金沢の魅力を伝えるクリエイター
石川県観光総合プロデューサー/早川和良さん
2015年3月14日に開業する北陸新幹線。開業後は東京−金沢間が2時間半で結ばれるため、観光やビジネスなどへの波及効果が期待されています。そんな石川と金沢のPR活動を支えているのが、早川和良(かずよし)さんです。
愛知県生まれの早川さんが金沢を意識したのは、大学進学を考えていた高校生の頃。先に金沢美術工芸大学に進学していた先輩から、一度遊びに来いと誘われたことでした。
「季節は冬で、しんしんと雪の降る夜。金沢駅から先輩の住む家へと歩いて行く途中、町家が建ち並ぶ伝統的な町並みに感動しながら歩いていると、どこからともなく、芸姑さんの弾く三味線の音が聞こえてきてね。名古屋のような戦後の都市計画でつくられた町で育った自分が、一瞬にして金沢の情景にココロを奪われたわけです。」
そうして、金沢美術工芸大学へ入学された早川さん。卒業時には金沢で就職することも考えましたが、東京のCM制作会社に入社することに。それからは、ヒットメーカーとして、JR東海「クリスマス・エクスプレス」シリーズ(*1)の他、誰もが見たことのある有名企業のCMを数多く手掛けることになりますが、その間、金沢とはどんどん疎遠になっていました。
そして再び、金沢と縁ができたのが2005年。石川県から県の観光総合プロデューサーになって欲しいとの声が掛かり、それ以来、定期的に金沢に通う生活がはじまったのでした。
近年では北陸新幹線開業に向けての観光面が取りざたされることが多くなり、例えば、北陸新幹線開業PRキャラクター「ひゃくまんさん(*2)」も、石川県観光総合プロデューサーとして早川さんが関わった仕事のひとつ。本業のCMディレクターとしても、金沢市の北陸新幹線金沢開業プロモーションCM(文末に動画あり)などを手掛けられています。
さらに、学生時代以来、数十年ぶりに来た金沢では、大きな商業ビルができる一方で、古くからの町家が取り壊され、駐車場になっているという現実を見て唖然としたそう。そこで、当時ちょうど相談を受けていた主計町(かずえまち)の町家を買い取り、「菊乃や」という貸し町家を始められました。
「素晴らしい町並みが虫歯のように欠けてしまっているのが残念でね。なんとかこの風景を残すため、自分にできることをやろうと思ったんだ。ホテルは世界中どこに行っても変わらないけど、ここでは町家に泊まるという文化体験と共に、短期間でもこの町の住人になれるんだよ。」
そして次なる町家プロジェクトとしては、尾張町の老舗商店だった建物をリノベーションして、町の風景を残すとともに、伝統工芸や感度の高い商店が入る商業空間をつくる計画を進められています。
最後に、これからの金沢の町がどうなっていって欲しいかを伺いました。
「新幹線が開業すると、金沢−東京で人やモノの交流が増えるから、金沢はそのエネルギーを吸収しながら、よりエネルギッシュな町になって欲しいね。そして例えば、町のコンパクトさや生活のしやすさは、若い人が事業を起こすのにぴったりな環境だし、美術系・デザイン系の人にはもっとクリエイティブに活躍して欲しい。そうやって歴史や伝統文化を守るだけでなく、どう新しくしていくか? …もしかすると、加賀百万石の前田家が尾張の国からやってきたように、これから金沢に来る人が新しい金沢の力になっていくかもしれないね。」
早川さんのお話には、随所に金沢の魅力が織り込まれていて、歴史や文化から、町並み、景観、自然環境、行政、そして常連さんの通う居酒屋での話まで、地元の人でも及ばない程、様々な角度から町の姿を見られていることが伝わってきました。そして、「町の魅力を伝えるには、まずは町を知ることから」という言葉は、観光総合プロデューサーという立場でなくても、今後意識しておきたいと思いました。
*1:1989年版の牧瀬里穂演ずる彼女が、遠距離恋愛中の彼氏を新幹線の改札口の柱に隠れ待ち伏せるというCMが最も有名。山下達郎の「クリスマス・イブ」を一躍大ヒットさせるとともに、恋人同士でクリスマスを過ごすという文化が日本中に広まった。
*2:郷土玩具で縁起物の「加賀八幡起上り」をモチーフに、石川県の観光地や伝統工芸などの観光絵巻を身にまとったキャラクター。北陸新幹線金沢開業に向けて、県の広告塔として、石川県の魅力や北陸新幹線開業をPRするため活動している。
職業・役職 | 石川県観光総合プロデューサー 株式会社TYO専務取締役・CampKAZ代表 CMディレクター |
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関連URL | ほっと石川旅ねっと 石川県観光情報ホームページ TYO Group Camp KAZ |