原高史さんの「山形でしたい5つのこと」
漬物・神社・バスケ・温泉・イタリアン
専門家のみなさんが独自の視点で山形市を大解剖。「山形でしたい5つのこと」として、オリジナルのToDoリストを作成していただくシリーズです。
三回目におたずねしたのは、現代美術家で東北芸術工科大学デザイン工学部グラフィックデザイン学科教授の原高史さん。
「山形はデザインの化学反応が起きるオーガニックな場所」とうかがった前回に続き、今回は原さんが山形で出会った魅力的な体験を「山形でしたい5つのこと」としてご紹介します。
1. 昭和の日本的体験「蔵王の共同浴場」
原さん:最初にここを訪れたときは衝撃を受けました。箱に200円の寄付金を入れるスタイルやお湯も素晴らしいけど、なによりあの閉塞感がいい。昭和の四畳半を連想させる空間で、とても日本的な場所だと思います。ドイツから来た友人を連れて行ったらすごく喜んでいましたね。
蔵王には共同浴場が3つあります。どれも露天がなく内風呂のみで、浴槽が小さい。脱衣場も狭い。全体的にパーソナルスペースがすごく狭いので、普通の温泉以上にお互いマナーを意識して気遣い合ったり、会話が生まれたりと、すべてが共同浴場ならではの体験ですね。
2. ハムとワインの多幸感「イル コテキーノ」
七日町にあるイタリアン食堂で、東京から来るお客さんの多くをこのお店にお連れします。自家製ハムとワインとの組み合わせが最高で、ワインマニアの人たちにもとても喜んでもらえます。ハムは30種類くらいあって、盛り合わせでいろんな種類を食べ比べるのが楽しいです。ドイツで生活していたのでサラミやハムが一番好きですね。
ここは野菜もおいしいですよ。サラダやバーニャカウダーなど、すべてが色鮮やかで新鮮。聞くところによると、野菜は店主さんの実家の畑で育てた旬のものを選んでいるそうで、そのおいしさに納得しました。行くたびに幸せな気持ちになるお店です。
【イル コテキーノ】
山形市七日町4丁目1−32
3. 熱心な研究家「梅津たまさんのお漬物」
養蚕のプロジェクトで、山形市から車で30分ほどの白鷹町へ定期的に訪れています。そのときに必ず立ち寄るのが〈白鷹産直市場 どりいむ農園直売所〉。そこで販売している梅津たまさんの味噌、梅干し、豆、季節の漬物などがすごくおいしい。一度食べたらファンになってしまいました。
どんな人がつくっているのか興味がわいて、梅津さんに会いに行ってみました。すると、梅津さんはいまでも料理教室に行って勉強したり、実験を重ねて、新しいものをつくっていると言うんです。“お料理が得意なおばあちゃん”ではなくて、“研究家”なんですね。産直の商品ひとつ見ても人のおもしろさが浮かび上がってきます。今後、もっと「人」に注目してデザインを手がけていきたいです。
【白鷹産直市場 どりいむ農園直売所】
山形県西置賜郡白鷹町畔藤9053−30
4. 山形の信仰のあり方「養蚕神社」
養蚕のプロジェクトを通じて出会ったのが、龍澤寺にある「養蚕神社」。住職さんによると、江戸時代に上杉鷹山が自給自足のために養蚕事業を推進して、かつては山形県内に養蚕農家が5万件以上あったとのこと。ここでは蚕の供養や、産業の成功が祈られ、当時はご祈祷会やお祭りが盛んに行われていたそうです。山形は生活と信仰の結びつきが強く、蚕を崇める養蚕神社は山形の信仰文化の表れかもしれません。
屋根にある彫刻もまた見事ですよ。山形の名彫刻家・新海竹太郎の父を含む3名の彫師が3年の月日を費やした貴重なものだそうです。
【龍澤寺】
山形県西置賜郡白鷹町十王2023
5. 冬季のスポーツ観戦「山形ワイヴァンズ」
日本プロバスケットボールのBリーグができて、全国的にバスケットが注目され始めているようです。
やはり生のスポーツ観戦は盛り上がりますね。室内スポーツなので、雪の季節でも快適に楽しめますし、シーズン中は定期的に試合を見に行くファンが増えているようです。