【大阪】写真をもっと好きになる 写真とプリント社
物質的な味わいがあり、心を込めて手を加えることでいかようにも表情を変えるフィルム写真。その独特の手触り感と空気感、そしてシャッターを切るリアルな手応えの素晴らしさを、より多くの人に伝えていきたいと「写真とプリント社」では考えているという。
「写真とプリント社」は、制作ディレクターの松川祥広さん、写真家の平野愛さん、ラボマンで写真家の小倉優司さんの3人で構成されている。この場所ができるまでは、松川さんはデザイン事務所勤務、平野さんはフリーのカメラマン、小倉さんはラボ勤務と別々で活動していた。
奈良・京都・三重出身の3人が、心地良く一緒に働ける場所を、と決めたのは大阪の土佐堀。取引のある出版社や広告代理店等が多かったという理由もあるけれど、この物件に出会ったからというのが何よりのきっかけだったそう。
「土佐堀川沿いの交差点で振り返ったら、このビルの窓に【川の見える美しいオフィスです】と貼り紙されていたんです」
そんな、ちょっとロマンチックな物件との出会いから6年。
今この場所は、デザイン事務所、自然光での撮影スタジオ、写真現像所という3つの性格を持っている。デザイン事務所としては例えば学校のパンフレット。平野さんが写真を撮り、それを小倉さんがプリントし、その写真を素材に松川さんが編集してデザインする、というチームで仕事をしている。
「写真とプリント社」の中にある写真現像所(小倉優司さん担当。「mogu camera」という名で営業している)では写真をもっと好きになってもらうために、写真教室や撮影会などを開催しているほか、自分の撮った写真を現像・プリントしてくれる。
写真をプリントすること、手に取れる姿にすること。その喜びや楽しさを、現像所という場を通して提案しているのだ。
ここでは、フィルムの現像に訪れるお客さんと旅の話をしたり、撮影スポットについて情報交換をしたりする。日本だけじゃなく海外からの旅行者も、旅の途中にカメラをぶら下げて立ち寄ってくれるようになった。
そうして「フィルム写真の世界が初めてという人にも、長く親しまれている人にも、広く気軽に立ち寄ってもらえる場所でありたい」という思いが、徐々に形になってきていることが何より嬉しいそうだ。
写真を撮るということに対してエネルギッシュかつストイックな平野さん(平野さんは、書籍『東京R不動産』の写真も手がけている。他に大阪R不動産やアートアンドクラフトのサイトでも彼女の写真が多く使われている)。頼りになる職人肌の小倉さん。そして、その2人をディレクターとして後ろから支えている松川さん。
そんな3人がここから伝えたいと思っていることは、何よりその社名に表現されている。すなわち、「写真とプリント」の楽しみをひとりでも多くの人に知ってもらうこと。それに尽きる。
(さわの)