古書店の文脈を受け継いで。
serif_s
※終了しました。
金沢駅からまっすぐ歩いて徒歩15分、尾張町〜橋場町エリアは、藩政期より昭和中頃まで金沢の商業の中心地として栄えたエリアだ。間口の広い大店がずらり沿道に並ぶ光景は、きっと壮観だったことだろう。
時代の変遷とともに、中心地も移り、一時はとても静かになったが、昨今またこのエリアがおもしろくなってきている。
この界隈には洋館風のレトロな建物や、町家が多く現存する。それらの文脈を読み解き、再編集したスポットが増えているのだ。今回は尾張町に2016年3月にできた、「serif_s」をご紹介。
東京のデザイン事務所「セイタロウデザイン」が手掛けるタイポグラフィー専門の書店&ギャラリーで、奥はシェアオフィスとしても利用されている。
もともとは「南陽堂書店」という70年続いた古書店。旧制四校時代から学生や文人が通い、ときにはディベートが繰り広げられていた場所だった。
欧米フォントの世界では、いわゆる日本語で言う明朝体のことを「セリフ体」と言い、ゴシック体のことを「サンセリフ体」と言うそうだ。
「モダンな印象を内包するサンセリフがモダニズムと共に世界中を席巻しているけれど、ぼくはなぜか昔からの時の流れと痕跡を感じさせるセリフ体に惹かれてきた」とは、セイタロウデザイン代表の山﨑晴太郎さんの言葉。それが「serif_s」という店名に繋がっているそう。
流れる時の滲み、そして建物の文脈まで引き継いでくれたこのギャラリーは、尾張町というエリアリノベーションの観点からも、とてもシンボリック。活版印刷機を使用したワークショップなども開催予定だそうなので、タイポグラフィー好きはもちろん、ぜひ気軽に立ち寄ってみてほしい。