよ、の直接販売

2025.01.09

2023年4月。山形にUターンした。山形に戻るのは、高校卒業以来。

Uターンするまでは、大学卒業から6年間、公務員として働いてきた。29歳のアラサーにして、脱・公務員からの就農。退職前、周囲からかけられた声の中で多かったのは「頑張ってね」という応援と、「辞めるなんてもったいない!早まるな!」という声。後者は、主に身内や親戚から(笑)。どちらの声もありがたく頂戴して、約10年ぶりに山形に戻ってきた。

Uターン次女の就農日記(9)/習うより慣れよ、の直接販売

Uターンしてから1年半が経過し、ついに30歳になった。怒涛のさくらんぼ収穫を終え、次は桃、和梨、と猛烈な暑さの中での収穫が続いた。

Uターン次女の就農日記(9)/習うより慣れよ、の直接販売

就農して2年目となる今年度は、1年目に感じたことを踏まえて少しずつ新しいチャレンジを色々試してみたいと考えていた。その中でも特に1番チャレンジしてみたいと思っていたことは、直接販売だ。

小規模家族経営の我が家は、直売所などもなく、今の販売経路はほとんど市場や産直である。市場に卸せば必ず買い取ってもらえるし、産直も1箇所にたくさんのお客さんが来てくれる分、売れる確率が高まる。しかし、いずれも間接的な販売のため、買ってくれる消費者の方の顔は見えず、どんな方がどんな思いで商品を買ってくれたかは知る術がない。

Uターン次女の就農日記(9)/習うより慣れよ、の直接販売

一生懸命作った果物たちが、どんな人の手に渡ったのだろうか? その人たちは食べてみてどんな感想を抱いただろうか?生産者として知りたいと思ったし、いち消費者の立場としても、誰がどんな場所で、どんな思いで作ってくれたものなのか?は大事にしたいと思っている。

そんな折、創業支援を行う山形大学の力をお借りして、最寄りの駅で果物を直接販売させてもらうことになった。山形新幹線の停車駅となっているこの駅で市内の果物や特産品を販売することで地域を盛り上げる取り組みにも繋がるのではないか、ということを狙った試験販売である。

初めての直接販売!何を販売するか、どんなパッケージにするのか、レイアウトはどうしよう?など、考えることがたくさんあった。

Uターン次女の就農日記(9)/習うより慣れよ、の直接販売

Uターン次女の就農日記(9)/習うより慣れよ、の直接販売

Uターン次女の就農日記(9)/習うより慣れよ、の直接販売
写真上)販売の様子。駅の一角を借りて販売しました。 写真下)同じ市内の農家さんと共同で販売したところ。

そして、いざ販売の日。

私:「ぜひ、美味しい旬の果物いかがですか??」
お客様:「いやぁ〜〜、皮剥いてくれる人、家にいないからな〜〜!」

販売を通して、一番衝撃を感じた一言だった。え!どういうこと!?りんごの皮を剥くのってそんなにハードル高いん!??自分でやらないの!!?
どうやら同じ皮を剥くのでも、「みかん」と「りんご」では雲泥の差があるらしかった。

また別の日は、中国系のビジネスマンが一気に20〜30人訪れたこともあった。

「コレハ、アマイ??」
「コレハ、カワ、ムカナクテモ、タベレマスカ??」
「コレ、コレ、コレ、コレも!」

商品を袋に包んで、お釣りを手渡して、質問に答えて、てんてこ舞いの瞬間だった。言語の壁もあって商品紹介もままならず、売れたことはありがたいものの、いざ食べた時にギャップを感じて満足してもらえなかったらどうしよう、と不安が残る日もあった。

そのほかにも、お客様からの質問にその場ですぐ答えられなかったり、品種ごとにどう美味しさが違うのか、他の生産者と何が違うのか、うまく説明できなくて後悔が残ることもあった。産直や市場に出荷したままでは、感じることができない経験だった。

Uターン次女の就農日記(9)/習うより慣れよ、の直接販売

直接販売する中で感じた課題。果物を食べてもらうまでのハードルを落とす必要があること、生の果物そのままの見た目では美味しさを想像しにくいこと、そして何より、自分の知識がまだまだ未熟であること。

今までは、味が良くて見た目にも美味しそうな果物を作れば、きっと買ってもらえるだろうと想像していた。しかし、それ以前に消費者がどんなときに・どんなものを食べたいと思うのかが想像できておらず、良いものを作れば売れるだろう!という生産現場寄りな自分の考えに気付かされた。

こうして課題に感じたことはたくさんあったものの、SNSの告知をみて買いに来てくださる方が増えたり、懐かしい友人知人との再会があったり、「今度何か一緒にやりましょう!」と事業の展望が広がったりと、直接話すことによって新しいご縁が生まれる嬉しい経験となった。

Uターン次女の就農日記(9)/習うより慣れよ、の直接販売
道の駅でのマルシェにも出店。ポップに説明を加えたり、少しずつ成長しました!

果物を作って売る、それだけでは終わらず、こうしてたくさんの方と繋がることで地域をおもしろくするきっかけになるんじゃないかと感じた。

雪が降り、寒さが厳しくなってきた山形の冬。昨年は雪があまり降らなかったこともあって、木々に雪が積もっている様子が何だか懐かしい。木々たちも冬の寒さの中で芽を固く結び、しばし休息をとっているように見える。来シーズンも美味しい果物をお届けできるよう、私自身の知識も蓄えながら成長して春を迎えたい。