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平野郷の面影に、あえて「なじまない」という選択

歴史香る下町に、隠された英国風カフェ

2025.03.25

大阪市の南東の角に位置する平野区。JR大和路線、JRおおさか東線、谷町線の3路線が通り、車での各道へのアクセスも良好な、便利な住宅街です。歴史香る下町に、ひっそりと隠された英国風ガーデンカフェを見つけました。

環濠の巡る自治都市だった“平野郷”

中世の平野郷は、堺とともに自治都市として栄えた「環濠集落」でした。濠(ほり)と土塁が巡らしてあったその名残を、平野公園、杭全神社にかかる橋に見ることができます。

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老若男女が集まる「平野公園」
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お濠の跡 
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鳥居の位置がユニークな「杭全(くまた)神社」
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杭全神社近くのこちらも、お濠の跡のようです。
平野郷の面影に、あえて「なじまない」という選択
かつての“平野郷”の範囲を示す看板。左上の赤留比売命神社(平野公園)から中央下の杭全神社まで、優に歩けます。

第一次世界大戦後、都市の急速な近代化を受けて統一的な行政制度が社会に要請され、各町村は大阪市に編入されることに。その流れのなかで平野郷町も1925年に住吉区として大阪市に編入され、東住吉区を経て、約50年前の1974年に平野区となりました。2024年現在、平野区は実は大阪市の24行政区のうち人口が最も多い区で、大型マンションから長屋までが立ち並ぶまちです。

歴史感じるまちなみ

平野郷の面影に、あえて「なじまない」という選択
先ほどの地図のちょうど真ん中あたりに位置する、「全興寺」

平野区を代表するお寺、全興寺さん。「小さな駄菓子屋さん博物館」「平野の音博物館」「地獄堂」など、エンタメ的要素にも力を入れている楽しいお寺さんです。平日でしたが、ひっきりなしに人が訪れていました。

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「小さな駄菓子屋さん博物館」
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「平野の音博物館」「地獄堂」

レトロな下町の雰囲気が溢れ出していて、なんだか懐かしい気持ちになります。

まちに「なじまない」異色の英国風ガーデン

と、そんな住宅街にとあるカフェを発見しました。

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右手にひっそりと見えている看板。「カームガーデン」さん

吸い込まれるように、看板横の通路を進んでいきます。

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な、なんと!

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現れたのはイギリス・コッツウォルズのようなお庭と建物。通路の中も素敵なのですが、そのワクワク感はぜひご自分の目でお確かめください。

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店内も素敵です。
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焦がしキャラメルのソースが大人なワッフル

ワッフルとアイスチャイをいただきました。(お店の看板商品ではない邪道セレクトでお送りしております。メニューが豊富で素敵。)

店主に、お店ができた経緯を伺いました。

「ここは元々、奥に長いふとん工場だったんですよ。平野の花は綿なんですけど、それくらい平野は綿が有名で。」江戸時代、平野は河内国の綿花の集積地として栄えたそう。「でもふとんの素材に合繊やいろんな素材が使われるようになって、工場は2、30年前に閉じました。その後しばらく倉庫として使っていたんですが、何か新しいことを始めようということになって。妻がパン屋をやりたいと言っていたので、食パンも出すカフェを始めることにしました。」

平野郷の面影に、あえて「なじまない」という選択 

「平野は昔ながらの和風の建築が残るまちなみなので、逆転の発想で洋風のものを持ってこようと思って、自分が一番好きなコッツウォルズの建物をここで再現しようと思いました。でも、それもいつも見える状態だとなじんでしまって見飽きてしまう。それで、奥に深い土地の条件を生かして、一番奥の部分にカフェを作ったんです。」

とにかく見飽きた存在になってしまうのが嫌で、通路も作りやすい方ではなく、入り組んだ経路を取れる方に作ったという徹底ぶり。

住宅裏に隠された「カームガーデン」には姫路や滋賀、和歌山なんかからも常連さんが来るとのこと。この日も、自転車を1時間半漕いでやって来たと話す学生の常連さんがいました。(いい青春。)

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こちらは閉店後に撮らせてもらった写真ですが、私が入った時はほぼ満席でした。

本業の仕事もあるなかで、土地として売却することや、倉庫のまま賃貸に出すことは考えなかったのか聞くと、

「大きいトラックが入れないから借り手がつかないだろうというのもあったし、代々引き継いできたこの土地を自分が手放すことにも抵抗がありました。カフェのノウハウはありませんでしたけど、勉強して自分たちでやろうと決めました。」とのこと。

材料にもこだわりを持ち、東部市場でフルーツを仕入れたり、農家さんと直接やりとりをすることもあると言います。余談ですが、JR大和路線「東部市場前駅」がこの名なのは、本当に卸売市場があるからだったのですね…。

元々は中庭を挟んだ向かいの棟もカフェとして利用していたそうですが、近くの美容室さんが是非借りたいということになり、今はカフェと美容室の相乗効果も生まれているそう。

平野郷の面影に、あえて「なじまない」という選択
中庭を挟んだ向かいの美容室。中庭からしかアクセスできないのがミソ。

 聞くと、杭全神社の氏子総代も務めているという店主。

「新しく入って来た人でも、今まで住んでいたところではこんな大きなお祭りがなかったから、とお祭りを楽しむ人もいます。もちろん人それぞれで、鐘や太鼓の音がうるさいと嫌がる人もいますね。」

2025年、大阪市に組み込まれて100年目となる平野区。ゆるやかに世代交代やまちの更新が進み、郷町としての矜持を感じるお祭りも新たな変化の時期を迎えているのかもしれません。

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全興寺の前にあっただんじりのジオラマ

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川の流れるまちです。
屋号

CALM GARDEN

URL

https://www.calmgarden.net/

住所

〒547-0044 大阪府大阪市平野区平野本町5丁目9-9

名称

CALM GARDEN

業種

カフェ

TEL

06 - 6777 - 8558

営業時間

11 : 00 - 17 : 00( L.O. 16:00 )

終日90分制

定休日

月曜日・火曜日・第4日曜日

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