みんなでつくる「THE SHARE HOTELS」始動。
シェア型複合ホテル「HATCHI」プロジェクト交流会&ビフォア内覧会レポート
9月某日、金沢市橋場町の元仏壇店の空きビルに、人だかりができていた。パリッと貼られた白い建築シートには「日本の未来が宿る場」「2016.03 OPEN」とある。…何やら気になるではないか。今回は株式会社リビタが手掛ける、シェア型複合ホテルプロジェクト「THE SHARE HOTELS」の第1号店「HATCHI(ハッチ)」のプロジェクト交流会&ビフォア内覧会をレポート。
株式会社リビタは、「くらし、生活をリノベーションする」をコンセプトに、リノベーション分譲事業やコンサルティング事業、シェア型賃貸住宅の企画を行う東京の会社だ。
これまでにも、シェア型複合施設「THE SHARE」や、印刷工場をオフィス商業複合施設にコンバージョンした「TABLOID」、横浜みなとみらいのシェアスペース「BUKATSUDO」など、エポックメイキングなプロジェクトの数々を企画・プロデュースしてきた。
満を持して始動した次なるプロジェクトが、シェア型複合ホテルプロジェクト「THE SHARE HOTELS」。単に空間をシェアするだけではなく、地域の資源や魅力的なコンテンツを再発掘し、そこで活動するプレーヤーのアイデアや、価値観までもシェアすることを目指している。その記念すべき第1号店が、金沢市橋場町にこの春オープン予定の「HATCHI」だ。
「HATCHIには『発地』という言葉をかけています。このホテルに北陸の魅力をつくる人達が集い、日々何かが起こる。そして旅行者はここで北陸の魅力に出会い、居合わせた新しい仲間と旅に出る―。そんな旅の『発地』になっていけたら」とは株式会社リビタの「HATCHI」プロジェクトリーダー・北島 優(まさる)さん。
「HATCHIは、1階の共用部分をかなり広くとっているのが特徴です。このシェアスペースを街に開いて、地元の皆さんに使ってもらいたい。農家のマルシェや、アーティストのライブ、地元作家のポップアップショップなど、地元のプレーヤーさんと面白い企画を考えていきたいですね」
当日のプロジェクト交流会も、『みんなに開いて、みんなで考える』を地で行くスタイルだった。一方的に地元住民に概要を説明するといった従来のやり方ではなく、改修前のビルの内覧会を行った後に、トークショー形式で和気藹々と話を進め、みんなで『街に開かれたホテルの可能性』を探るワークショップとして開催。大学生からご近所の住民まで、「HATCHI」でやってみたいアイデアを出し合った。
しかし、みんなを巻き込む、というやり方は、何かと手間と時間がかかるもの。社内でつくり込んだ完成形のコンセプトを、地元の人に後から提示するということだってできたはずだ。
「ホテルというのは、住居とも店舗とも違います。観光客や地元の人、違う属性の人たちが交わることで、新しい化学反応が生まれると思うんです。ホテルはそんな人たちを混ぜ合わせる『装置』。だからこそ、ホテルが出来た後、地元の人にも愛着を持ってもらえる場にしていきたい。そのためには、構想段階から地元の方にも一緒に考えてもらった方が良いと思ったのです」
正直言って、シェア型ホテルを東京の会社が金沢につくるらしい、という話を聞いた当初は「『シェア』とか『ローカル』とか、最近はやりの感じかなぁ」なんて色眼鏡がなかったでもない。けれど、どうやら「HATCHI」は本気でローカルと向き合っていく覚悟らしい。聞くに、北島さん自身、実は金沢育ちだというではないか。
「僕にとっての『ローカル』とは、外から見たぼんやりとした概念ではなく、自分事として責任を持ってやれる範囲のこと。だから正直言って、今は他の地域のプロジェクトに興味がないんです。笑」
地元を巻き込み、一緒につくり上げていく「THE SHARE HOTELS」。「HATCHI」オープンは来年、2016年3月の予定。どんな場が生まれるのか、またここからどんなムーブメントが生まれるのか、来春が楽しみでならない。