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「生活」至上主義。畑も船も楽しむ、離島のアーティスト夫妻。

usaginingen/豊島

とにかく自分たちの人生を楽しんでいる。幼子以外に、これほど日々、一瞬一瞬に充足している人がいるとは。嫉妬ではなく、すがすがしく純粋に、「あ、いいな」と感じてしまう。 それが、香川県の離島、豊島で暮らすusaginingen(ウサギニンゲン)こと平井伸一さん、絵美さん夫妻。島で暮らし始めて1年半になるが、すっかりこの土地での生活を自分たちのものへとカスタマイズしている。

横浜育ちの平井絵美さん(左)と、香川育ちの伸一さん(右)。二人は絵美さんが学生の頃、東京で出会った。

usaginingenは、映像と音楽が織り成すライブパフォーマンスを行うユニットだ。小屋を改装した豊島ウサギニンゲン劇場を、週に3日開館し、島内外の観客を魅了している。

豊島に構える劇場。すべて自分たちの手でデザインし、つくり込んでいった。

豊島以前は、東京、そしてドイツのベルリンで暮らしていた。伸一さんは放射線技師として病院勤め、絵美さんは広告デザインを生業に、東京ライフを謳歌していた。デザイナーとして初年度にNYで賞を取るなど活躍。しかし絵美さんをそばで見ていた伸一さんは、彼女のさらなる可能性を誰よりも信じていた。絵美さんが「いつかしたい」と言っていた海外移住を、「スキルアップのために」と、後押しした。

「アーティスト」への転身は、ドイツで生きていく上で、唯一残された道だった。ドイツ移住当初、ドイツ語が話せなかったので、言葉を使う仕事はできない。技術を培ってきたデザイナーの仕事も、言葉でのやり取りが必要となる。たまたまできたのが、伸一さんが趣味でやっていた音楽と、絵美さんがデザインした映像という組み合わせだった。

アナログとデジタルが融合した唯一無二の世界観。絵美さんはオリジナルの機械で映像を映し出し、伸一さんが音を奏でる。

usaginingenのパフォーマンスで、最も目に留まるのは、絵美さんが操る映写機だ。ゆったりと足踏みミシンのように漕ぐと、可愛いけれどもシュールでちょっと毒のある映像が、スクリーンに映し出され、伸一さんが奏でる音と重なっていく。映写機の車輪部分と、机の天板のような位置にあるガラスのレイヤーの上にアナログで絵を配置。最上部に付けたカメラがそれらを捉え、唯一無二の世界観をつくり出している。

機械の大きさに対する、座る位置のバランスなどを「可愛さ重視」でデザイン。構造は後から考えた。

「こんな機械があったら、私でも映像が出来そう」というひらめきを、伸一さんが設計へと落としていった。とは言え、大工経験はないので、日曜大工が趣味の父親に相談。ドイツでは仕事が減った分、東京時代と打って変わって時間だけは有り余っていたので、納得のいくものをつくり上げていった。ドイツから時々日本に帰ったり、その他の地域でパフォーマンスを行うことも想定して、すべてをスーツケースに収まるように設計。ドイツでは、身の回りのものを修繕したり、部屋を好きなようにカスタマイズする文化がある。伸一さんも大工スキルを少しずつ身につけていった。

このスーツケースにパフォーマンスのためのアイテムを収納し、世界中を旅した。

東京が大好きで、ドイツでスキルアップをしたら東京に戻るつもりだった。しかし自分たちの生活をつくること、生きることへの価値観が根底から変わっていった。ドイツでの6年間の生活を経て、そろそろ日本へ戻ろうと思った時、どこで暮らすのが面白いか実際に旅をして探し回った。そこで巡り合ったのが豊島だった。

改装した自宅から、自分たちの畑を臨む。「畝つくったよー」と嬉しそう。

土地に歓迎されるように、家が決まり、劇場をつくることが決まり、軽トラも船も手に入れた。島にスーパーやホームセンターは無いので、買い出しは島外へ。自分の船があると、潮の状況さえ把握すれば、フェリーの時刻に縛られずに、いつでも動けるのだ。便利以上にワクワクがある。「マイ船生活」に必要なのは、たくさんのお金やテクニックじゃない。コミュニケーション力に尽きる。船舶免許や船、停泊させる場所の取得には、島の海の男たちからの信頼が欠かせない。相手へのリスペクトは持ちつつも、迎合はしないなど、自然体の伸一さんのスタンスがそれを可能にしている。

島の方のサポートを受けて中古で購入した船に、usaginingenのロゴを施した。

ドイツと同様に、豊島には仕事のあてはまったくなかった。それでも彼らは、現在、「生活」を謳歌している。畑をし、船に乗り、美味しいごはんを食べるという日々の豊かな「生活」。あくせく働く日本から離れ、「生活」を大切にするベルリンで変わった価値観だ。ライブパフォーマンスを行うことで、必要な収入も得ている。大工不足の島で、大工としても重宝されている。でも決して働き過ぎない。「生活」ができなくなるくらいなら、それ以上の「仕事」をしないという逆説的なスタンスだ。絶対的に「生活」をしたくて、生きている。地域の活動にも、自分の「生活」を良くするために関わる。

「面白い奴が周りにいて欲しい。そのためには魅力的な場所じゃないと。地域に関わらないという選択肢はないでしょ。どっちが先かわかんないけど、楽しい生活のために、地域のことは切り離されない」

過疎高齢化した地域へと移住すると、つい、隷属的な思考による「地域社会のために」という発想に陥りがちだ。あくまでも自分のためだ。自分のためだからこそ、地域に依存的な期待もしないし、落胆もしない。だけど感謝して、より良い空間をシェアできるように寄与していく。言葉の通じない異国の地でも、日本の離島でも、どこにいても、自分たちの周辺を楽しくカスタマイズしていけるのだと、usaginingenは教えてくれる。

船に乗って、隣の小豆島まで買い物。伸一さんが操縦。絵美さんも「副船長さん」として、停泊させる際に役割を楽しんでいた。
名称

豊島ウサギニンゲン劇場

業種

劇場

URL

http://usaginingen.com/

住所

香川県小豆郡土庄町 豊島唐櫃1285

TEL

0879-62-9141

営業時間

開演時間:土・日・月11:00~/13:00〜(詳しくは公演情報をごらんください)

アクセス

港のシャトルバスより唐櫃清水前下車すぐ(運行時間はご確認ください

料金

1公演 1,000円(当日受付でお支払いください)

備考

島外公演や冬季休暇の為に開演しない場合がありますので、スケジュールをご確認の上ご来場ください。

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