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「山形のツーリズムは飛躍します」

観光・旅行・企画構想 本吉裕之さん

「山形のツーリズムは飛躍します」
東北芸術工科大学 デザイン工学部 企画構想学科 准教授/入試部長 本吉裕之さん

専門家のみなさんに山形の楽しみかたをうかがうシリーズ。第三弾のゲストは、東北芸術工科大学デザイン工学部・企画構想学科准教授の本吉裕之さんです。

本吉さんは、JTB、一休.comでの営業や企画を経て、現在は訪日外国人観光客向けのサービスを手がけています。

20年以上にわたりツーリズムの最前線を走り続ける本吉さんに、山形のツーリズムの魅力とその未来についてうかがいました。

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「おいしい山形空港フェスティバル2017」での本吉さんと学生たち。企画構想学科では、企業の課題分析、商品開発やイベント開催を通してプロジェクトマネジメントや発想を鍛える授業を行なっているという

──本日はよろしくお願いします。まず、本吉さんがツーリズム業界に興味を持たれたきっかけを教えてください

大学3年の頃、人生初の海外旅行を計画しました。せっかくだし、まだまわりの友達が行ったことのない土地にしようと、行き先をベトナムに決めました。

『地球の歩き方』に載っていた新橋の小さな旅行会社へ航空券を買いに行きましたら、その値段が往復で15万。しかも当時は入国ビザが必要で、その取得費用も追加1万5千円。当時のアルバイト3ヶ月分以上が一気に吹っ飛ぶ大金でした。

人生初の海外旅行で、未知の国への航空券。ドキドキしながらチケットを受け取って席を立ったら、旅行会社の人に「本吉さん、行ってらっしゃい!」と大きな声で送り出されたんです。そのときの胸の高鳴りは今でも忘れられません。「行ってらっしゃい」という言葉の清々しさと、こういう素敵な仕事があるのかと思いました。

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「企画力」を鍛える企画構想学科。本吉さんは高校生の頃から出版社でバイトをして雑誌の企画編集に関わっていたそう。ちなみに右から2人目が高校2年時の本吉さん。

当時は高校の教師を目指していて、教員免許も取得したのですが、JTBへの入社を選び、そこから約5年程、法人営業や団体旅行の企画を担当していました。

自分が担当して企画したツアーは、必ず出発場所へ出向いて「行ってらっしゃいませ!」と、お客様のお見送りをすることをポリシーにやってきましたので、毎週土曜日の朝と日曜日の夜は(「おかえりなさいませ!」を言うために)、羽田空港に自主的に行っていました。

その後は一休.comの営業企画として、10年程、高級ホテル・旅館を訪問する日々でした。毎週飛行機に乗り、極寒の北海道・知床にいた翌日に真夏のような暑さの沖縄・西表島にいたり、文字通り全国を回っていましたね。

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山寺(正式名称は「立石寺」)

──山形市といえば山寺と蔵王が2大観光地ですよね。山形市をツーリズムの観点でみると、どんな印象がありますか?

もしも「山寺と蔵王は有名だし“とりあえず”行っておこう」と思って、ただなんとなく行って帰ってきていたのであれば、非常にもったいないです。蔵王についても後ほどお話しますが、山寺はとてつもなく魅力的な観光資源ですから。

山寺について研究している地元の方に「山寺は体で学ぶ『仏教の学校』である」とうかがったことがあります。その昔、東北の人は山寺に登ることで仏教の概念を学んだというのです。

「山寺に登る行為は、苦楽を味わいながら一歩づつ歩む人生そのものを表しており、山頂からの眺めは極楽浄土から見る景色である」

諸説ありますが、私はこの考えに興味を持っています。その昔、日本語がまだ確立される前に、仏教をどう伝えたのか。それには言葉ではなく、体感させるしか無いと思うんです。

山寺に登りながら、人生の山や谷を感じつつ自問自答し、山頂に着き景色を見下ろすと「おじいちゃんやおばあちゃんが仏となり、見守っていてくれるのでは」と自然と思える。私は、山寺は先人の知恵を壮大なスケールで体感できる感動的な場所だと学生に話しています。

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山寺の五大堂からの眺め

──そのほか、山形のどんなところに魅力を感じますか?

