田舎の小さなレストラン。
La Chaumiere(ラ・ショミエル)・濵田将さん
鹿児島の南部にある知覧は、一面に茶畑の広がるのどかな場所。平屋ばかりなので、歩いていると感じる空の広さが気持ちいい。江戸時代からの武家屋敷が残る通りに、一軒の小さなフレンチレストラン「La Chaumiere(ラ・ショミエル)」がある。フランス語で小さな田舎の家という意味の名前。笑顔で迎えてくれたのはオーナーの濵田将さん。
どういう経緯で、伝統的建造物の並ぶ通りでお店をやることになったのか伺ってみると、
「ここを見つけたのはホントにたまたまです。母の知人が持ち主で。来てみたら静かなので気に入りました」とにっこり。知覧には小学校の頃来たきりだったが、ひとめ見て直感で決めてしまった。
鹿児島市で育った濵田さん。知り合いもいない、土地勘もない場所で独立。「思い切っているって言われませんか」と聞いてみると、「そう言われるんですけどね~あんまりそう思ってないんですよね」と微笑む。
料理の道を志したのは、高校時代のアルバイトがきっかけ。まかないを作ってくれた人が楽しそうに料理する姿をみて「いい仕事なんだろうな」と憧れたのが始まり。
料理専門学校を卒業した後、小さな個人経営のお店で働いた。すごくいいお店だったと振り返る。言葉少なな浜田さんだが、そこでの経験の話になると言葉に力が入る。
「思えば、全てそこでの経験が生きてます。食材の使い方や、経営のやり方。覚悟をもって取り組んでいるオーナーシェフの姿にも影響を受けました」
濱田さんは自身を「飽きっぽい」と言う。だからこそ、勉強を続けても完璧なものができないフレンチの世界に魅力を感じている。
「前菜やソースはこまめに変えて工夫しています。自分が飽きないようにすることで、お客さんにも飽きられないと思うので。フレンチではほとんど使いませんが、切り干し大根でソースを作ってみたら好評でした」
「こだわりすぎないようにしています」と浜田さんは言う。とはいえフレンチ修業歴10年以上。素材への向き合い方はとても繊細で丁寧。ポタージュはヴイヨンを使わず、野菜をじっくり炒めて香ばしさや甘さを最大限に引き出して作る。「やさしい味」と好評。提供する前必ず空気を含ませて、口当たりを軽くしているのがポイントだ。
お肉は例え注文が1人分でも、2人分の塊で焼いている。そうすることで最高の焼け具合になるから。一人で料理の全工程を見れる個人経営のお店だからこそ、細部まで気を配る。
お店を始めてみると、意外にも観光客より地元のお客さんが多かった。特に年配の方が常連さんになってくれ、「手作りのお弁当を差し入れてもらいました(笑)」とかわいがってもらっている。