【大阪】川に浮かぶ小さなおうち 御舟かもめ 船長・中野弘巳さん
親しい人が大阪へ来たら、誘いたくなるのがこれ。
10人ほどが乗れるちいさな船でのんびり大阪の川をゆく「御舟(おふね)かもめ」です。
簡単にいえばクルージング事業だが、観光客に用意されたそれとは少し違う。熊本・天草の海で真珠の養殖作業に使用されていた小舟を改装した御舟かもめ。
「観光船はいくつもあるけど、水辺の気持ちよさをもっと日常的な感覚で使ってほしいなと。それで住宅の設計をする建築士さんに相談しました。コンセプトのとおり小さな家のような船になりました。」
船長・中野弘巳さんは、大学では街づくりを専攻、水辺に目覚め大川に面したマンションで日夜水面を眺める暮らしを始めた。社会人になり就職した先はマスコミ。TV番組の制作ディレクターとして多忙な日常をこなすも、自分の場所をはっきりさせたい、もっと人の顔が見られる仕事がしたい、とモヤモヤしていた。そこで回帰したのがずっと好きだった水辺だった。周囲には反対もされたが「水辺でごはんを食べてますって人がひとりくらいいてもいいじゃない」そう思い立った先がこの事業だった。
お客さんは8割くらいが大阪の人。朝ごはんクルーズ、カフェクルーズに、夕方からはバークルーズ。どちらかと言えば「早起きしたから喫茶店のモーニング行く?」とか「仕事帰りにちょっと一杯どう?」な感覚に近い。仰々しいアナウンスはなく船長のこれまたローカルなガイドを聞きながら小一時間、ただ風に吹かれてのんびり船の上で過ごすだけ。
定番は中之島を中心にぐるりと周回するコースだが、折りたたみ自転車と船で街を巡るクルーズポタや、船上で楽器を楽しむクルーズなどの企画ものもある。工場、高速道路、橋、水門などを鑑賞するドボククルーズもたまらない。春には桜、冬にはこたつでおでんのお鍋をつつきながら。乗り合いで楽しむ人も入れば、結婚前の両家顔合わせの為に貸し切った家族もいる。水面の高さから見る大阪の景色は大阪人ですらはじめてが多く、都心にもこんなに季節の彩りがあったんだと気づかされる。
開業して5年、プライベートでは家族が増え3児の父になった。船に乗る以外の事務仕事は自宅でこなし、同じ机では隣に娘が座って宿題をしている、そんな日常だ。不安な日々も乗り越え今では「一家5人この仕事で食べてます!」と大きく笑う。
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