山形は信仰にまつわる文化がおもしろいですね。山形に来ていくつもの個性的な祭りや奇習を知りました。

たとえば、霞城公園の近くにある豊烈(ほうれつ)神社の「古式打毬(だきゅう)」はとても興味深いです。宮内庁、八戸の打毬とともに日本に3つしかない打毬で、山形県指定無形民族文化財になっているそうです。

馬に乗って穴に玉を入れ点数を競うもので、海外でいうポロや、ラクロスのような、すごく珍しい儀式なんです。あれはきっと海外の人をも惹きつける光景でしょうね。こういった山形特有の姿を世界の人にもっと広く知ってほしいと思っています。

──現在の山形のインバウンドにはどんな印象がありますか?

訪日外国人向けのサービスを全国で展開する仕事をしておりますが、山形はまだ外国人向けのPRが弱い印象があります。

そして、都道府県別にみると山形県はパスポート保有率が低く、それに連動して海外旅行経験者の比率も少ないということになります。

──ということは、山形でインバンドは難しい…?

一見ハードルは高そうですよね。でも、私はむしろ飛躍すると思っています。

つい最近Googleの翻訳イヤフォン「Google Pixel Buds」が発表されましたよね。ネット環境が必要ですが、40ヶ国語に対応しています。

「ili(イリー)」というスティック型の音声翻訳デバイスもあります。通信不要なのでどこでも持ち歩けて、同時通訳してくれる。

実際に私も購入し使ってみましたが、衝撃を受けました。初対面の台湾の方とお話した時もしっかり伝わり、会話もはずみました。外国語の勉強よりも大切なのは、コミュニケーションを取りたいという思いがあるかどうかなのではないでしょうか。

現在は英語と中国語・韓国語に対応していて、このデバイスが浸透すれば、海外旅行のハードルがグンと下がります。スマホアプリでも同様の機能のものが増えていますよね。

──言語の壁はどんどん低くなっていくと。

考えてみると、10年前にスマートフォンが誕生し、急速にコミュニケーション方法も変化しています。メールからLINE、そしてinstagram。このスピード感からしても、10年後にはきっと誰しもが翻訳機能を使って外国人と当たり前のようにコミュニケーションが取っているはず。

山形には方言がありますが、むしろそれも魅力の一つになるのでは。日本語でも「自動車教習所」を「自車校」というのは、東北ならではですし。違うからこそ、会話が弾むわけですよね。

もうひとつ重要なのは、交通インフラです。当面は仙台国際空港からのバス路線が重要になってくると思います。

既に仙台国際空港には、アジア圏からの直行便が揃っていて、空港からバスで1時間20分、乗り換えなしで山形市まで到着します。ちなみに山形空港にも台湾からのチャーター便が多く飛んできているのをご存知ですか?

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山形空港

言語と交通のインフラが整ったら、山形は強いですよ。

食文化がユニークで、寒暖差があるから食材も豊かで、野菜や果実、素材そのものの味が美味しい。出羽三山や信仰の文化が濃く深い。そして、温泉という万人に愛される観光資源もあります。

これから観光客の流れはどう変わっていくのか。開発が進んだ個性の薄い、日本全国同じような町に、果たして旅行客を引き寄せる魅力があるのでしょうか。

近い将来、誰しもが訪日外国人に「このさくらんぼ食べてみて!この温泉にはいってみて!」と自信を持って言える山形。未来がすごく楽しみですね。

≫ 本吉さんが提案する「山形でしたい5つのこと」に続く

 
【本吉裕之さん プロフィール】 

1975年東京都生まれ。早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻修了(MBA)。日本交通公社(現・JTB)、ドコモAOLを経てプライムリンク(現・一休)。宿泊施設等への営業及び新サービスの企画・開発に取り組み、宿泊営業部長、市場開発部長などを経て、東北芸術工科大学デザイン工学部企画構想学科准教授。WAmazing株式会社 事業開発担当部長。総合旅行業務取扱管理者/クルーズコンサルタント。

※ 本記事に記載している情報は2017年12月時点のものです。