オワリとハジマリ

土地のチカラが住処を決める、家さがしのオワリとハジマリを予感させる場所

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写真1
八ヶ岳連峰と麓に向かって伸びる広大な森

「釜無川をボトムに、「八ヶ岳が終わり、南アルプスが始まる。」もちろん逆の言い方もできる、「南アルプスが終わり、八ヶ岳が始まる。」のように。川は山梨県北杜市、長野県との県境の街を北西から南東方向に流れ、八ヶ岳と南アルプスはこの川に沿って続く七里岩と呼ばれる断崖で終焉を迎える。ピークから長く連なる広大な南斜面が最後には大胆に川へ切り落ち、南アルプスはここから南へ稜線を上げていく。なんともダイナミックな地形がここなのだ。

写真2
八ヶ岳のオワリ、連なる七里岩

都会で暮らしていると地形を意識する機会はそんなに多くないが、ここで日々の暮らしで移動する高低差は半端ない。例えば、娘の保育園がある清里の海抜は1290m、僕が住む小淵沢が880m、標高差410mを日々行き来していることになる。因みに釜無川の海抜は450m。一つの市域の中で人が日常の生活を送っている場所の高低差が1000m近いそんな地形のエリアだ。(そして釜無川を越えるとそこは南アルプスの始まりの街、白州と武川、ここから南に甲斐駒ヶ岳を臨みながらまた海抜を上げていく。)

写真3
正面が南アルプス

八ヶ岳の南斜面の広大さはなかなか言葉で伝えるのは難しい。ちょうど反対側の甲斐駒ヶ岳から望むと赤岳から同心円状に南に斜面が広がっている様子が見て取れる。日照の死角がほとんどない土地は集落と田畑と森で彩られていて、縄文時代の土器も多数出土する。ずっと古くから人が暮らしてきた場所なのだ。

写真4
緩やかな南斜面に形成された集落、正面は富士

最初に、住む場所の候補としてここを訪れた時に「明るさ」が強く印象に残った。そして多様な植物と斜面を駆けおりるように流れる水路の水。南面が開き、清涼な水が流れ、森のある環境に出会うと、人間の内に古代から遺伝子に刻まれている住処を選択するなにかの尺度が反応しているのではないかと思った。

「人が暮らすのによい場所だ」、そんな感じ。

都市部で住処を探すときには、もちろんその土地が有している何かを「カン」が捕える時もあるのだろうが、最終的には駅までの距離とか広さとか設備とかコストパフォーマンスや利便という数字が優先される。

なんとなくだけど住処探しの指標がこれからの時代、少し変わってくるような予感がしている。人間にとって、本能的に求めている場所、地形だったり、植生だったり、水だったり、日照だったり、災害の少なさだったり、こうした大切なことごとくが改めて価値となる時代がもうそこまでやってきているように思う。

住処を探す尺度のオワリとハジマリを予感させる何かがここにある。

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