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大分県臼杵市に行ってきました

2016.10.07

物件選びがそうであるように、土地だって人それぞれ嗜好やこだわりで選ぶ場所が違うはず。見知らぬ土地を訪ねたときに、この場所とマッチする人を考えるのは楽しい作業です。この度は「うすきツーリズム活性化協議会」から移住モニターツアーの取材依頼をいただいて、大分県臼杵市に行ってきました。

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大分県臼杵市の農村風景。

臼杵市はこんなところ

臼杵市は大分市から車で1時間、もしくは小倉駅からソニックというJRの特急列車を使って2時間程度で着きます。大林宣彦監督の映画の舞台になったことがあり、臼杵駅から徒歩数分も行けば、白い漆喰壁と昔の瓦屋根に石垣の景色。武家屋敷跡や蔵造りの建物もあり、中心市街地は全体的にノスタルジックな雰囲気が漂っています。

けれども、車を西に走らせれば、すぐに広大な農村地帯が。かたや、北へ向かえば、漁港や海水浴場、大きな造船所のエリアに出ます。というか、臼杵市の駅から5分程で海です。もともと、臼杵城(今は城跡のみ)は、回りを海に囲まれた断崖絶壁の島の上に築かれた要塞のような姿をしていたそうです。今は城跡の回りは埋め立てによって市街地ですが、中心地からすぐのところが海で、そういうところはちょっとストックホルムに似ていると感じました(気候はぜんぜん違いますが)。ちなみにここのお殿様だった人は大友宗麟、キリシタン大名として知られた人。

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循環農法という自然農の農法でつくられた野菜たち。
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山と川と。

またさらにノスタルジックさをかきたてるのが、川沿いにそびえる「フンドーキン」という、九州では有名な味噌醤油の醸造会社の古い工場の建造物です。実際、臼杵市内では醸造業や造船業が主産業らしい。

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海。
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臼杵市のビーチエリア・佐志生。海水浴場でバーベキューをしていた人たちを撮影。

とは言え、基本的には農業と漁業の第一次産業が中心という印象です。農地や森林が約8割を占めています。

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城下町。臼杵城跡近くの二王座という一帯には100年を越す家が多く残る。
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大林宣彦監督の映画「なごり雪」で、ヒロイン雪子の暮らす家として登場した、石垣の上に建つ洋館。

農家になる以外に果たして何の仕事ができそうか、という印象はあります。ただ、最近、古家を自分で改装してパン屋をオープンさせた移住者がいると聞きました。あとは大分市と車で1時間の距離なので、大分で働いて住まいは臼杵市という組み合わせもできます。

アーティストにとっては、じっくりと活動に取り組めて良い土地なのではないでしょうか。実際、大阪生まれで、この地域の子どもたちを相手にしたアートのワークショップを仕事として受託して行っている20代の女性アーティストにお会いしました。次の週末も「黒島」という、臼杵市の海水浴場から渡し舟で行ける無人島で、子どもたちと壁画を描くプログラムを行うのだと話していました。個人的には、臼杵市は、海沿い、山側、中心市街、それぞれで受けるインスピレーションが違うので、地域を選べるようにしてアート・イン・レジデンスなど行っても面白いのではないかと。

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大阪から来ている20代のアーティストと、外国から臼杵市に移ってきた料理研究家の女性が一緒に暮らしている家を訪問。この組み合わせが面白い。

料理研究家の方にもお会いしました。野菜や海産の食材も豊富、それから味噌醤油といった発酵文化もあるので、たとえば料理研究家で都市部に出ていかなくても仕事ができる、そんな方にもいいかもしれません。

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市の観光交流プラザで見つけた、江戸の頃の臼杵城の再現図。この要塞感、かっこ良過ぎ!
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臼杵市内、川沿いにそびえる「フンドーキン」のマーク。九州では有名な味噌醤油の醸造会社。

ツアーで見学した物件

ここからは移住モニターツアーで見学した物件をご紹介します。中山間地の農家物件(旧野津町エリア)。漁港や海水浴場に近い海側の物件(佐志生)。古い瓦屋根と白壁が美しい古民家(中心市街地)など。
臼杵市の空き家バンクに登録されている現在の物件数は60物件程度。おおよそ2~3週間ごとで情報更新されていて、「交渉中」の表示が出ているものも、電話をすればウェイティング登録することが可能とのこと。

