甘栗太郎 あまぐり/やまがた手土産009
やまがた手土産009
今回お持ちしましたのは、「甘栗太郎のあまぐり」です。
山形市の老舗百貨店・大沼の入口。正面向かって左端の角の、たった一坪くらいしかないんじゃないかというくらい小さなスペースがこのお店のぜんぶ。店舗に掲げられている名前が「甘栗太郎」。
多分このお店、ずっとずっと昔から、ずっとずっとここにあります。山形市民ならきっと何度もなんどもこのお店のまえを通りすぎているはずです。聞けば、60年続いているそう。今お店のなかに立っているおばさんは3代目なのだそうです。
どうです? このパッケージ。いいでしょ。
桃から生まれた桃太郎、ならぬ、甘栗から生まれた甘栗太郎。
ヘアスタイルもマロン・フォルム。鳥山明さんの古典的名作『Dr.SLUMP』に登場した栗頭大五郎先生に通じるものを感じます。(ちなみに栗頭先生がある日突然やってきた転校生オボッチャマンくんに出した入学試験の問題のひとつは「『天津甘栗』はなんと読むか」というものでした。)
このお店、実は、山形ローカルではないのだそうです。
東京(四谷と秋葉原)にあり、さらに岩手にもあり、そして山形にあるのだそうです。どういう店舗展開なんだろう? 不思議。
でも、たとえ本社機能が東京にあるのだとしても、山形人にとってはそれはそれはもう愛着のある昔懐かしい商品であり、山形ローカルとしてしっかりと根を張った手土産だと私は断言したいのです。
だって、よく見てみると、けっこう買って行く人、いるんだもん。
とくに年末はよく売れるんですって。
山形人は、この季節、こたつに入って甘栗を剥いてお茶を飲むのでしょう。暖かいこたつに足を伸ばして、テレビを見て笑いながら、こたつの上に広げた新聞紙の上で、甘栗を丁寧に剥いては食べ、また剥いては食べ。そういう幸せもありますよね。
僕の知り合いの40代の女性の記憶のなかには、幼いころこのお店の前を通るとどうしてもあまぐりが欲しくてお母さんにおねだりしたら「高いからダメ!」って言われた、というシーンが残っているそうです。ね、あまぐりは子供心にも欲しくなる、そしてなかなか買ってもらえない、ちょっといいものなんです。
今回あらためてこの手土産を買って、友人に食べてもらったら「するっと剥けるといい気持ち」って言ってました。そういう小さな幸せも与えてくれるみたいです。
ただ、このお店、数ヶ月後になくなるかもしれない、という噂を最近耳にしました。どうかそうならないことを祈るばかりです。
ひと栗ひと栗、大切に食べてもらえたら嬉しいです。
reallocal山形ライター 那須ミノル
※シリーズ「やまがた手土産」は山形市在住のライター那須ミノルがじぶんの価値観に従ってセレクトした手土産たちの素敵なところを勝手にご紹介していくコーナーです。
reallocal福岡チームによる「ふくおか手土産シリーズ」も是非どうぞ。
text by 那須ミノル