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【金沢】求人募集|米づくりを通して地域秩序を守り、「お米」の価値を問い直す「チーム」を。|農業組合法人 かさの郷

2025.04.14

金沢市に隣接する石川県津幡町にある笠野地区にて米づくりを主体とした事業を行う「農事組合法人 かさの郷」では、現在スタッフを募集しています。もちろん仕事の大半は「米づくり」なのですが、この団体のユニークさは、「米づくりを通して地域社会の秩序を守ること」をミッションの一つに掲げているところ。そして「お米の価値を、文化的・社会的・審美的な文脈からの問い直しを試みている」ところ。

今年は耕作面積がさらに拡大したこと、そしてお米の多様な価値を発信する活動に本格的に着手すべく、「チームをつくっていきたい」と語る、同団体理事の塚本美樹(よしき)さん。冬は農閑期になる米農家は、働き方のバリエーションも検討できそうですし、+αの職能を持った未経験者も歓迎だそう。記事を読んで気になった方はぜひ一度お問い合わせを。

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米がない、米が高い、備蓄米の放出ー‥。何かと今、「お米」がニュースを騒がせています。

いうまでもなく、私たち日本人にとってなくてはならない存在で、それ故に日常生活では空気のような存在というか、意識にのぼることすら少ない「お米」。けれど、一度今回のような事態に直面した際の騒ぎぶりを見ていると、「主食」であるということ以上に、私たちにとって何か本質的なものであることを改めて思い知らされます。その「何か」は、上手く言語化できないけれど‥。

お米は「つくるもの」ではなく「買うもの」になって久しい中、普段は忘れ去られているこの問いを「米づくり」の実践を通して、考え続けている人たちがいます。石川県津幡町にある笠野地区を拠点として活動する「農事組合法人 かさの郷」です。

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米づくりは、“団体戦”だから。

現在津幡町笠野地区の田んぼを26ヘクタール任されている、地域で最も規模の大きい「米農家」でありながら、いわゆる「米農家」とも、従来の「兼業農家」のイメージとも少し違うのは、同団体の発起人の一人であり、理事を務める塚本美樹さんのワークスタイルに象徴されます。

塚本さんは、金沢市のアンティークショップ「SKLO」と、ギャラリー「SKLo」、そして台湾料理店「四知堂 kanazawa」を営んでいて、仕事ではヨーロッパや台湾も度々行き来しています。午前は津幡町笠の地区で農作業、午後からは金沢に移動してデスクワークや各店舗の仕事にかかる日々。(塚本さんにインタビューした以前のreallocal記事はこちら

いわゆるローカルと海外をも軽やかに行き来する、「半農半X」を地でいくスタイルに見えますが、本人なりの葛藤もあるそう。

お米づくりは団体戦だから、信頼関係が必須です。だからたまにふらっと現れて『あ、自分の分の作業だけやります』みたいな軽さでは米づくりはできない。自分は金沢にも仕事があるので、限られた時間しか農作業にコミットできないもどかしさはあるんですけれど、だからこそここ(笠野地区)にいる間は、人一倍働くように意識はしています」

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「農業組合法人 かさの郷」理事の塚本美樹(よしき)さん。アンティーク店やギャラリー店主、台湾料理店のオーナーなど様々な顔を持つ。
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津幡町七黒にある元農協の建物が「かさの郷」の事務所になっています。

やりたいことと、やらなくてはいけないこと。

背反するとされる二つのものに引き裂かれている人。どちらにも依りきらず、その間を行き来しながら思考を止めない人ー‥。私から見た塚本さんの印象。

津幡町笠地区で米農家の長男として生まれた塚本さん。高校卒業後、オーストラリアに留学。その後、スノーボードをする目的で日本とニュージーランドとの往復生活をおくり、23歳で金沢にて営業職に3年間従事。数々の職業を経験した後、29歳でアンティークショップ「SKLO」を開業するという、自由な生き方を選択してきた。(塚本さんにインタビューした以前のreallocal記事はこちら

しかし30歳を目前にして「米農家」という、農作物の中で最も保守的な世界観にあるともいえる家業を継ぐ決意を固める。「やりたいことだけでは上手く行かないけれど、やらなきゃいけないことだけでも辛い。興味と使命感、その両輪が揃って初めて人生がドライブしていく」という変え方は塚本さんの信条のひとつ。

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塚本さんがオーナーを務める台湾料理店「四知道 kanazawa」

