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鳥取県大山町に行ってきた

僕らはローカルの隠れた魅力を発見して、紹介していきたいと思います。ということで、いろんなローカルを取材しレポートしていく「エリアガイド」コラム、始めます。
第一弾は、鳥取県・大山町。美しい景色、豊かな農の恵み、そして、自分次第で生きている人たちと出会える町でした。

鳥取県大山町に行ってきた
一面の芝生と、その向こうにそびえる大山。空が広い。夕暮れどき、神々しさすら覚える眺め。

■知られざる、大山町

鳥取県西部の町「大山町(だいせんちょう)」へ泊まりで行ってきた。もともとは、この町で今行っている人材募集について記事を書いて欲しいと依頼を受けたことがきっかけだったのだが、せっかくだからこの土地のことをもっとよく知ってみようと思ったからだ。
もっとも、実を言えば大山(だいせん)という山のことは知っていても、大山町については事前のイメージがまったくなかったというのが本音である。
身近な人に尋ねても、大山に山登りやスキーで行ったことはある人は居ても、それ以外には知らない、という人がほとんど。
地図で見ると、米子市のお隣りの町であることはわかったが、僕の同僚も言っていた。「米子には行ったことがあるんだけどね……」。

結論から先に言ってしまうと、水がきれいで、山と空と海が雄大な景色をつくり出し、食の恵みが豊かで、自然を生かしたさまざまなスポーツやエコツアーを存分に味わえる町だ。また、みずみずしい、という言葉がぴったりだった。車の窓を開けて走っていると、その雄大な景色と相まって、 風に吹かれているのが気持ちいい。 そんな環境が好きな人なら、大山町を知らないでいるのはもったいないし、気になった人がいたら、とにかく一度行ってみるのがいいと思う。
出会った人が20-30代の県外からの移住組が多かったせいだろうか、神々しいと思う程の美しくて素朴な田舎なのに、出会った住民の気質は意外にもモダンだった。フレンドリーですぐ打ち解けやすく、それでいてベタベタとしているわけでもない。他人に何かを求めるというより、自分次第で生きている潔さのようなものをここで暮らす人々に感じた。

■アクセス

大阪、京都、神戸はいずれも車で3時間クラスで行けるとのこと。東京からは飛行機が行きやすく、米子空港まで1時間、そこから車で大山町まで40分程度。(空港から米子駅まで電車で行き、そこから車で大山町に向かうのであれば空港から大山町まで1時間程度)

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大山町でブロッコリー農家を営む上田陽介さん。★現在、「美しい町で、農の匠を継承する」というタイトルで大山の農業の継承者になってくれる人を広く募集中! 募集記事はコチラ

■大山町特徴まとめ

現地で10数名の方に話を伺ったのだが、その中で大山町についてわかったこと。

  • 登山を始め、サーフィン、釣り、サイクリング、スキー、スノーボード、クライミングなどスポーツの楽しみが充実
  • 米子〜大山町は日本におけるトライアスロン発祥の地
  • スポーツ用品メーカー「モンベル」が事務局を務め全国5カ所で行われているスポーツイベント「SEA TO SUMMIT」の始まりの場所でもある
    ※SEA TO SUMMIT…カヤック・自転車・ハイキングの、3つのアクティビティーを組み合わせて水辺から山頂を目指し、自然の循環を体感する環境スポーツイベント
  • 大山の山頂近くは国立公園に指定されており、ブナ林から涌き出す水は名水として有名。大手飲料水メーカーの工場もつくられている
  • 農業・漁業・畜産業と、第一次産業が盛んで食材が豊か。
  • 特にブロッコリー、ネギ、梨は名産
  • 山と海があり、しかも視界を遮る建物も少ないので、雄大な景色が広がっている
  • 「都会で働いていたときと比較すると収入面で下がったが、お金を全然使わないので困らないし貯金もできる」と語る移住者が多い
  • 子どもの数は少ない。その一方で、二世代同居、町みんなで育てる意識、空き待ちがない保育所といった環境面で、子どもを預けながらの働き方はしやすい
  • お店が少ない。飲食店もコンビニもほとんど見かけない
  • 日本有数の芝生の生産地(鳥取県は全国2位の芝の産地であり、大山町は県内1位の栽培面積)
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大山の山頂に陽が上った瞬間を捉えた「ダイヤモンド大山」の様子。(写真提供:セレン環境教育事務所)

