Uターン次女の就農日記(10)/お菓子づくりにチャレンジ
連載
2023年4月。山形にUターンした。山形に戻るのは、高校卒業以来。
Uターンするまでは、大学卒業から6年間、公務員として働いてきた。29歳のアラサーにして、脱・公務員からの就農。退職前、周囲からかけられた声の中で多かったのは「頑張ってね」という応援と、「辞めるなんてもったいない!早まるな!」という声。後者は、主に身内や親戚から(笑)。どちらの声もありがたく頂戴して、約10年ぶりに山形に戻ってきた。

今年の冬は、一年前と比較して雪が多く、我が家のラフランスの木も、残念ながらパックリと幹が折れてしまった。せっかく剪定を終えて、あとは春が来るのを待つだけ、という状態だったために少し悔やまれる。

冬だからといって休む暇はなく、枝が折れないように雪をおろし、晴れ間を見ては剪定作業をし、確定申告のための書類整理に追われ、研修や講習会に足を運び、農家の冬はなんだかんだやることがいっぱいだ。

そんな冬の合間。果物を使ってお菓子を作り、マルシェで販売する機会をいただいた。ずっとチャレンジしてみたかった食品加工の分野だ。
農家として、生の果物をマルシェなどで販売する中で、
「持って帰るの重いのよね〜」とか、
「皮剥くの面倒臭いから、果物はいいや〜」という声をいただくことが多く、何かもっと手軽に果物を味わってもらえる方法はないかな?興味を持ってもらうにはどうしたら良いんだろう?と感じることがあった。
また、キズがあったり色が薄かったりで見た目が少し劣るために、味に変わりはないのに、安売りされてしまうことが、以前から残念でならなかった。
一生懸命、一年をかけて育てた果物たち。選果の段階で、どうしてもある程度は出てしまう規格外のものに、違う形で新たな価値をつけられないか?
そう模索していた中で、果物を使ったお菓子はどうだろう?とずっと心の中で考えていた。

しかしながら、食品加工は生の果物を売るのとはまた違い、製造や販売を行うには様々な許可が必要となる。しかも、趣味でやっていたとはいえ、お菓子作りもど素人だ。さすがにハードルが高すぎるかな、、、と少し諦めかけたが、私は諦めが悪い。
絶対やってみたい。でも、一人では無理。
そんな時に、友人の1人が心よく協力してくれることになった。
彼女とは、昨年のビジネスコンテストで出場者として出会い、地域で何かやってみたい、地域の中でもっと新たな交流が生み出せないか?と志が一緒だった。そんな中で相談したところ、協力することを快諾してくれた。

それから、加工ができるレンタルキッチンが見つかり、マルシェ出店までの数ヶ月間、2人でレシピを考えたり、何度も何度も試作をして、「全然うまくいかない!!!」と失敗して焦ったりと、大忙しの日々だった。
試作をしては、何度も家族に食べてもらい、
「なんだがみだくねぇ(見た目が悪い)」
「うまぐねぇ(美味しくない)」
など山形弁で、特に父から、何度も厳しい感想をもらった。試作を食べ過ぎて、甘いものはもう当分食べなくて良いかも、とげっそりした日もあった。
なんとかマルシェが開催されるギリギリにやっと形になり、本当に良かった!と2人で安堵した。
父からは
「なんぼか、いぐなったんねが。(少しは良くなったんじゃないか?)」
と、合格をもらった。
そして本番を迎えると、たくさんのお客様から興味を持っていただき、無事完売することができた。普段は、どちらかというとお年寄りの方に果物を買っていただく機会が多い感触だったが、今回のお菓子は若い方々にもたくさん手にとってもらえた。
やる中で改善点も多く見つかったので、今後もっとバーションアップしながら、より果物の美味しさをたくさんの方に知ってもらえるようにチャレンジしていきたい。

農業を始めてから、家族経営とはいえ、たくさんの方に農作業を手伝ってもらい、今回も友人に協力してもらうことで、新たなチャレンジをすることができた。本当に多くの皆さんに支えられながら農業ができているな、とありがたみを深く感じる(これから少しずつ皆さんに恩返しをしたいと思います)。
雪が溶けてきて、春の気配がする今日このごろ。蕾が、着実に大きくなっているのを見て、「もう少しで、またあの忙しい日々が始まってしまう、、、!」という恐ろしさと、それと同じくらい楽しみな気持ちでいっぱいだ。早く春よ来い!
写真(※)江口大輔 Instagram