とめどなく彷徨う好奇心の軌跡/馬場正尊著『あしたの風景を探しに』(どく社)
地域の情報
2025.03.11
『あしたの風景を探しに』は、東京R不動産ディレクターである建築家・馬場正尊の四半世紀にわたる旅と思考と活動を刻んだ一冊である。
今からおよそ20年前の2003年に東京R不動産が生まれ、馬場の設計事務所Open Aが誕生しているが、この本のエッセイ群に記憶された思考の旅の始まりはそれより前にさかのぼる。いったい、どのような経緯から東京R不動産は産声をあげることになったのか。学生時代から、社会に出てから、雑誌『A』を創刊してから、東京R不動産をスタートさせてから、大学教授になってから、エリアリノベーションを提唱してから、公共空間のリノベーションに向き合ってから、馬場はその時々でいったいなにを考え、どんなトライアルをしてきたのか。ところでなぜ建築家だらけのサッカー大会を毎年やっているのか。なぜいつも日本中世界中をせわしなく旅しているのか。なぜどんどん境界線を越えてゆくのか。そして今、そしてその次に、なにを見ようとしているのか……。これは、とどまることを知らない馬場の好奇心の彷徨の軌跡である。
ちなみにこの本を読んだ設計事務所スターパイロッツの三浦丈典は、「今までの馬場さんの本の中で一番馬場さんらしくて好きかも。だけどそんなこと恥ずかしくて本人には言えない」と呟いた、と伝えられている。
『あしたの風景を探しに』
馬場正尊 著
出版社:どく社
価格:3,000円+税
版元ドットコム
※real local 山形・那須ミノルが編集協力しました。