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想像の斜め上を行くモノづくり集団

secca(上町達也・柳井友一・宮田人司)

想像の斜め上を行くモノづくり集団
seccaの工房にて。左から順に、上町達也さん、柳井友一さん、宮田人司さん

「伝統工芸」×「3DCAD」の技術を掛け合わせた、独自のモノづくりを展開するユニット、secca。雪花と書いて「secca」と読ませるあたり、勝手に「可愛いらしさ」を想像していたんだけど……。取材当日、展示会で飾られていた器を前にした瞬間、意に反して、勝手に独り言を呟いている自分に気が付いてしまった。
「え、なにこれ、近未来の器……?」

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3Dプリンターで出力した生地に伝統工芸技法である漆塗りや箔貼りを重ね合わせて製作された器たち

掴みどころのない曲線を描くフォルムに、ほんわりとした光を放つ独特の質感。「器とはこうあるべき」と信じてやまない、私のちっぽけな想定範囲をグググッと越えてくる。

これが食卓に並んだら、料理はどんな盛り付けになるんだろう? そういう意味で、「未知との遭遇」くらいのインパクト。極めつけは、可愛いユニット名とは裏腹に、実は男性3人のユニットだったなんて! このひとたち、一体何者!?

そんなseccaのメンバーは、代表兼デザイナーを務める上町達也さんに、陶芸家兼デザイナーの柳井友一さん、そして全体のマネジメントを担当する宮田人司さんの3名。現在、金沢を拠点に活動をしているが、実は全員、県外からの移住者なのだ。

 

宮田人司さんといえば、世界初の着メロダウンロードサービスを手掛けたことで知られるクリエイティブディレクター。ITやデザイン、アニメ、映像など多岐にわたるフィー ルドで活躍してきた経験を生かし、金沢初のビジョナリー(先進的なアイデアの実現により、社会的インパクトを生み出す人材)の育成と創業支援を目的とする「GEUDA(ギウーダ)一般社団法人」を設立している。(GEUDAについて詳しくはこちらをご覧ください)

そんな宮田さんが金沢に移ってきたのは、2010年のことだ。

「金沢は、食文化のレベルが高いし、東京にはいないようなアーティストや職人さんがいる文化圏なんですよね。しかも、東京みたいに 『すべてを網羅的に』というより、アートとか工芸とか『ここを伸ばそう』という方向性が明確なまち。仕事柄、そんなまちの気運も自分にフィットしたし、ちょうど子どもが生まれた時期だったので、子育てするなら金沢みたいなまちがいいかなって思って移住してきたんです」

一方、上町さんと柳井さんは、金沢美術工芸大学製品デザイン学科卒の先輩・後輩。学生時代を金沢で過ごしたのちに、就職を機に上京。ともに家電やカメラメーカーのインハウスデザイナーとして活躍していたけれど、職歴を重ねていく中で浮かんできた「ひとつの想い」が、金沢Iターンへのきっかけになったと言う。

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5月にオープンした東京・二子玉川「蔦屋家電」にて、展示販売を行ったときの様子

「消費サイクルが早い今の時代に、もっと長く愛されるモノやコトを生み出したい」

その答えとして出した結論が、上町さんは「食」を通じたモノづくり。柳井さんは「器」を通じたモノづくり。そこに、若手クリエイターを支援する宮田さんが出会ったことで、まさに電光石火のごとく、seccaが誕生したというわけなのだ。

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ひとりひとりに、器に込めたストーリーを丁寧に伝える柳井さん

そんな彼らが手掛けるものは、なんと3Dプリンターで生地や原型をつくることもあり、未来工芸とも言われている。

「とはいえ、工芸とは、元々その土地に住んでいる人が使う道具と技術で、その土地にある素材を使い、その土地の気候に合わせて加工したのが始まりなんです。だから、造形や素材が『未来』だとしても、僕たちがやっていることは、石川県に根付いている職人さんの技術や協力など、地場の感覚なしではできないと思っています」と、上町さん。

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陶磁器では型づくりに3D技術を用い、手ロクロでは不可能な造形を実現している

まさに金沢は、工芸や器との関係性が強いまち。「器は料理の着物」と、北大路魯山人が残した名言があるように、郷土料理の治部煮を食べるための専用の器があるくらいだから、加賀料理のお膝元・金沢における器文化のポテンシャルは、相当にすごいのだ。

そんなこともあってか、seccaは今、料理人と共同で器を開発しているところだ。モノづくりのプロと料理のプロが、本気でぶつかり合うガチンコ勝負の真っ最中。

いずれは海外でもコラボして、食卓や居住空間の中で、seccaの世界観と新しいモノづくりのかたちを金沢からグローバルに伝えていきたいとのこと。

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金沢で器づくりをするにあたってseccaが大事にしていることは「料理人とのセッション」だという

「金沢というまちは、そういうチャレンジをする時間や余裕を受け入れてくれる空気感があるんですよね。東京で一人暮らししてる時なんか、器に意識がいく余裕なんかなかったですよ。もう、鍋1個でいかに洗い物少なくするかみたいな感覚だったもんなぁ(笑)」と、宮田さんもポツリ。

食、器、工芸、アート、それぞれこの地に惹かれた理由は違うけれど、seccaが生まれたのは、「芸」の歴史と文化が息づく金沢だからこそ。よそ者視点だからできる金沢の文化の再編集を通じて、これからもきっと、いい意味で「想像の斜め上」をいくモノづくりを見せてくれるはずだ。

屋号

secca inc.

URL

http://secca.co.jp/

住所

石川県金沢市昭和町12-6 6F

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