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移住者インタビュー/大滝真由美さん「ハワイから山形に移住した3つの理由」

インタビュー

2025.03.26

大滝真由美さんが20年近くもの長いあいだ暮らしてきたハワイを離れて日本への帰国を決意したのは、世界的なコロナ禍が収束する兆しをようやく見せつつある頃。久しぶりとなる日本での新しい暮らしを始めるにあたり、ではいったい日本のどの街で暮らそうか、と思い巡らせたところ、自身が生まれ育った東京のまんなかで、とは全く考えなかったそう。というのもそれは、これからの人生を過ごす街に求めたい幾つかの譲れない条件があったから。そして、そんな諸条件をクリアして選ばれた街が、山形市でした。

さて、実際にこの地に降り立つまでほとんど未知の場所であったというこの山形市を大滝さんが選んだのは、一体なぜなのか。その独特な合理性に基づいた決断の理由を教えていただくインタビュー、です。

移住者インタビュー/大滝真由美さん「ハワイから山形に移住した3つの理由」

長年慣れ親しんできたハワイですが、有事のときにどうなるか、コロナ禍によって目の当たりにしました。食料自給率10%ほどしかない小さな島で空輸などがストップしてしまえば、スーパーの棚はぜんぶ空になりますし、卵ひとつの値段が300円にもなりました。教会の食料配布には、ものすごい行列ができてしまいました。ハワイは米軍基地の島でもありますから、迷彩色の軍服を着た軍人がスーパーのレジで私のすぐ後ろに並んだり、一般道を戦車が走るという光景に出会うこともありました。そうした出来事は私にとって非常に怖いもので、その怖い経験からいろいろな教訓を得ました。普段は何事もない島ですが、一度なにかが起きてしまえば「ここはこうなってしまう」ということがわかったので、いつまでもずっとここにいるのは危険だと思うようになり、いつかは帰るつもりでいた日本にもう帰ろうと決めました。それで日本地図を見て「どこで暮らすのがいいかな」と調べはじめました。いったいどの街に行けば、こういう怖い想いをせずに済むのか、と考えながら。

新しい街を選ぶにあたって、設定した条件は三つあります。一番目は、食料自給率が高いこと。二番目は、標高が高いこと。三番目は、原発がないこと、です。私が安心して暮らしていくためには、この三つの条件が絶対に必要と考えました。それで調べていくうちに、山形という場所が浮かび上がってきたのです。

山形県の食料自給率は全国3位で、140%くらいあるというデータを見つけました。県庁所在地の標高のラインキングでも198メートルで山形はやはり全国3位です。そして、もちろん、原発はない。「こんないいところ他にないじゃん?」と思いました。それで、ハワイからZOOMで不動産屋さんと繋いでオンライン内覧し、山形市中心街に住まいを決めました。コロナ禍でストップしていたハワイ空港発のフライトが再開したその第1便に乗り、日本に帰国し、山形市に辿り着きました。

とはいえ、初めての街ですから、やって来た当初はさまざまな戸惑いがありました。ハワイにいるときからYouTube で街のことをいろいろ調べたつもりでいましたが、わからないことだらけです。このまちの風景を見てから、「あ、山に囲まれた盆地なんだ」と初めて知ったくらいです。来たときは立春を迎えたばかりで、雪は多くはありませんでしたがとても寒く、道はツルツルしてうまく歩けないので歩き方を人に教えてもらい、「転ぶんなら後ろじゃなくて前に転びなさいね」と教育を受けました。

…とそうやって山形に来たのが2022年。もう3年が経ちます。海外生活が長かったため、日常の中にときどき「ヘンだな」と思うことは今でもありますが、「この街に来て正解だった」と思っています。

例えばこの頃は、野菜の値段がすごく高騰しているでしょう。もちろん山形でもそれなりに値段は上がりましたが、都会ほどではありませんし、比べると物価はやはり安い。それに野菜や果物の生産地ですから、どんなことになっても食料が手に入らないということには絶対にならないだろう、という安心感があります。

暮らしてみて、不便さも全然ありません。私は車を持っていませんし運転もしませんが、自転車でどこまでも行けますから、それで十分です。人と会ったり打ち合わせだったりはZOOMでできますし、欲しいものはAmazonですぐ届きます。治安も大変いいですし、とにかく安心できます。日本の中では最高な場所のひとつだと思います。

ただ、時折、ハワイの食生活やスローテンポな暮らし、平時の平和なときの心の余裕やアロハ精神などを「よかったな」と思い出すことはあります。ハワイはハワイで大変いいところです。景色はキレイで、空には二重の虹がかかり、青空が広がっています。

それでも、こうして山形に来て無事に3年が経ち、親切な人がたくさんいることがわかり、今は大変ハッピーです。最近は、ただ、移住してきたというだけじゃダメだ、と思うようになりました。山形にとって、私は結構使える人間ではないか。海外もたくさん見てきたし、その経験が役に立つこともあのではないか、と思い始めています。

ハワイでの体験を生かし、今後どのように進化していけるのか。私自身、楽しみにしています。

移住者インタビュー/大滝真由美さん「ハワイから山形に移住した3つの理由」
(とある冬の日の大滝さん。左上/雪のちらつく午後。 左下/大滝さんが愛用する「CS60」という健康器具。右下/遠くの友人と、ZOOMで。)

 

写真:布施果歩(Strobelight
文    :那須ミノル