地域の担い手になるか、もう辞めてしまうか。米づくりの岐路

「かさの郷立ち上げの数年前から、父と“この先どうするか”ということをずっと相談していました。この地域の中でも、うちは田んぼを多く持っている方だったこともあって。高齢化で集落の農家が次々と米づくりを辞めていく中、僕らが“担い手”となってこの先も米づくりをやっていくか、自分の田んぼだけ細々やるか、それとももう完全に辞めてしまうかー‥。そこが僕たちにとって、大きな岐路でした

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ここから見える田んぼも、全てかさの郷で米づくりを担っている。こちらはほんの一部。

地域コミュニティの秩序は、「お米」で保たれてきた。

そして塚本さんとお父さんは「地域の担い手になる道」を選び、2015年笠野地区の農家5軒で「農業組合法人 かさの郷」を立ち上げます。

「やっぱり“お米”って、地域の文化風習を守る上ですごく重要なもので。祭や様々な地域行事が、田んぼの作業や収穫に合わせて組み立てられている。そして風習や文化だけでなく里山など周辺環境を守る上でも、お米が大きな役割を果たしてきました。地域秩序の全てが『お米で保たれていた』と言っても過言ではないくらい。そもそも地域の単位である“集落”って、稲作に欠かせない水の權利単位でできていたりします。だから今、何のために“集落”というものがあるのか、ピンときてない人が多いと思うんだけれど、それは『お米』という主役が、現代では不在だからなんですよね。

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かさの郷の事務所がある七黒集落の神社

地域の主役であった「お米」に戻ってきてもらう。

「“だったら、祭も辞めてしまおう”とか、“神社もいらないんじゃないか”、という話になってもおかしくないけれど、そうじゃないだろうと。地域コミュニティの復活を考えるのなら、“主役”に戻ってきてもらうのが一番手っ取り早いし、本来の姿であるわけで。それに全然知らない人達が自分たちの集落の田んぼで米づくりをしているというのは何だか悔しいというか、搾取されている感じもする。だからこそ、ここに生まれ育った僕らがやるべきだと考えました。」

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土地の歴史を引き継ぐこと、大事なものを置き去りにしないこと。

塚本さんは米づくりの傍らで、ライフワークとして地元集落の歴史や民族史を長年調べ続け、地域に住む高齢者から口伝での聞き取りも。誰も言葉として残していないようなこの地の歴史を、独自の視点で編み続けています。

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“土地の歴史をちゃんと知る”ということから、その土地を大切に思う気持ちが芽生えるものだと思うんです。そこが私たちの世代で断絶されてしまわぬよう、今その“引き継ぎ”をしている最中というか。

『かさの郷』には私の父を含めて高齢の役員も5名在籍していますが、彼らはこの土地のことについて本当に詳しいし、米づくりにおける豊かな知恵がある。なのでうちは“年寄りとの共労”で米づくりをしている感覚です。世代が違うので、価値観が合わない部分ももちろんあります。けれど、“価値観が合う人たち”だけでコミュニティをつくってしまうと、『大事なものを置いてきぼりにしている』というか『見て見ぬふりしている』ことにはならないだろうかとも、僕は思うんですよね」

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塚本さんの父・美義さん(左)は、かさの郷の代表理事

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また、塚本さん達はかつての農民のように藁でなんでも作り出すこと、そして、食糧としてだけではないこの米の価値を模索するために様々なジャンルの作家とコラボレーションしながら「RICE CRAFT」という展覧会も開催しています。かつて米づくりにおいて、重要な副産物であった「藁」にフィーチャーした作品も印象的でした。

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「RICE CRAFT」

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「生産者」は「発信者」でも良いはずだ。

かさの郷立ち上げから10年。任される田んぼの枚数は年々増え続け、今年はついに26ヘクタールになる予定。ただ「量」を請け負うだけでなく、かさの郷ではその「質」にもこだわって減農薬で生産し、地元の食味の賞も受賞。収穫したお米の三分の一は自分たちで飲食店や個人に直接卸していて、塚本さんがオーナーを務める台湾料理店「四知堂kanazawa」でも、かさの郷の自家製米が使われています。

食べている人の顔が見えている、ということはやはり重要だと思っています。それに“生産者”って、本来は“発信者”でもいいはずで。長らく国の方針もあって、特にお米は“生産者”としてだけ振る舞い続けたというか、“新しい切り口を見せる工夫”ということをしてこなかったんだと思うんですよね」

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四知堂kanazawaのメニューは「お米」を主体にしたものが多い。
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こちらは無農薬にこだわって生産している古代米。

