【長野】銘酒に並び立つ、長野の地酒あります ハトヤ酒店/長野市
神奈川から長野に移住して思っていたのが「なぜ長野の酒店は長野の地酒推しばかりなんだろう?」ということ。甘口で濃厚な山の日本酒は、煮物や味噌など長野の食文化には合うのだけれど、刺身などには勝ってしまい、いつも頭を悩ませていた。
そんなとき、たまたま海辺の町で常備酒にしていた佐賀県の「鍋島」を近くで扱うところはないかと探して出合ったのが、長野市のハトヤ酒店だ。
この5月に店舗をリニューアルしモダンな雰囲気となったが、その前は普通の町の酒屋さんだった。でもその棚には先の鍋島だけでなく、宮城の「墨廼江」や秋田の「一白水奈」や和歌山の「紀土」など、東京の銘酒居酒屋顔負けの蔵元の日本酒が揃っていたのだ。
「長野県の酒屋は『真澄』を置いてあることが多かったのですが、うちは開店が昭和27年と後発だったので特約店になれなかったんです。それで新潟の『久保田』など日本各地の地酒を置き始めたんです」とハトヤ三代目の井原 功さん。
少し説明が必要だが、日本酒販売には「特約店」という慣習がある。これは生産量が限られている日本酒を問屋を介さずに、蔵元から酒販店=特約店に直接販売するというもの。そうすることで、販売地域の調整や販売店での品質管理などにまで蔵元の目が行き届くようになり、お客さんにいい状態の酒が渡るのだ。
蔵に通い、酒造りの思いを知る。蔵元も店を訪れ、販売店の取り組みを知る。そうやってお互いの信頼関係を築いて、約30蔵の日本酒が店頭に並ぶ。「長いところでは5年近く通って、やっと特約店にしてもらった蔵もありました」
功さんは東京でサラリーマン生活ののちに、妻の道子さんとともに20年前にUターン。きき酒師の資格を持つ2人は、リニューアルを機に新しいことにも取り組むという。
「(ワインなども飲まれる)30代くらいのお客様が気軽に来てもらえるようにしたくて。2階で勉強会を開こうと思っているんです。蔵元にも会ってもらったり、香りや味わいなどの表現ができるようになると、より日本酒を楽しめると思うんです」と道子さん。
いわゆる「長野の地酒推し」ではないものの、ハトヤ酒店でももちろん長野の地酒は扱っている。ここ数年で品質の高い酒が多くなったといい、最近は木曽の「十六代九郎右衛門」を扱い始めた。夫婦2人で造る小さな酒蔵だ。
「ただ長野で造られている地酒、というのではなく、酒造りへの考えがしっかりとある、日本の銘酒として長野の蔵元のお酒も紹介していきたいと思っています」