■田舎としてのレベルの高さ

中でも特に印象に残ったのが「大山は、レベルの高い田舎」というひと言だった。大山町で現在農家をしている女性の旦那さんの言葉だ。
奥さんはUターンで戻ってきたが、旦那さんはこの土地の人ではなく、他県の出身。しかし婿入りして大山町に移住し暮らすようになって、そう実感したという。
また初日に土地の美味しいものを食べたいなという気持ちから、お話を聞いた方のひとりに、「サザエとか、どこのお店に行ったら一番新鮮で美味しいの食べれますかね?」と聞いたところ、「うーん……オレん家ですかね?」という想定外の答えが帰って来たのにも驚いた。その方は漁師であり、サルサダンサーでもある。インタビューした方の中で、第一次産業の人が多かったのが印象的だった。
みなさん、宴会は店でなく、持ち回りで誰かの家に行って、一品持ち寄りで飲むのだそうだ。そして、その品揃えがめちゃくちゃ豪華なんだとか。
他にも4月から移住してきた方は、「私、ここに越してきてから、調味料と加工食品以外、ほぼ買ったことないです。お肉もお魚も野菜も、周りの方がくださるので。とにかく、お金を使わないんですよ」と、こちらを羨ましがらせているとしか思えないコメント。

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とある日の持ち寄り1品(アワビ、サザエ、タイ、その他…)。恐るべし家呑みクオリティー!

■移住者はまずここへ行け 「まぶや」

移住してきた人たちの生の声を聞きたければまずこちらへ、と言われて取材初日に案内された場所「まぶや」。かつては町の医院として使われていたが、近年は空き家と化していた昭和3年築の古い日本家屋を改修してできあがったコミュニティーセンターだ。
現在ここは地元住民はもちろん、大山町にUターン・Iターンしてきた人たち、また、移住希望者が集まる拠点になっている。
宮大工、漁師、農業従事者、アーティスト、サルサダンサー、シンガーソングライター、カフェオーナーなどがメンバーにいる「築き会」という任意団体と「やらいや逢坂」という地域自主組織が中心となって、施設運営がされており、たくさんの人たちに、集会、イベントなどの用途で利用されている。
またアニメーション作品を海外や県外から招聘した作家に滞在制作してもらうアーティスト・イン・レジデンス「大山アニメーションプロジェクト」の拠点ともなっている。私たちが訪れたときには、ちょうど滞在作成期間でありチャンキー松本さん、いぬんこさん、お二人のアーティストがここで暮らしながらアニメーションの制作をされていた。 館内には大山町に移住・定住を希望される方のために移住相談窓口も設置。町役場と連携しながら空き家の情報提供や生活の相談・サポートを行っている。また金土日月はカフェも運営されている。

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昭和3年に建てられた元・内科医の建物を再生したコミュニティースペース「まぶや」。

■リアル・ローカル・ボイス

ここからは、話を伺った方たちのお話を抜粋でご紹介。移住してきた人、帰ってきた人、訪れている人。リアルボイスの数々、お届けします!

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中村隆行さん (漁師/築き会メンバー)
本職は素潜りの漁師をしています。27歳のときに埼玉から移住して、もう13年になります。「素潜りで田舎暮らしをしませんか」という体験事業に申し込んだのが直接のきっかけですが、大山は水がきれいなところが気に入っています。国立公園に指定されているため民家など勝手に建てられないから自然も守られています。この町は第一次産業の人が多いですが、生計を立てていくことは十分にできます。収入が格段に多いというわけではないけれど、出て行くお金が少ないので、結構余裕はあります。

