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【愛知県・春日井市】日本初!エシカルなクリーニング店が運営する 『森と海をまもるコインランドリー』

2025.04.15

【real local名古屋では名古屋/愛知をはじめとする東海地方を盛り上げている人やプロジェクトについて積極的に取材しています。】

愛知県春日井市にある森林と海洋の保全をテーマにした「森と海をまもるコインランドリー」。昭和28年から70年以上続くクリーニング店・勝川ランドリーが運営するこのコインランドリーは、店舗の主要部分に岐阜県東白川村産の森林管理された木材が使用されており、「世界で最も信頼度の高い森林認証」として知られる「FSCプロジェクト認証」をコインランドリーとして日本で初めて取得したことでも注目されています。

【愛知県・春日井市】日本初!エシカルなクリーニング店が運営する 『森と海をまもるコインランドリー』
森と海をまもるコインランドリー

「森と海をまもるコインランドリー」を企画したのは、勝川ランドリーの3代目社長・東本猛(とうもとたけし)さん。東本さんは子どもたちが安心して暮らせる未来を実現するため、洗剤による環境汚染の問題にも着目。海を汚さない洗剤の開発・販売を行う「Save the Ocean株式会社」を立ち上げ、環境保全、さらには業界全体の持続可能性のための取り組みにも力を注いでいます。

 

「洗うこと」のプロとして環境問題を考える

春日井市の勝川ランドリー本社を訪れると、程よく日焼けした爽やかな笑顔で東本さんが元気に出迎えてくださいました。
ごあいさつを済ませインタビューを始めようとすると、まず東本さんから質問が…。

「みなさん、今どきクリーニング屋に期待すること、ありますか?」
「そもそも洋服が家で洗えたならそれに越したことはないと思いませんか?」
「家で洗えるものって思っている以上にいっぱいあるんです。
ダウンだって実は水で洗えるんですよ」
「でも、家でお洗濯に使う洗剤にまでこだわる人はあまりいなですよね」

改めて問われてみると、確かに最近は家で洗える素材が増えて、クリーニング店を利用する機会は少なくなっているような気がします。それでも大事な洋服はやっぱりプロの技術に任せたい。一方で家では洗浄力の高さを謳ったCMに促されるままなんとなく選んだ洗剤でお洗濯を繰り返す毎日…。普段、洗濯やクリーニングのことをちゃんと意識したことはなかったと気づきました。

「多くの人が、〝洗った〟という行為に満足しているだけなのではないかと思います。僕らは洗濯の専門家として、お客様の大切な洋服のこと、そして日々の洗濯がどのように環境に影響を及ぼすのかまで真剣に考えたいんです」

これまでほとんど意識することのなかった洗濯と環境問題との相関関係。そこには密接な関わりがあると東本さん。そもそも汚れを落とすとはどういう仕組みなのか、お洗濯の基本をわかりやすく教えていただくことに。

「一般にシミや汚れと呼ばれるものには水溶性のものと油溶性のもの、さらに不溶性のものの3つがあります。つまり水で落とせるものと、水だけでは落とせない油汚れです。不溶性のものにはコーヒー、ワイン、カレーなども含まれます。水で取れない油の汚れは、界面活性剤という油のようなものを使って落とします。不溶性の汚れは、漂白剤を使って落とすしかないんです。」

問題は、その油が排水として最終的に海に流れ出てしまうこと。たとえ下水処理が施されてもそれだけでは不完全なのだそう。

「微生物による処理をせずに下水に流せば、やがてヘドロとなって海を汚染することになります。クリーニング業を営む者の責任として、僕らの手でこの問題をなんとかしなければと思ったんです」

【愛知県・春日井市】日本初!エシカルなクリーニング店が運営する 『森と海をまもるコインランドリー』
勝川ランドリー代表の東本猛さん

 

海をまもる洗剤の開発に挑戦

こうした課題に直面し、洗濯のプロとして海を守り、環境に配慮した洗剤の開発に乗り出そうと考えた東本さん。しかし当然のことながら洗剤開発はまったく知識のない未知の分野のこと。専門家の力を借りて一から仕組みを学び、これまでになかったエシカルな洗剤の開発に取り組みました。

