北陸産地の「ものづくりの窓口」を目指して
人と素材とデザインをつなぐ 「セコリ荘金沢」
国内有数の繊維産地であり、伝統と最先端のものづくりが多様に共存するのが北陸産地の特徴だ。石川県内にも新素材を開発する工場や、職人の手仕事が今に生きる工房など、ものづくりの現場が多数点在していて、暮らしの中で作り手に出会う機会も多い。この街にいると、ものづくりはとても身近なものとして感じられる。
2015年10月2日、石川県金沢市を流れる犀川沿いの3階建てのビルに、東京・月島にあるコミュニティスペース「セコリ荘」の2号店となる、「セコリ荘金沢」がオープンした。このスペースは、伝統技術と最先端技術、素材も製品もひっくるめて、ここに来れば、北陸にどんなものづくりがあるかわかる「ものづくりの窓口」になることを目指している。
実は、この原稿を書いている私が「セコリ荘金沢」の店主。2014年9月に「セコリ荘金沢」の立ち上げのために東京から金沢に移住してきた。そして北陸のものづくりの現場を訪ね歩き、学びながら取材活動を継続。石川県の文化が育み、そして受け継いできた加賀友禅や、福井県の越前地域に伝わる1500年の歴史を持つ手漉き和紙、日本トップシェアを誇る富山の鋳物づくりなど、取材を通して北陸の土地にしかない技術に触れることができた。それぞれの地域に、特徴あるものづくりと文化が根づいていることが、肌で感じられるのである。
「セコリ荘金沢」のオープン前には、県内のものづくりの現場を巡るツアーや、地場の繊維素材を使ったワークショップを開催し、県内外の方々に北陸産地の魅力を伝えるイベントを企画・開催した。普段はなかなか目にすることのできないものづくりの現場を開くことで素材に直接触れてもらい、北陸産地とみなさんの距離を縮められたら、という思いからだった。地元で暮らす方でさえ、北陸が国内有数の繊維産地だということを知らず、地場産業として認識されていないのが現状だ。なので「セコリ荘金沢」では伝統と革新が融合する北陸産地のものづくりの魅力を発信するアンテナショップとしての役割も担っていければと考えている。
店内外のリノベーションは隣接する金沢文化服装学院の学生さんにも協力してもらい、ほとんどを手作業で行った。また地元の方も立ち上げに協力してくれ、オープンまでたどり着くことができた。みなさんの協力があって出来上がったコミュニティスペース。セコリ荘金沢がショップやショールームではなく「コミュニティスペース」と言っているのは、「見る、買う」だけでなく、作り手さんを招いたワークショップや交流会、工場ツアーを開催し、ものづくりを生む作り手同士、あるいは作り手と素材が出逢うインタラクティブな場を目指していること、そしてその「コミュニケーション」を何より大切にしていきたいと考えているからだ。
最近では一般のお客さんの他に、「産地を盛り上げたい!」という想いを持った地元の企業さんや作り手さんが集まるようになってきている。そんな方々とも協力しながら、産地を盛り上げる活動拠点になっていければと思っている。北陸の可能生と魅力を探りながら、「セコリ荘金沢」を大切に育てていきたい。