蕎麦屋でラーメン! 8/栄屋本店
大粒の雪が降りしきるこの街の冬には、麺で身体を温めたい。
水気を多めに含んだ雪の日の、ビチャビチャと足場の悪い道を急ぎ足で歩いて、真っ白い息を吐きながら暖簾をくぐり、あったかいそばを注文する。
芯まで冷えきった身体を暖房のそばでゆっくりと温めていると、やがて店員さんが注文の品をお盆に乗せてやってくる。ホカホカの湯気をたてたそいつが、目の前に置かれる。
両の手でどんぶりをそっと持ち上げれば、かじかんだ手のひらが痛いほどに熱くなる。ひとくち汁を飲めば、真水のような鼻水がツツーっと穴から流れだす。だしのきいた少し濃いめのしょうゆ味のそばつゆの温度が、口中に、のどに、食道に、胃に広がっていく。
ああ、まるで夢のよう。
そば屋には真冬の至福がある。
そんなわけで今日は七日町の栄屋本店へ。
冬の僕らにはそば屋がどうしても必要なんだ。
そば屋は冬のオアシスなんだ。
この厳しい季節にこそあったかいそばのありがたみがよくわかるんだ。鼻水を垂らす僕らを、体の底から温めてくれる、大切な大切な食べ物なんだ。それが「そば」なんだ。
すみませーん。鳥中華ひとつ!
だって、なんか、店に入ってみたらそばより中華が食べたくなるんだもん。中華系のメニューの方がずっと多いんだもん。夏なんかここは「冷やしラーメン」で行列ができるんだもん。
アツアツで、ごくごくシンプルな味わいの、天かすの浮いている鳥中華。
だってやっぱり、せっかく山形の蕎麦屋に来たんだから!
だからやっぱり、蕎麦屋でラーメン!
蕎麦屋のラーメンはホッとする味。
東京のラーメンみたいな進化系とはちょっと違う。
昔懐かしい、まさに「中華そば」って感じの味。
過去と未来をつなぐ味。
これぞ山形。至るところに。
さて、お次はどこの?