逗子市「私の逗子へようこそ」/焼き菓子キミドリ パティシエ 久保田翠さん
ローカル気になる人
「私の逗子へようこそ!」
印象的な言葉だった。
取材を申し込むための、メールでのやり取り。
それでは待ち合わせ場所は逗子駅にしましょう、
と決まって、最後にいただいた返信メールの末尾に、この言葉があった。
私の、とまで言い切れるほどの場所が、
果たして自分にあるだろうか、ふと省みてしまう。
久保田翠さん。
横浜出身の、女性パティシエ。
現在も横浜市南区井土ヶ谷で、焼き菓子のお店「キミドリ」の経営をされている。
本職であるパティシエの他に、雑誌での連載記事の執筆や、自らモデルとして誌面に登場することもある多才な女性だ。
そんな久保田さんが、逗子へと引っ越してきた。
お店のある横浜市南区の井土ヶ谷までは、京急逗子線の新逗子駅から、片道30分程度の通勤となる。
「実は、前にも住んでいたことがあって」
逗子に住むのは、5年のブランクを経て、2回目。
「絶対に戻ってこようと思ってた」
この念願が叶えられ、久保田さんの逗子生活が今年、再スタートした。
逗子とは、どんなところなのか。
てくてくと歩ける範囲に好きなお店がいくつもある。
若い人も、古いお店も一緒に存在できている。
電車が便利だから、都内に出ることも容易い。
逗子や葉山に対して、かつてはアウトドアスポーツ好きが行く土地というイメージが強く、行こうと思ったことがない頃もあった。
そんな、眼中になかったはずの土地に来たきっかけは、家族に勧められたアルバイトの面接地が、逗子だったことから。
「それまで来たことがなかった。京急線に乗って、新逗子駅ひとつ手前の、神武寺駅を越えた辺りまで来たときに、窓の外の山の景色を見てびっくりして。カルチャーショックというのか。面接から帰る頃には、もう私絶対ここに通うって勝手に決めていました」
「できればずっと逗子にいたい。お店も、こっちに移したいなって思っています」
逗子で営業するとしたらどんなお店にしたいですか?
「昔のタバコ屋さんみたいな、ガラス戸の路面店とかがいい。お菓子は量り売り。小さい子が一個二個、っておやつに買いに来てくれるような。この辺りで一番のんびりした店を目指したい」
「そういうイメージを抱いても、ゆるされる土地と、人の雰囲気がある。しかたないねえ、みたいな。他の土地にはない空気です」
久保田さんのつくるお菓子の店「キミドリ」が、
懐かしのタバコ屋スタイルで、
逗子の風景の中に自然に存在している日を、今から楽しみに待っている。