【長野】街でも山を感じる小さな宿 小とりの宿/長野市
「善光寺さんの近く、街の山小屋でありたいと、一日一組の小さな宿を始めました」
そんな文言をフライヤーに書いたのは、宿主の福田舞子さん。彼女は大阪出身だが、山好きが高じて、20代後半から夏は北アルプスの山小屋、冬は白馬のペンションで働き、山の近くで暮らしていた。2015年に自分の宿を長野市善光寺の北参道近くに開いた。
山の麓ではなく長野市という街にしたのは、友人が長野市に住んでいた縁で通っていたのと、善光寺界隈には小さな店が多くあり、同世代の友人もできたからというのがその理由。
住宅街を歩き看板を目印に路地を入ると、梅の木とアジサイが迎えてくれる。宿は小さな部屋が2室と福田さんが料理を作る厨房、そして庭のある一軒家。朽ち果てかけていたこの家を、近所に住む友人たちの力を借りて2年間かけて今の姿にしたそうだ。部屋のあちこちに小鳥がいたり、女性オーナーらしい設えも。一人旅で利用する女性客も多いというのもよくわかる。
近所に住む福田さんが朝夕食を作りに来るとき以外は、1日1組限定だから宿はゲストのみ。懐かしさのある古い一軒家というのもあってか、実家にいるようにくつろげる。朝食の時間も、例えば善光寺のお朝事を終えてから、といったふうに融通を聞いてもらえることも。また長野市は首都圏から北信や北アルプスの登山をする際の拠点となる場所でもあり、山行の前泊後泊で立ち寄るひとも多いそう。まさに街の山小屋。
そして宿泊だけではなく、火~木曜はランチも提供している。「できれば予約をしていただけるとうれしいです」と福田さん。ごはんを土鍋で提供するので、炊き上がるまでお待たせしてしまうからだ。前菜の盛り合わせにメイン、土鍋ごはんとボリュームも満点だが、地元の素材を使って、ハーブなどを多用しながらもシンプルな創作料理がいただける。取材した日のメインは、豚肉と桃とリンゴのシチュー。調味料は塩だけだが、果物の甘みとハーブ使いでしっかり深みのある味に。
ゲストハウスも増えてきたが、長野市内での宿泊はビジネスホテルか善光寺の宿坊と選択肢が少ないのが悩みどころ。こういったプライベート感ある小さな宿でごはんも美味しいとあれば、この夏は予約ですベて埋まったというのも納得。