お肌にいい温泉はしごツアー in 山形
pH値・メタケイ酸・泉質を知る
「山形でしたい5つのこと」として、東北芸術工科大学デザイン工学部 企画構想学科准教授・本吉裕之さん流の山形市の楽しみ方をうかがっています。
身近な出羽三山や「のし梅」の食べ方、蔵王のジンギスカンなどをご紹介した前回に続き、ラストは温泉編です。
全国の温泉地を巡ってきたツーリズムと企画のスペシャリストで、温泉ソムリエでもある本吉さんに、“温泉天国”山形の楽しみ方を教えていただきました。
温泉について知っておきたいポイント
本吉さん:温泉施設の壁にかかっている成分分析表をみて、注目してほしい項目があります。pH値、メタケイ酸の量、泉質、この3点です。
まずは「pH値」について。pHとは酸性とアルカリ性の度数を表します。
山形市内にある酸性(pH値が低い)の湯といえば、やっぱり蔵王。源泉がいくつかありますが、蔵王のpHは1.4〜1.8くらい、調味料のお酢が2.7〜3くらいですので、それよりも強い酸性なんです。
蔵王のような強酸性のお湯は、浸かるだけで肌にピーリング効果がありますので、お湯に入る前にタオルでゴシゴシと体を洗わないようご注意ください。肌にダメージを与えてしまいます。
「体を洗わず入るなんて」と思うかもしれませんが、蔵王のお湯は雑菌が生息できないほどの強酸性なので、お湯は汚くありません。
一方で、西蔵王近辺のいくつかの温泉はアルカリ性(pH値が高い)のトロッとしたお湯で、保湿性の高さが特徴です。
アルカリ性の温泉は、必ず体を洗ってからお湯に入ってください。体を洗わずにアルカリのお湯に入ることは、例えるなら化粧を落とさずに乳液を塗っていること。体を洗ってお湯に入ることで、きれいな肌にうるおいの膜をはってくれます。
もうひとつ重要なのは「メタケイ酸」。これは実際に化粧品にも入っている保湿成分で、「美人の湯のもと」と言われ、肌の新陳代謝を促進し、つるつるな美肌へと導いてくれる作用が期待できます。
温泉1kg中100ミリ以上入っていたら美人の湯といえるのですが、蔵王温泉は189ミリも入っているので、超美人の湯となります。
もうひとつのポイントは「泉質」です。泉質は約10種類に分類されていて、たとえば蔵王であれば硫黄泉、百目鬼温泉は塩化物泉など、それぞれの泉質で効能は変わります。 その温泉特有の効能が知りたければ、成分分析表にある「泉質適応症」という項目で確認してください。
注意したいのが「一般適応症」の項目。これは温泉だけでなく、お湯全般に当てはまる効能を指します。たとえば「疲労回復」や「冷え症」などがよく記されていますが、それは自宅のお風呂でもお湯につかれば当てはまることなのです。違いを楽しむ為には、必ず「泉質適応症」を見るようにしてくださいね。
お肌にいい温泉はしごツアー
メタケイ酸の量、pH値(酸性かアルカリ性か)、泉質、この3つをふまえて、「お肌にいい温泉はしごツアー」を楽しんでみてはどうでしょう。山形市内にはいろんな種類の温泉があるので、それぞれの特徴をいかした組み合わせがいくつか考えられます。
成分をしっかり学んだ上で、順番を考えるともっとお肌に良いツアーが出来上がります。例えば、「洗浄→化粧水→乳液」のステップを温泉に応用してみましょう。
蔵王の強酸性かつメタケイ酸が豊富なお湯で、肌の古い角質を落として、メタケイ酸の美容成分を浸透させます(化粧水)。そのあとに、西蔵王や山形市内に数多くあるアルカリ性のお湯に入って保湿する(乳液)。これは先人たちの知恵で「仕上げ湯」と言って、温泉地では古くからある入浴法なんですよ。
それぞれの泉質をリサーチして、自分に合った温泉の組み合わせを探してみてください。いつも入っている温泉も、成分や効能を知ってから浸かると、特別な時間を感じられるはずですよ。
※画像は許諾を得て撮影しています