<物件1>

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中心市街地まで車で10分の物件。
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見事な欄間。ツアーで見た一軒家は、造作の良い家が多かった。

<物件2>

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JR佐志生駅近くの平屋。ここから海に出掛けていくのを想像すると楽しい気分に。
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かなり日に焼けているが、造り自体は良い。

<物件3>

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学校の校長先生が住んでいたという物件。室内に残されている骨董品なども素晴らしい。
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目の前は坂。玄関からの景色。

物件は全体的にお値打ちで、賃貸だと平屋の一軒家で2.5万円のものまでありました。売買なら100万を切るものも。それでいて築年は古いものの欄間が大変美しかったり、上質な造作の家が多い印象でした。なお改修費は市から半額出るということです。

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移住モニターツアーの様子。すでに移住されている方のお宅を訪問。

人材

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この春、岡山から移住してきた、自然農法で農業を営むご一家のお子さん。日に焼けて真っ黒。

余談ですが、今回の移住モニターツアーを取り仕切っていた「うすきツーリズム活性化協議会」の女性スタッフの働きぶりに目が行きました。広報物のデザインから、キャッチコピーの制作、コースのアレンジ、スケジューリング、またツアー当日不測の事態があった際のスピード対応まで、まさに獅子奮迅。福岡出身の20代の女性で、協議会の仕事を機に、この町に移り住んできた人。

また、「A・KA・RI」というコミュニティーハウスの運営に力を入れている、20代で東京の八王子から移住の男性。さらに動画を使って地域の可視化をこれから本格化していくという、“メディア担当”30代の大阪出身男性。このふたりも頼もしい若手という印象でした。

興味深かったのが、3人とも立命館アジア太平洋大学(APU)の出身者であったこと。APUは大分県別府市にあるからという理由もなくはないでしょうが、それだけではないのでは。
APUでは近年、「キャンパスから出て、地域で学んで実践する」ことに特に力を入れていると聞いたことがあります。

土づくりが革新的

その他に臼杵市で興味深かったのは、「夢堆肥」という堆肥です。前市長の頃より、臼杵を有機農業の里にしようとの施策があり、まずは良い土からと大規模な「土づくりセンター」の開設を計画。草木類8割、豚糞2割という比率で完熟堆肥をつくる日本初の堆肥づくり専門施設を2010年に建てました。実際に見学しましたが、規模的にも内容的にも、こんな堆肥センターは他に類を見ないのではないでしょうか。伐採した草木などを市民から購入して堆肥にするそうです。農家はトン単位で買っていきますが、同時に家庭菜園レベルでも積極的に使ってもらいたいと、10kg300円という破格な値段で市民に提供されています。

ちなみに「100年ごはん」という、2014年に公開になった臼杵市の食育についての映画がありますが、その中にも大々的にこの土づくりセンターの話は登場します。

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2010年に開設された「臼杵市土づくりセンター」。
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「夢堆肥」

「臼杵時間」が合う人、どうぞ

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食料は豊富にあります、臼杵。

今回の感想です。ノスタルジー漂う街中と、のんびりとした農村、南国感の漂う海辺のビーチ、その三様がひとつの市の中にあって好みに合わせて選べるアラカルト感が楽しかったです。あとは、温暖であるということ。土がいいということ。食物が充実しているところ。

正直、仕事はどうするのかなということは思わないではないですが、気候が良くて土壌や水が良くて山の幸も海の幸もあるというのは羨ましさを感じました。

個人的には、先述のAPU出身者とか、そういう人たちの中から、さらにこの地域のキーマン的存在が現れ頭角を表してくれると良いなと。そうなれば、ここで活動しようとか、一緒に何かしたいという若い人がよりアプローチしやすくなる気がします。

(編集部)

次回臼杵市移住モニターツアーの開催についての問い合わせ・相談窓口は以下までご連絡を

●うすきツーリズム活性化協議会 事務局(担当:小金丸)
URL http://www.usuki-jikan.com/
TEL 0974-32-7181  FAX 0974-32-7764
Mail info@usuki-jikan.com
● 臼杵市空き家バンク
http://www.city.usuki.oita.jp/categories/bunya/ijyushien/akiyabank/