「一周回って、新規就農するなら、やっぱりお米をやりたい」

新規就農率が他の農作物と比べても低いとされる米農家。まずトラクターなどの初期に必要な設備投資額が大きいこと。そして「田んぼ」という圧倒的な土地面積を必要とする農業だということ。かつ、その土地も自分で買うわけには行かないので、誰かに田んぼを貸してもらう必要があること(それには関係性必須)、そして初期投資がかかる割には利益率が低いことー‥など、その理由は枚挙にいとまがないそう。「このままだと“誰もやりたくない農業No.1”になるかもしれない」と米農家の減少を危惧する塚本さん。

「けれど、もし自分が新規就農するなら、やっぱりお米をやりたい。ここまで知ったら、お米ってものすごく面白いから。日本人を日本人たらしめているすごく深いところにお米があって、米という礎の上に、日本文化が成り立っているといっても過言ではないと思うので」

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「生活」とかけ離れた会社員生活に、違和感を感じて

そんな塚本さんに出会い、異業種から「かさの郷」に入社して6年目になるスタッフがいる。今やかさの郷の主力メンバーで、作業の多くを一任されている“エース”中村さんだ。

野菜は一人でも作れるけど、お米は一人じゃなかなか作れない。それに、どうしたって丸々一年かかる。そういう感覚が自分には合っているというか、好きだなって思います」と中村さん。

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「かさの郷」スタッフの中村さん(左)。

中村さんは石川県野々市出身。大学卒業後はメーカーで開発系の部署で働いていましたが「“生活”とあまりにかけ離れた、“会社で働く”ということに違和感を感じはじめて」退職。

自給自足の暮らしを学ぶために滞在してた栃木県の那須で、たまたま塚本さんが営む「SKLO」のプロダクトであった電球に出会う。その電球は白熱電球の職人とコラボレーションして開発されたもので、「明るさ」や「耐久時間」といったスペックを競うのではなく、カーボンフィラメントの美しさ自体を愛でるという発想から生まれたものでした。

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白熱電球の職人と開発したオリジナルプロダクト。

「その電球がなぜか心に残って、SKLOのお店のショップカードをもらって帰ったんですね。ネットでお店のことを調べてみたら『農業もやっている』と書かれてて『あっ』と。何かご一緒できるところがあるのではないかと塚本さんに話を聞きにうかがったのが、かさの郷入社のきっかけです」と語る中村さん。

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バラバラに見えて、全てつながっている。

僕、アンティークとお米って、似てるなと思うことがあるんです。アンティークって、昔のものを今の目線で見直したり、新しい価値をそこに再発見するという部分があると思うんですけど、お米もそうだなって。

ずっと昔から変わらずにあるものだけれど、昔はお金の代わりだったり、共同体の要であったり、いろんな側面がある。そういう意味では塚本さんがやっていることって、バラバラに見えて全部繋がっているなぁと

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かさの郷に入社されていなかったら、何をされていたと思いますか?と尋ねてみたところー‥。

「何してたんでしょうね。いわゆる“一般的な農業”をやりたいというタイプでは元々なかったので。もちろん農業がコアとなる部分ではあるんですけれど、塚本さんという人がいて、この集落や地域全体のことをみようとしてて、その一環として農業があるというかー‥。自分はそういうことしたかったっていうのがあったので、確かに塚本さんと出会えていなかったら何してたんですかね。本当にわからないです(笑)」

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かさの郷では、耕作面積の拡大に合わせて、現在新たなスタッフを募集中。

「もちろん米づくりが核となる組織ではありますが、これから本格的に地域と連携するような活動も展開していきたいと思っています。そのための“チーム”を作っていきたい。なので、外に向けて発信のできる方など、農作業に加えて“+α”の職能を持っていらっしゃる方だと、なお良いですね
やってみないとわからない部分もあると思いますし、まず一通りの作業を体験する1年はアルバイトでやってみていただいて、その後に社員になるかどうしたいかをお互いに話していけたら。働き方も色々と相談に乗れると思うので、僕らの活動に興味を持ってくださった方はにはぜひ一度お話できたらと思っています。(塚本さん)」

ご興味がある方は、まずは下記問い合わせフォーム、ないし備考欄のメールアドレスよりご連絡ください。

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笠野地区でも、これから今年のお米づくりが始まります。

(取材:2024年3月)

社名/屋号

農業組合法人 かさの郷

URL

https://kasanogou.jp/

備考

問い合わせ:info@kasanogou.jp

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