reallocal » 田舎暮らしは“破壊”から始まった 福岡
田舎暮らしは“破壊”から始まった

古家を「開かれた家」に 天野百恵さん

里山の古民家を借りて、移住希望者など多くの人が集う「開かれた家」にしたいと奮闘中の女性がいる。天野百恵(あまのもえ)さん、7歳と18ヵ月の子どもを持つシングルマザーだ。1112日までクラウドファンディングで家の改修資金を募っている。
(目標額117%達成、64名の支援を得て終了しました)

糸島市南部の長糸地区は、脊振山系を水源とする豊かな水に恵まれ、古くから農業が盛んな地域。その中心部にほど近い川沿いの集落の中に、天野さん一家が暮らす家がある。大正13年築。長屋門の奥に母屋、納屋、倉庫などがあり、庭木越しにのどかな田園風景が広がっている。 

Exif_JPEG_PICTURE
背振山系に連なる長糸地区の里山と田畑。川が流れ、懐かしさを感じる風景
Exif_JPEG_PICTURE
築93年の古民家に天野さんは「くるくるハイツ」と命名した。

「入居前にまずやったのが台所の破壊(笑)」だという。リフォームされていたのがどうしてもなじめなかったらしい。大家さんの承諾を得て、床、壁の建材をすべてはがし、床は杉の無垢板に変えた。これにはSNSを通じて協力者を募集。キッチンは皆で調理がしやすいよう移動してセンターキッチンへ。この「床張りワークショップ」が天野さんの“家を開く”第一歩になった。

長女の唯ちゃんを背負い、長男の渉くんと壁を破壊する天野さん
長女の唯ちゃんを背負い、長男の渉くんと壁を破壊する天野さん

「家を開く」その(1)田舎暮らしや移住希望者の窓口に

天野さんは福岡市出身のアーティスト。大学で油彩画を専攻し、卒業後は京都で作家活動を行なっていた。結婚、出産を経て、地元九州で暮らそうと家探しを始めたのは2013年のこと。すでに京都の自宅の一部を開放して様々な催しを開いていたので、九州でもそれをさらに進めたいと考えた。古民家にこだわったわけではないが、家や敷地の規模など条件に合う家はなかなか見つからず、糸島だけでも何度も足を運び、今の家に出会ったのは昨年11月だった。

「アパートに仮住まいしながらスタンバイしている人もいると聞いて、これは戦いだな(笑)と。参戦する資金力もなく悶々としているところへ、家なんていっぱいありますよという人に出会って、とても嬉しかった」

糸島の空き家情報を調べて教えてくれたのは、地元で自然農を営む大石仙一さん。おかげで未公開の空き家を何軒も見ることができ、さらに大石さんのすすめで地域コーディネーター(*)とともに所有者に会い、電話でもやり取りを重ねた。昨年11月に交渉がまとまり、年が開けて3月、ようやく移住が叶った。こうした経験から、移住相談や家探しの受け皿の必要性を痛感したという。

「あきらめない、前向きな気持ちが大切だなと。リゾート感覚と田舎暮らしは違う。憧れと現実をどう近づけていくか。また賃貸するという文化があまりない地域なので、あらかじめ信頼関係を築いて『あなたならうちに入って来ても大丈夫』と言ってもらえるような、借りる人もここなら住みたいといえるような繋がりがあって引っ越しできるのが理想。行政や民間の事業では漏れがちな部分もあると思うので、そこを私ができればいいなと思います」

(*)地域コーディネーター:糸島市が空き家の定住促進の一環として設置。現在、長糸と桜井の2地区で空き家調査などに当たっている。

 

田舎で暮らす時にどんな気持ちの切り替えが必要か、私の体験から伝えたいと天野さん
田舎で暮らそうとする時にどんな気持ちの切り替えが必要か、私の体験から伝えたいという天野さん

「家を開く」その(2)暮らしそのものを自分の表現として

学芸員の資格を持つ天野さんにとって子供向けのアート、特にアート鑑賞についてのワークショプはぜひ取り組みたいことの一つ。

「ものを作ることは学校の図工などでやる機会はあるけれど、アートの見方についてはあまり知る機会がない。子どもたちと一緒に作品を見てディスカッションするなど、アート観賞の楽しさを伝える活動をしていきたい。美意識や文化の素晴らしさが本当は生活の中にいっぱい潜んでいる。そういうことを家づくりの段階から感じられたらいいな。以前は仕事のための活動と作家活動が別だったのが、今は暮らし全体を自分の表現としていきたいと思っています」

 

6月に開いた友人主催のフリーマーケット「ぼちぼち市」。予想を超える多くの参加者で賑わった
6月に開いた友人主催のフリーマーケット「ぼちぼち市」。予想を超える多くの参加者で賑わった

フリーマーケットでは駐車場確保が課題として浮上。今後のイベント時には九州大学の学生団体が取り組むトゥクトゥク(三輪自動車)を使った観光交通インフラと連携して、会場とは別に駐車場を設け、来場者を送迎する構想も進めている。

「トゥクトゥクは糸島の農村にきっと似合うはず。訪れる人が増えたら、外にバイオトイレなんか作りたいな」と天野さん。また裏山に水が湧いており、かつて生活に使っていたと思われる跡が敷地内に残っているという。「もう一度水のルートを確認して生かしたい。やりたいことはあり過ぎるくらいあります」

入居前の3ヵ月は膨大な量の残置物の撤去に追われた天野さん。何しろ築93年。2階の“開かずの間”には大正期から現代までの種々雑多なものがびっしり詰まっていた。「空間がもったいないから空っぽにしました」。台所の破壊といい、まったくめげていない。ガッツのある人である。

 

拠点づくりを始めて来客の多い日々。子どもたちの成長も楽しみ
拠点づくりを始めて来客の多い日々。子どもたちの成長も楽しみ

ともあれ、改修工事はまだ始まったばかり。関心のある人は早いうちに訪ねてみてほしい。古家に新しい息を吹きかける作業の大変さや楽しさが、きっと感じ取れると思います。

 

屋号

くるくるハイツ

URL

http://www.moeama.net/

住所

福岡県糸島市川付284

備考

お問い合わせ=contact@moeama.net

問い合わせフォーム

お名前(必須)
メールアドレス(必須)
内容・自己紹介など(必須)
画像認証
captcha
(画像内の文字列を入力してください)

※入力された情報を保護する為、SSL暗号化通信を採用しています。

map