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大下志穂さん(アーティスト/大山アニメーションプロジェクト アートディレクター/築き会メンバー)
隣りの米子市で生まれ育ち、大学進学の際に東京に出て、それからタイとカナダに住んで、東京に戻って働いた後、アメリカ人の夫とともに、こちらで住み始めました。ちょうど今はアーティスト・イン・レジデンス(「大山アニメーションプロジェクト」)のアートディレクターをしています。アーティストを呼び、滞在して地域の人と交流しながら制作してもらうプログラムです。昨年はカナダから2人、今年は東京から2名のアーティストに来てもらいました。大山町は、山と海があるところが好き。眺めが広大で、海まで見渡せるという景色はそんなに他にはないと思います。

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奥田光里(ひかり)さん(花苗農家)
もともと農家の子として、この大山町で生まれ育ったのですが、いったんは大阪に出て働いていました。しかし一人暮らしをして悲しいと思ったことが、都会で 買う野菜の質が低いことでした。実家は花の農家ですが、家族で食べる程度の野菜や米はつくっていましたし、それ以外のものも近所の人から分けてもらったり、それが当たり前のようにして育ちましたから、「うちの畑に行けばもっと新鮮で美味しい野菜があるのに……」と大阪から恋しく思ったのを覚えています。そして22歳で帰郷、結婚して農家の仕事を継ぎました。帰ってきて特に良かったと思うのは子育て面です。この辺りだと適当に遊ばせておけるし、至るところに子どもの遊び道具になるものがある。それに、うちの上の子はまだ3歳ですが、野菜が畑からできるものだとわかっているんです。今は花苗農家をしながら、ただつくるのではなく、どうすればお客さんと私たち生産者の間をもっとつなげられるのかなってよく考えますね。

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チャンキー松本さん(大山アニメーションプロジェクト2014招聘作家/絵本作家・紙切り似顔絵師)
アーティスト・イン・レジデンスに参加するのは初めてですが、居心地がいいですね。僕の立場は、昔の民俗学者・折口信夫さんの言葉を借りれば「まれびと」、共同体の外からやってきて何かしらそこの共同体を活性化して、また去って行く存在であるかと思います。もしかしたら住んでいる人では見えない部分がちょっと見えるところがあるかもしれません。それに僕はいわゆる観光地的な場所を見て回るより、そこにいる「人」を見て接するのが面白いと感じる人間。この「まぶや」に集まってきて、何かを生み出していく人のさまに興味があるので、今回つくるアニメーションでもそれをテーマにしてみたいと思いました。

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大林光雄さん(香取開拓牧場/香取開拓一世 ※注)
わしら香取村の第一世代はもともとみな、香川県の人間だったんだ。しかし戦時中、豊かな暮らしを求めて大陸・満州に渡った。終戦と共に引き上げてきて香川に戻ったが、もはや住む家も耕す土地もなく、そんなときに受け入れてくれたのが鳥取県だった。深い山奥の、半年は雪に埋もれるこの土地を一から開墾して、皆で住んだ。そして酪農を始めた。大変な苦労だったが、若かったからか、楽しい思い出だ。引き揚げてきたわしらに守るものなんて何もない、ただ「みなで新しい村をつくる」ことに向かって挑戦する気持ちだけだった。そうした村だから、100年続くように、この村に住んでくれる次世代が今は欲しいね。
※香取開拓一世……第二次大戦後、中国東北部の満州から引き揚げてきた香川県の人たちが大山中腹のエリアを開拓、香川の「香」と鳥取の「取」を一文字ずつもらって「香取村」と名付けた。その開拓一世を指す。

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中島佳代子さん(「山陰sacca」コーディネーター)
香取開拓村にあった小学校の分校が今は廃校になってしまいましたが、そこを保全する意味もあって、「大山ものづくり学校」という現在の施設ができました。県内だけでなく、 関西圏等からも年齢問わずお客様が訪れてくださいます。ここでは山陰の作家さんたちの作品を中心とした心ときめく商品を展示販売するとともに、彼らについて知ってもらい、次の仕事へと繋がるような活動をしています。町から離れ、ものづくりには最高な環境ではありますが、大好きな地で活動を続けていくため、「どう魅力を発信するか」は大きな課題であり、私たち山陰saccaの役割でもあると思っています。

