【長野】旅人と地域の人をつなぐ「蔵の町」のゲストハウス ゲストハウス蔵
明治から昭和初期にかけて製糸業で栄えた長野県須坂市。当時の蔵を生かした商店や博物館、美術館などが建ち並ぶ「蔵の町」として知られています。
そんな須坂市唯一のゲストハウスが「ゲストハウス蔵」。その名の通り、蔵造りの古民家を改修したゲストハウスです。
地域の魅力を生かしたゲストハウスづくり
オーナーの山上万里奈さんは、かつて日本と中国で5年間日本語教師として勤務し、その後、外国人宿泊客が多い飛騨高山の小さな旅館で働いた経験からゲストハウス経営に興味をもちました。
そして、地元の須坂市の魅力を生かして国内外の旅人と地元の人が垣根なく個人同士の関係を築ける場所をつくりたいという思いで、この土地らしい物件探しをスタート。1年間かけて現在の建物にたどり着き、同時に「多文化共生」をコンセプトとする東京のゲストハウス「品川宿」で修業を積んで、2012年10月にオープンしました。
そんな「ゲストハウス蔵」の特徴のひとつが、決して有名観光地にある多忙な宿ではないからこそ積極的に地域に出向き、宿泊客と地元の人や文化をつなぐ取り組みをしていることです。
例えば、外国人バックパッカーは、そば打ち体験や着付け、温泉など「日本らしいことを体験したい」と思っていても、自分で何とかする力を身につけている人が多いため、なかなか要望を伝えてくることはないそう。しかし、ゲストハウス側から提案をしたほうが苦労なく、より深く地元の魅力を体験してもらえるため、共有スペースでの宿泊客との何気ない話からニーズを引き出せたときには、地元で対応できる人や場所を紹介しています。
特に須坂市には著名な陶芸家や盆栽家など尖った特技をもつ人が多いので、そんな人と宿泊客のニーズをつなぐことができるのはこの宿の魅力です。
地域や文化にまつわるイベントも開催
宿泊客だけでなく、地元住民や地元に住んでいる外国人向けにさまざまなイベントを定期的に開催しているのもこの宿の強みです。
山上さんは宿経営とともに須坂市近郊で暮らす外国人に向けて日本語レッスンも行っていることから、その生徒を招いて母国の料理を作ってもらい、参加者みんなで食べる企画もそのひとつ。
現在、須坂市には人口5万人のうち500人ほどの外国人が暮らしていますが、それぞれコミュニティーが分かれてしまっているそうです。そこで、この宿を基点に両者が知り合い「外国人にとっても住みよい町でありたい」というのが山上さんのイベントに寄せる思いです。
また、山上さんは宿泊客に地域の飲食店も積極的に紹介し、そこでも地元の人との出会いが生まれています。それによって宿泊客には「また帰ってきたい」という気持ちが生まれ、リピーターの増加につながっているのではないか、と山上さん。特に外国人宿泊客が再訪してきたときは、以前に交流があった地元の人に「あの人が帰ってきたよ」と声をかけているそうで、こうした細かな心配りが宿の人気につながっているのでしょう。
カフェや雑貨店も併設
さらに、ゲストハウスの入り口には山上さんの母の悦子さんが営むカフェ「La Vie Lente」があるほか、敷地奥にある元まゆ蔵には2015年に雑貨店「Sketch in hike」がオープンしました。これも、ゲストハウスに縁がない地元の人や母親世代の人が足を運びやすいきっかけづくりになっていて、結果的に口コミによる宿泊客の広がりにつながっているそうです。
これらの取り組みから「狙ったターゲット層が泊まりに来ている感触はある」と話す山上さん。さらに、小さな町だからこそ、須坂市で外国人向けのマップなどを制作する際には意見を求められるなど、旅人の窓口という存在が認められているのもうれしいと言います。
須坂をワーキングホリデーの入り口に
今後は「ワーキングホリデービザで日本を訪れる外国人と地元農家をつなぐ取り組みにも力を入れたい」というのが山上さんの願いです。
須坂市には若い新規就農者が多く、実際に自らもワーキングホリデーで海外に行った経験があったり、英語も話せたりと、外国人に対しても抵抗がないのだとか。そこで、収穫期で忙しい農家にも、日本語を覚えながら働きたい外国人にも、平日の稼働率を上げたいゲストハウスとしてもメリットがある取り組みです。
山上さんのアイデアと宿営業への真摯な取り組みが旅人も地元の人も惹きつけている「ゲストハウス蔵」。何気ない日常も旅も豊かに彩るエッセンスがぎゅっと詰まっています。
名称 | ゲストハウス蔵 |
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業種 | 宿泊業 |
URL | |
住所 | 長野県須坂市須坂39 |
TEL | 026-214-7945 |
営業時間 | チェックイン:16時〜22時、チェックアウト:〜11時 |
料金 | 男女別相部屋1泊1ベッド3,000円~ |