「油や汚泥の処理を専門とする研究家の先生と出会い、油を微生物に分解させる技術を用いて、洗濯後に微生物によって分解されやすい洗剤を作ることができたんです」

試行錯誤の末、環境にやさしい洗剤「wellwash(ウェルウオッシュ)」が誕生。
市販されている一般的な洗濯洗剤とはまったく違う考え方から生まれたエシカルな洗剤です。

【愛知県・春日井市】日本初!エシカルなクリーニング店が運営する 『森と海をまもるコインランドリー』
生分解性テストと水質汚濁のテストの両方をクリアした海をまもる洗剤「wellwash」 「save the ocean株式会社」より販売

一方で、やはり洗剤としての洗浄力も気になるところ。
そこについても東本さんは、

「もちろん洗浄力もしっかり維持しています。一般的な合成洗剤の油の粒子より小さいナノ粒子分散という新しい洗浄力で、汚れを細分化して落とすという仕組みです。と言っても、説明だけではなかなかわかりづらいと思うので…」

と、私たちの目の前で汚れ落ちの実演を始めた東本さん。
確かに一般的な洗濯洗剤と比較すると一目瞭然。
汚れの浮き方がまったく違うことがよくわかります。

【愛知県・春日井市】日本初!エシカルなクリーニング店が運営する 『森と海をまもるコインランドリー』
汚れが落ちる仕組みを実演してくれた東本さん

「市販されている一般的な洗剤に含まれている界面活性剤は水ですすぎにくいので、どうしても繊維に洗剤の成分が残ってしまうんですよ。それが黄ばみや臭いの原因になるんです。wellwashは洗浄力を落とさずに界面活性剤の量を最小限に抑えているので、黄ばみや臭いを防ぐ効果もあるんです」

さらに嬉しいのは衣類にとってもやさしいこと。一般的な洗剤に比べてすすぎ回数が少なく済むので、洗濯機の回転によって起こるほつれや色落ちといった回転ダメージを最小限に抑えてくれるのだとか。

「もう一つの問題は価格です。どんなに品質が良くてもコストの面では大手メーカーには敵いません。そのため値段が高くなって多くの人に使ってもらえないのでは意味がないですよね。そこで価格を抑える工夫として、提携しているクリーニング店や自然派のお店に容器を持ってきていただいて、店頭で量り売り方式を採用することにしました。そもそも濃縮タイプなので、ボトル1本で約60回使えますし、コストは市販されている洗剤とそんなに変わらないんですよ」

【愛知県・春日井市】日本初!エシカルなクリーニング店が運営する 『森と海をまもるコインランドリー』
提携店の店頭や自然派のショップなどに容器を持ち込んで計り売り

環境への配慮と高い洗浄力、さらには適正な価格に加え、肌への安全性についても第三者機関によるテストをクリア。
「wellwash」には良いことしかない!と自信を見せる東本さん。

「自然派のマルシェや展示会の会場などでもこうして実演するんですけど、なんか胡散臭く見えちゃうでしょ?(笑)。洗剤は間違いなくすばらしいので、どうしても話が長くなっちゃうんですよね。でもしっかり説明すれば必ず納得してもらえる自信はあります!」

 

エシカルなクリーニング店を目指して

洗剤の開発に続き、次に東本さんが手がけたのが新しいコンセプトのコインランドリー。自然の中で微生物分解が行われる場所として山や森にも注目し、健全な森のために岐阜県東白川村産の森林管理をされた木材を使った「森と海を守るコインランドリー」をオープンしました。

「私たちが暮らす環境は山から海まですべて繋がっているので、森が健全であれば川や海の水も綺麗になります。環境負荷のことを考慮して、建物に森林管理された木材を積極的に活用することで森を守り、このコインランドリーでもwellwashを使っていただくことで、海の汚染も防ぐことができるというわけです」

【愛知県・春日井市】日本初!エシカルなクリーニング店が運営する 『森と海をまもるコインランドリー』
2022年にオープンした「森と海をまもるコインランドリー」
【愛知県・春日井市】日本初!エシカルなクリーニング店が運営する 『森と海をまもるコインランドリー』
店舗内でも「wellwash海をまもる洗剤」を使用

 

使命と信念を貫く不屈の精神力
その原点にあるもの

70年以上続く老舗の看板を引き継ぎ、新しい挑戦に踏み出した東本さん。しかし、時代の移り変わりの中でクリーニング業界の置かれた状況は年々厳しくなっているのも事実。そこにもしっかりと目を向け、自分たちに何ができるか、何をするべきかを考え続けていきたいと言います。

