茅葺屋根を守り育てる人
くさかんむり/相良育弥
神戸と言えば小さな都会というイメージを持つ人が多いと思うのだが、実は六甲山を隔てた北側には数多くの茅葺き古民家が残っている。そんな茅葺き古民家の保存を目的に活動している茅葺き職人チーム・「くさかんむり」の代表の相良さんを紹介したい。
くさかんむりは、茅葺きの職人とその職人のサポート役で構成されたチーム。神戸市北区の古民家を中心に茅葺き屋根の補修の仕事を生業としている。
相良さんに茅葺き職人になったきっかけを聞いてみた。
「田舎育ちで、若い頃は都会的なものに憧れてクラブでDJしてたんですよね。
ところが急に心境の変化があって、山で暮らしたくなったのです。当時宮沢賢治の本を読み込んでいて、食べるものぐらい自分でつくって生活してみよう、米とか野菜とかをつくりながら百姓としてクリエイティブに生活できないかと思ったのです。ただ、百姓になるということはそんなに簡単なことではなかった。田んぼを借りたのですが、減反政策ってのがあって、つくっても売れない(=生活できない)現実があったのです。そこで試行思考錯誤している内に、茅葺きの師匠に出会い、今の仕事をするようになったのです。」
相良さんが茅葺き職人になってから9年。今では年間で約10棟の古民家の屋根を修復しているそうだ。
六甲山の北側・神戸市北区は、畑や田んぼに囲まれた田舎らしい生活が出来る環境があるにもかかわらず、街へのアクセス性もよい。車なら20分〜30分程度で神戸の中心部まで着いてしまう。通勤も可能だし、出張にも行きやすい。田舎暮らしをしたいが、都会へのアクセスも求める人にとって絶好の立地なのではないかと言う。現代人にとって都会を隔絶し、いわゆる「ど田舎」で生活するのは難しいと思う。相良さんは神戸市北区を、都会で育った人でも「半田舎」暮らしをしながら、現代的な暮らしと隔絶せずに暮らしていける珍しい場所なのではないかと見いだしている。
新しいチャレンジも行っている。本年で4回目になる「縄文まつり」のステージは「くさかんむり」チームの作品だ。淡路島の廃校を舞台に行われるこのイベントは、高木正勝さんやUAなどが参加したことでも知られる。まつりの企画から係わり、中心的な役割を担っている。
将来の夢について聞いてみた。
「若い人に興味を持ってもらって茅葺き文化を継承していきたいですね。オランダでは今の日本と同様、新築住宅に茅葺き屋根を使用を規制する法律ができ、茅葺き文化が滅びかけた時代が一時的にありました。でも1990年頃になって茅葺き屋根の利用が再度合法化されたのです。その法改正によって茅葺き屋根文化が復活し、写真のような形状の茅葺き屋根などが生まれ始めているのです。いつの日か、日本でも新築住宅に茅葺き屋根が使われるような、そんな文化が根付くための活動をしていきたいと思っています。茅葺き屋根で日本の屋根のあり方を変えたいですね。」
「くさかんむり」では、誰でも参加できる茅葺きのワークショップも数々行っています。僕も先日そのひとつに参加してきたのですが、茅葺き屋根の風景を残す事の意義について再確認できました。
ぜひ一度ワークショップを体感して、茅葺き屋根を残すことの大切さ、そして活動への支援を考えるきっかけにして頂けたらと思います。ワークショップの案内などはHPで随時紹介されています。
屋号 | くさかんむり/相良育弥 |
---|---|
URL |