【富山県氷見市】海辺でダルマ太陽を見ようぜ ひみ漁業交流館 魚々座
氷見という町の名前を聞いて、多くの方は寒ブリをはじめとした漁業を想像するかもしれない。それではその漁業がどのようにして営まれているか、ご存知だろうか。
今年、2015年4月、富山県氷見市に漁業交流館 魚々座(ととざ)がオープンした。元は道の駅として利用されていた施設をリノベーションした施設だ。デザイン監修を建築家の手塚貴晴氏にお願いし、一目見てこれはタダモノではないと誰もが感じる真っ黒な外観の施設に生まれ変わった。
この施設の中には、氷見で盛んな定置網が吊るされている。定置という名前からわかるように海中に網が常に設置されていて、富山湾を回遊する魚たちは自由に出入りできる。網に入った魚のうち水揚げされるのは約3割という、生態系に優しく持続性のある漁業を氷見の漁師たちは営んできた。魚々座では、入口にある垣網(かきあみ)に誘われるように建物に入って魚になった気持ちで館内を遊覧しているうちに、氷見の漁業がいかにして受け継がれてきたのかを学ぶことができるのだ。
ただし、この魚々座は漁業について学ぶだけではなく、氷見の町が抱える課題を解決するために地元の人たちが集まり考える場所を目指している。
その思いから、オープニングイベント「魚々座の座学 vol.1」では、島根県海士町(あまちょう)から株式会社「巡の環」代表取締役の阿部裕志さんをお迎えして、離島の人口減少に悩む町がどのようにして移住者の絶えない町に生まれ変わったのか、その背景を伺った。 阿部さんは地方に住む人の持つ人間力と都市の発信力が結びつくことで地域が輝き出すと語った。
この原稿を書いている私は現在氷見市で地域おこし協力隊をしている。その前は、JR富山駅のすぐそばでホテルの管理人の仕事をしながら住み込みのような感じで暮らしていた。もともと九州出身で、それまでまったく北陸に縁がなかった私だが、立山連峰の美しさに代表される自然の豊かさや人々の実直さなど、富山の良さは街中でも十分に感じ取ることができていた。しかし、少し距離のあるところから見ていても「なんだか新しいことやってるよね……」という印象があった氷見のまちに惹かれるところがあって住んでみたいと思ったのだ。
高校の体育館をリノベーションした市役所があり、海岸沿いには新しい道の駅が賑わっていて、新しい人も受け入れ てくれるまち、というイメージがぼんやりと頭の中にあったのを覚えている。
そして今、氷見で住んでいる家はすごく広々としていて(なにしろ15DK)、自分の部屋から眺める庭は草刈りが大変だけど見ていて落ち着く。その一方で魚々座で出会う人たちのエネルギーには良い刺激を受けている。こういう人たちがいるから惹かれたんだな……。
夏も近づいた頃、毎週土曜日、朝4時からカフェを始めると言う人が出てきた。名前は「だるまカフェ」。夏場は太陽が海面から顔を出し、晴れた日にはダルマのように見えることがあるからだ。そんな「ダルマ太陽」を見ながらお茶して話をしよう!という試みだ。
眠い目をこすりながら行ってみる。きれいなダルマではなかったけれど、沖に浮かぶ唐島の脇の海面から赤い太陽が顔を出した。太陽が覗いた瞬間に、カフェの人たちと一緒に岸壁まで駆け出して、思わず声を上げて喜んでいた。
氷見に来てまだ数カ月。最初はなんとなくでしか見えていなかったこの土地の魅力が、少しずつだけど見えてきている。これからもっと私の好きなこのまちの良いところや移住してきた面白い人たちを紹介していきたい。乞うご期待。