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大山町長田地区長の福間壽秋さん(左端)と、地元で育った山本三姉弟。

福間夫妻(大山町長田地区長と、その奥様)と山本三姉弟(長田地区で生まれ育った子どもたち)

福間夫妻「この2、3年で、長田地区が着目されるようになっているというか、若い人が移り住んでくるケースが急に増えています。アーティストの大下志穂さんもそのひとり。彼女のところにはよく海外からのお友達が訪ねてくるが、今までに知り合う機会のなかったそうした人たちと交流できるのも嬉しいね」
山本三姉弟のコメント「自然がいっぱいあって、ここより季節を感じられる場所はない」「お店も自動販売機も信号も町の中にはない。でもすぐ買い物に行けないから、人同士のつきあいがある。ずっと住むんだったら、人とのつながりがあるところがいいなぁと思っています」「最近、移り住んでくる方たちが多いのを見て、『長田の良さがわかるなんてお目が高い!』と内心思っています(笑)」

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福田桂子さん(セレン環境教育事務所・インタープリター)
「もともと岐阜県の出身ですが、大学生から社会人を島根・鳥取で過ごした後、子どもの頃からの夢だったインタープリター(自然と人との「仲介」となって自然体験を行う人のこと)になるため、専門の資格を東京で取得し、清里での研修を経て、馴染みのある鳥取に戻りました。今は大山町周辺を拠点に活動しています。月のプリズムや自然の暦に合わせたプログラムの他、旅人の希望や予算にあわせてオーダーメイドでプログラムをつくることもできます」

■その他大山町の写真

フォトギャラリーでお送りします!

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地域住民と、東京からイベントのゲストで来られていた「西荻案内所」の人々との交流風景。
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「まぶや」の一角にはカフェスペース(mabu cafe)もあり、町の憩いの場となっている。
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花苗を育てるハウスの合間からは日本海が見える。
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「まぶや」にて。アーティスト・イン・レジデンスで滞在しているチャンキー松本さん・いぬんこさんがアトリエとして使っている部屋。
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「まぶや」の縁側で日なたぼっこ中のチャンキー松本さん。
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旧大山小学校の香取分校だった校舎を使って営まれている「大山ものづくり学校」。
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「大山ものづくり学校」の室内。山陰地方を拠点に活動する作家の作品がセレクトして販売されている。
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若い移住者が増えている大山町・長田地区で開催された“ゆず畑ライブ”の様子。向こうには海が。
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大山の登山口にある「モンベル」。実は中国地方における第一号店。

■終わりに

記事は記事、体験には叶わない。直感的に気になった方は、ぜひ大山町を訪ねて、その景色と食と人を体感してみて欲しい。
以下に、参考となるURLを紹介しておきます。

「山と旅の宿ゲストハウス 寿庵(じゅあん)」。
アットホームで旅人の財布にも優しい。今回泊めていただいた宿です。


大山町移住定住促進プロジェクト こっちの大山暮らし

移住先として大山町をご検討されている方に。


大山町役場 企画情報課未来づくり戦略室
大山町の地域おこしに興味を持った方はこちらまで。

■ご協力いただいた方々

今回の取材にはたくさんの方々からのご協力をいただきました。ありがとうございました。

大山町役場 企画情報課 未来づくり戦略室 地域おこし協力隊の皆さん/まぶや「築き会」メンバーの皆さん/チャンキー松本さん・いぬんこさん/西荻案内所の皆さん/鳥取藝住祭 林 曉甫さん/大山ゲストハウス・寿庵/奥田園芸 奥田光里さん/cafeイロドリ/大林光雄さん/山陰sacca/上田陽介さん/大山町長田地区長・福間夫妻/山本ちなつさん・はるひさん・りゅうたさん/セレン環境教育事務所

(文=安田洋平 写真=安田洋平・魚住麻衣子)

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