【長野】ゲストハウスLAMP 堀田 樹さん 移住したい県NO.1へ“左遷”された男
「長野、左遷」で真っ先に検索される男。
それが今回の堀田 樹さん。長野県北部、野尻湖の湖畔にあるゲストハウス「LAMP」の支配人です。
「移住したい県NO.1」なのに “左遷”???
その経緯はご本人がWEB制作会社「LIG」のブログに書かれているので、そちらをお読みいただくとして、期せずして長野にやって
きてからのお話を紹介します。
2014年6月、半年勤めたWEB制作会社「LIG」の社長の実家でもある野尻湖のペンション&サンデープラニング・アウトドアスクールに突然“左遷”を命じられた堀田さん。なのに役職は「支配人」。飲食業も宿泊業もまったくの未経験だった彼が長野に来たときはこんな状況でした。
1)とりあえず、古いペンション→ゲストハウスへのリノベーションは終了
2)夏~秋はサンデープラニング・アウトドアスクールの常連客で成り立ってるが、冬は閑古鳥
3)万年赤字で潰れるかどうかという崖っぷち
4)スタッフは移住十数年のベテラン、自分がいちばん若手で素人
現実的な問題として、(2)と(3)を何とかしなければなりませんでした。まずは宿泊客を増やさないといけない。そこで堀田さんがやったのは、旅行情報誌や旅行予約サイトの徹底研究。
「エリア内では1泊3,000円という宿はほかにもあるから、価格で競争してもしょうがない。だから圧倒的に見栄えがよくなるように、宿泊予約サイトの写真を見直したりしました。そうしたら、最初の冬から周辺のスキー場に来るお客さんがうちに泊まるようになったんです。ゲレンデ隣接の宿は高いけど、うちはどのスキー場も車で15分で行ける。エリアの拠点になる場所やったんですよ」
なんと、初年度で(2)と(3)の課題はクリアできてしまったのです。
「ただ新規のお客さんに来てもらうハードルの高さで言うと、飲食→宿泊→アクティビティーなんですよ。だからシェフを入れてレストランを始めました。ごはんを食べて、泊まって、アクティビティーをする。その流れは2年くらい経ってようやくできてきました」
こう書くと、軽やかな移住サクセスストーリーのようですが、(4)の問題が残っていました。
「運営状況はやばかったけど上手く行くって気持ちはあった」と思っていた堀田さんですが、ワンマンプレイで上手く行っても、現地で昔から働いているスタッフの気持ちが離れしまうと、事業が立ち行かなくなる。そうなってしまうと、「これまでがんばってきた現地スタッフの雇用を維持する」という目標が達成できなくなるのです。
「夏はお客さんも入っているし、財務状況は誰も見ていないから現場に危機感はなかった。(その状況の厳しさは)ひたすら朝7時から夜中1時まで働いていた僕の動き見るだけでもわかったと思う。お客さんを楽しませる方法はスタッフはわかっていた。でも新しいお客さんを呼ぶ方法は知らなかった。Facebookの運用もそうだし、どうやったら新しいお客さんの目につくかを、スタッフにも声をかけて共有したんです」
周囲を巻き込んでいくのが上手な堀田さん。その流れは自社スタッフだけでなく外部にも及んでいます。
例えば、店のチラシは長野県小布施町を元気にするフリーペーパー『あいうえおぶせ』を発行している「くのちゃん」こと久野紗都美さんが制作。店で使うコーヒー豆は長野県信濃町にある「Foret coffee」の松澤岳久さんに依頼。偶然知り合ったフィーリングの合う地元のひとたちや、泊まりに来たお客さんにもLAMPに関わってもらう機会を作ることで、「LAMP=居心地の良い場所」という感覚が波紋のように広がり、共有されているのです。
「こないだ3周年のイベントをやったんですが、お客さんへの挨拶で『スタッフの僕らも今日は楽しみたいので、BBQの肉は自分で焼いてくださーい』って言ったんですよ」
現在は信濃町の観光案内冊子の編集にボランティアで関わったり、LAMPのお客さんが増えることで、結果的に地域貢献を果たした堀田さん。その手腕を買われて、大分県豊後大野市と長崎県壱岐島にLAMPの姉妹店となるゲストハウスを新規オープンすることとなり、その立ち上げに携わることになりました。そのため、当面は各地を行ったり来たりすることに。これまではLAMPに行けばいつでも見られた堀田さんの顔に会えなくて、さみしいというひともいるかも。
「でも、むしろ僕がいなくなることで、生まれる変化もあると思うんですよ。月7日ちゃんと休めて、年2回の長期休暇が取れて、大自然の中で遊べる。田舎暮らしだけど都会のセンスも発揮できて生き生きしてる。自分の好きなことができるからLAMPで働く。そんなライフスタイルを作りたいんです」