【長野】トベアーキテクト香川翔勲さん 建築家であり続けることで生まれるもの
建築家、建築士、インテリアデザイナー。
私たちが普段耳にする「建物」にまつわる仕事にはいろいろな呼び方があります。香川翔勲さんは、その屋号を自身の名前に込められた「翔」という文字と「to be architect」という言葉から、「トベアーキテクト」と名付けました。
「信州大学工学部に合格したとき、自分が“意匠”をやる建築家になるということに少し自信がなかったんです。でも恩師となる坂牛 卓先生が『分析や理論からでも建築はできる』と、最初に言ってくれました」。卒業後、香川さんは東京の松田平田設計という建築設計事務所に就職。そこで携わったものは、競輪場や展示館など大規模で公共性の高い建築。大規模建築を手掛ける建築家への道を歩みました。
風向きが変わったのは、2015年。奥様が妊娠、実家のある長野へと戻ってしまったのです。それを追うように長野へ来た香川さんですが、大きな会社を辞めたのだから「自分のやりたいことをしよう」と2016年春に独立。信州大学時代の友人知人からの紹介で仕事はまわってきましたが、それは東京でやっていたような仕事ではなく、インテリアデザインに近い小規模の建築設計の仕事でした。
そんな折、CREEKSの取締役でもあり、自身も建築設計事務所を営む広瀬 毅さんから、京都府笠置町でのエリアマネジメントのプロポーザルのチームに参加しないかと声がかかります。実は大学時代の講師と学生として接点はあったものの、独立してCREEKSのコワーキングスペースを利用するまでは特に交流はなかったそう。これを機に広瀬さんの事務所のあるカネマツ(門前のリノベーション物件)へと自身の拠点を移し、tsunagnoの設計も手掛けるなど関係が築かれました。
こういった一連の活動の中で、香川さんに変化が起こります。ひとつは「建築家は設計が終わったら仕事は終了。リスクを負わずにさようなら、でいいのだろうか?」という思い。もうひとつは「エンドユーザーに寄り添う小規模物件も手掛けたけれど、自分が大事だと思うものを社会に問いかける必要があるのでは?」ということ。「香川くんはアカデミック寄りだよね、と知人にも言われたんですよ」。
現在進行系のとあるプロジェクトの一環として、香川さんはシェアオフィスの設計から運営までふまえた案件に携わっています。「同世代の人たちが町づくりに動き出そうとしている。だから私もそこでリスクを負って、きちんと関わろうと思ったんです」
「ひょっとして不器用ですよね?」と失礼ながら問うと、笑う香川さん。「自分でやりたいことは手繰り寄せないと」と語る彼に、恩師の坂牛先生が贈った言葉は「be an architect(建築家たれ)」。「to be architect(建築家であること)」を問い続けることで、どういう建築やモノ、場を生みだすのか、今後が楽しみです。
屋号 | トベアーキテクト |
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