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志村直愛さんの「山形でしたい5つのこと」

建築・歴史の視点で山形市を見てみよう

2017.09.15

志村直愛さんの「山形でしたい5つのこと」

専門家のみなさんが独自の視点で山形市を大解剖!

「山形でしたい5つのこと」として、オリジナルのToDoリストを作成していただくシリーズです。

第一回におたずねしたのは、東北芸術工科大学・建築・環境デザイン学科の志村直愛教授。「山形市は歴史のお宝だらけ」とうかがった前編に続き、後編は、志村さんがおすすめする「山形でしたい5つのこと」をご紹介します。

建築・歴史を切り口とした山形市の楽しみ方とは?

観光ブックには載らない、ニッチでディープな山形市の素顔。まちの魅力の再発見に、個性派な旅のプランにご活用ください!

 
1.「陣場」で古き日本にタイムスリップ

志村直愛さんの「山形でしたい5つのこと」
山形市陣場エリア。まるで映画のセットのような、堂々とした門構えのお屋敷が並ぶ

志村さん:山形市陣場に古い街道が残っていて、明治初期から昭和初期にかけて建てられた豪農や大地主の立派な家、土塀や蔵が並んでいます。これは奇跡的に残った風景ですよ。

地図で俯瞰的にみるとわかりやすいですが、ここは土地の使い方が特徴的です。短冊状に土地を切って、縦方向に入り口、母屋、蔵が建てられています。この通りにある一件「田中家」が登録文化財になりました。

志村直愛さんの「山形でしたい5つのこと」
土塀と立派な松の木が印象的

江戸時代には、酒田まで抜ける主要街道として交通量が多かったそうです。当時、通りの裏は一面が田んぼでしたが、いまは住宅地になっています。前田町にもひとつ古い街道があって、陣場のような古き日本の風景が見られますよ。

 
2. 山形途中下車の旅

志村直愛さんの「山形でしたい5つのこと」

車社会の山形ですが、鉄道に注目してみてはいかがでしょう。たとえば「山形途中下車の旅」として、駅周辺を2時間ほど散策します。ぼくはかつて東京の大江戸線、山手線、銀座線、丸ノ内線、日比谷線の全駅で、トータル120駅ほど町歩きツアーを企画してきましたが、山形はきっとやりがいがあると思うのです。

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鳥海月山両所宮

北山形駅あたりはディープでしょうね。鳥海月山両所宮や銅町の鉄職人を訪ねたり。ほかにも高瀬駅で紅花農家を巡ったり、山寺駅で立石寺の周辺を散策したり。駅ごとに違った地域の特色が浮かび上がってくるので楽しいですよ。山形の全駅を制覇してみたいです。

 
3. 蔵から商業のまちの面影を感じる

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山形市諏訪町の〈ギャラリー絵遊 / 蔵ダイマス〉

蔵は山形市のシンボリックな存在。少し気にしながらまちを歩いてみてください。そこらじゅう蔵だらけです。

山形市は城主の入れ替わりが激しく、政治的には不安定な町でした。そのぶん商人たちが有力で、城下町には紅花などで富を築いた商人がたくさんいました。財力があるので蔵に投資ができ、さらに天災も少なく、空襲からも免れ、蔵がいまでもいい状態で残っています。

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十日町の〈山形まるごと館 紅の蔵〉

とはいえ、近年の道路拡張や再開発で蔵の数はだいぶ減っています。十日町の〈紅の蔵〉や〈蔵オビハチ〉など、商業施設や飲食店での活用例もあるので、山形市民のみなさんや観光客が蔵見物を楽しむことで、蔵の価値がもっとあがるといいですね。

 
4. 最上川で江戸時代の経済ルートに想いを馳せる

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楯山公園から、最上川の大胆なうねりを見る

話を県全域に広げますが、最上川はぜひ一度見ていただきたいですね。県内で完結する流域面積が日本最大の川で、大江町の楯山公園(日本一公園)からの雄大な景色が感動的です。

山形は経済ルートの歴史がおもしろい。最上川はかつて舟運の交通路として、山形に富をもたらした経済の大動脈でした。江戸時代までは酒田が一番京都に近く、情報やモノが入るのも酒田が一番早くて、大石田を通り、大江町、朝日町、長井市を通って内陸の米沢や最上川に沿っていない山形市は一番奥でした。

ところが、明治20年代に鉄道が敷かれると、まさかの大逆転。東京に一番近いのが米沢で、上山、山形、新庄を通って、一番奥が酒田になりました。近代の前後で人やモノが動く方向が真逆になった、極めて珍しい事例です。

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いつか上流から河口まで、舟でというわけにはいかないでしょうから、ボートやカヌーで最上川を通しで下ってみたいんですよ。最上川から見る山形はどんなふうに見えるのでしょう。江戸時代の船頭さんたちが日々見てきた風景にいま触れることで、なにか気づきがあるんじゃないかと思うんです。

 
5. 山寺に隠された皇室の歴史に触れる

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山寺行啓記念殿。2009年に調査依頼を受けた志村さん。歴代の仕事のなかで指折りのおもしろさだったと話す

山寺にある「行啓記念殿」ってご存知ですか? 山寺の五大堂と奥之院のちょうど間に建っている隠れスポットです。

明治41年、大正天皇が皇太子の時代に東北を訪れて、山寺に立ち寄られました。その際、山上で休憩をとるために建てられたのがこの「山寺行啓記念殿」。皇室ならではの、京都御所を思わせる建築デザインです。

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山寺行啓記念殿からの眺め。装飾や格式を重視した歴史的建造物として、山形市指定文化財となった

実際の滞在は2時間だったそうですが、皇太子が使われた椅子や家具など、100年以上前の空間がそのまま残されています。石の柵は山寺地区の特産品だった「おまた石」で造られて、鉄の扉は大正天皇の象徴「桜」のモチーフが施された、格式的な装飾です。

普段は閉まっていますが、年に一度公開されて(※)室内を見ることができます。

(※)2017年9月17〜18日に一般公開予定。山寺行啓に関する資料を紹介する展示会が9月7日〜10月3日まで山寺芭蕉記念館で開かれる。

 
おまけ:自転車で山形市内を散策してみよう

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志村さんの愛車。安全のためライトを13箇所に設置して、夜はピカピカ光る“デコ自転車”と化す

中心市街地周辺の建築物を見てまわるなら、自転車が最適ですよ! 車では見落としてしまうものも自転車なら速度的に見つけやすいし、駐車が楽で効率がいい。

あ、この自転車ですか? これは山形の通勤用に買いました。毎週山形駅から本校まで、自転車で通っているんです。ぼくは建築・環境デザイン学科なのでね、移動手段もエコにね!(笑)

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ライト、コンパス、ベル、ミラーに、サイクルコンピューターによる距離計、速度計、寒暖計、湿度計と、安全や環境対応に万全を期している。交差点では手信号をしているとの目撃談あり

雨の日も、雪の日もカッパを着て自転車です。冬にはドイツから輸入したスパイクタイヤに履き替えるので、氷の上でもキュッと止まりますよ。

山形では車の運転が荒いことがあるので、夜にはライトをつけて、注意して走行してくださいね。

 
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