「今の時代、クリーニング屋に未来はないとか、もう終わってるとさえ言われてますよね。実際この業界は年収が低いのも事実。でもそれは技術や能力の差によるものではなく業界や社会のシステムの問題だと思うんです。今までのようにどんどん価格を下げて薄利多売を続けていたのでは、我々が一番大事にするべき品質が維持できず信頼を失っていくばかり。そうではなく、プロとしての技術を提供して、堂々と適正な報酬をいただくことで失った信頼を取り戻さなければいけない。それを現場のスタッフに還元することで良い人材も集まるようになるはずです。大事なのは〝やり方〟よりも〝あり方〟。大きな志や将来のビジョンを実現するには小手先のやり方でどうにかなるものではないですからね」

自社のみならず、クリーニング業界全体の未来を見据え、起死回生のチャンスを狙い果敢に挑戦を続ける東本さんのパワーの原点。そこには、かつて弱小チームとして長年苦杯を嘗めてきた母校のラグビー部を全国大会の常連校へと導いたコーチとしての体験がありました。

「勝川ランドリーは妻のお祖父さんが始めたもので、僕は3代目として妻の実家の家業を17年ほど前に継いだんです。もともと僕は実業団でラグビーをしていて、20代半ばに怪我で引退し、その後、母校のラグビー部でコーチを務めることになりました。当時はめちゃくちゃ弱くて、165対0で負けたこともあるような弱小チームでした(笑)。そんな点差で負けるってそうそうないこと。部員たちに、このままでいいのか?と聞くと、それではよくないと答えるんです。嘘でも勝ちたいと。そこで僕は『勝ちたいのと、勝つことをするのでは全然違うよ』とそんな話をしました。つまり、勝つことをするというのは目的のためにやるべきことをやるということ。勝てるかどうかは自分たち次第だと伝えたんです」

ところが東本さんがコーチになって2年が過ぎた頃、新たな試練が訪れます。練習中に部員が亡くなるという辛い事故が起き、ついに廃部かという状況に。指導にあたっていた東本さんたちが揃って辞表を出しに行くと、なんと、亡くなった部員の親御さんが先回りをして「ラグビー部を存続させ、必ずみんなで勝ってほしい」と、学校に思いを伝えてくれていたというのです。

「そこでいよいよ本気で強いチームを目指そうとみんなの気持ちが一つになりました。コーチに就任してからわずか6年で全国大会に出場し、その後も14年連続で花園に出場。今では押しも押されもしない強豪校になりました。子供たちが本気で覚悟を決めてからの成長ってすごいなと思いましたね」

【愛知県・春日井市】日本初!エシカルなクリーニング店が運営する 『森と海をまもるコインランドリー』
弱かった母校のラグビー部を全国大会出場に導いたコーチ時代の体験を語る東本さん

 

目標は「クリーニング業界のリーディングカンパニー」

目の前にどんなに厳しい現実が立ちはだかっても、覚悟を決めれば道は開ける。ラグビー部のコーチとしての壮絶な体験に裏付けられた強い信念を胸に、何事にも前向きに挑む東本さん。いまでは地域で信頼されるクリーニング店として、代々培ってきた技術の継承に力を注ぎます。

「一番大事なのは子供たちが生きやすい社会を作ること。どの業界であってもみんなが考えなければいけない課題ですが、僕らは『洗う』ことから持続可能な社会を考える役目を担っています。そこから未来を考えたいんです。弱小チームがあそこまで強くなれたように、現場でプレイする人がこの仕事をやっていて良かったと思えるような会社をみんなで目指しますよ!」

厳しい状況にあると言われるクリーニング業界において、「勝川ランドリー」と「Save the Ocean」を未来を担うリーディングカンパニーにしたいと大きな目標を語る東本さん。置かれた環境が変わっても、前向きに取り組む姿勢は決して変わることはありません。そんな東本さんの挑戦はこれからも続きます。

名称

勝川ランドリー

URL

HP:https://www.kachigawa.com
Instagram:https://www.instagram.com/kachigawa.laundry/

備考

●TEL:0568-82-6748
●well wash 販売店舗
https://umi-mamoru.com/shopindex/

4/15~ reallocalに掲載した江南市「tsunagu」でも取り扱い開始

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