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山形の「新しいお面」をデザインする

「山の面々」活動報告展レポート

山形の「新しいお面」をデザインする

前編:「畏敬と工芸」活動報告展レポート

「畏敬と工芸」と同じく半年間の活動報告をおこなった研究会「山の面々」では、デザイン事務所akaoni代表/デザイナーの小板橋基希さんが講師をつとめ、山形・南東北のアーティストやデザイナーたちと「新しいお面づくり」に挑戦しました。

山形の「新しいお面」をデザインする
小板橋基希さん

人が自然や祖霊に祈りや感謝を捧げるため、古くからおこなってきた〈祭り〉の新しいかたちとしてはじまった山形ビエンナーレ。その〈おみやげ〉として、世界各地のさまざまな祭りや儀式で変身の道具として使われてきた「面」を見直し、大人も子どもも楽しめるプロダクトとして創造するプロジェクトです。

参加メンバーは山形・南東北でグラフィックデザインや陶芸、絵画などそれぞれの専門分野で活動するアーティスト・デザイナーら11名のクリエイターと、山形県上山市の張り子面工房「蔵六面工房」の木村菖一郎さん。「張り子」は日本で長らく郷土玩具づくりに使われてきた技法で、蔵六面工房では面や小さな飾り物をつくっています。

山形の「新しいお面」をデザインする
張り子面工房「蔵六面工房」の木村菖一郎さん

「山の面々」の研究会では、木村さんの指導の下、粘土の原型づくりから凹型の石膏型づくり、石膏型に和紙を糊で貼り重ねる作業、絵付けまでを自分たちでおこないました。

山形の「新しいお面」をデザインする
張り子面に絵付けをする

解説リレートークでは、とんがりビルの本と雑貨の店「十三時」店内に陳列された「山の面々」を出展者・トークの参加者全員がかぶり、変身した姿でそれぞれの面のデザインの意図を発表しました。

 山形の「新しいお面」をデザインする

山形の「新しいお面」をデザインする

山形・南東北で日々暮らすクリエイターだからこそ持ち得る感性が発揮された今回のプロジェクト。土着的な物語や東北の民俗的な意味合いから距離を置いた新しさを表そうと、鮮やかなピンクを用いた配色で、偶然できたような模様をあしらった面もあり、その形が何に見えるかとあれこれ想像する楽しさを生み出します。

山形の「新しいお面」をデザインする

はたまた「山の面々」というテーマから、山に住む野生動物や植物をモチーフにした面も山形ならではのもの。山そのものを表現した面、山で感じる生命力や気配を表現した面もそれぞれ、個性が光ります。多方向から見ることで違う表情に見える遊べる面や、子どもの描いた絵を取り入れた面、世界各地の面表現から魔除けや威嚇など共通する意匠を見出し、親しみやすくカラフルにデザインし直して表現した面など、研究会の参加クリエイターそれぞれが違う角度から、「見たことのないお面づくり」に挑みました。

山形の「新しいお面」をデザインする

古来より面は、日常と非日常、意識の内と外、現実と空想、人の世界と神々の世界、人と動物など、相反するものを橋渡しする役割を担ってきました。面を用いた古くからの祭りや儀式がだんだんと消え、面の魔力が失われたいま、東北で培われてきた文化に根ざすのではない新しい面を創造すること、それらが「新しい祭り」である山形ビエンナーレでかぶられ、使われていく風景をつくろうとする「山の面々」の試みは、クリエイターたちの想像力を覚醒させ、既存の価値観をひっくり返すような、新たなものの見方を築いていくのでしょう。

山形の「新しいお面」をデザインする

リレートークの最後に、東京・銀座の森岡書店代表、森岡督行さんが「今回の2つの研究会はどちらも、見えないものを可視化する取り組みだった」と話しました。バラエティーに富んだたくさんの試作面を生み出した「山の面々」の今期の研究会で出来上がった一枚一枚は、一点ものの作品でした。今秋の山形ビエンナーレ2018に向けてデザインを再検討し、量産可能な面づくりを進めていきます。

見えないものを見えるようにする、アートやデザインが集結する芸術祭「山形ビエンナーレ2018」では、見えているつもりで見えていなかった、この土地の新しい物語を見せてくれるでしょう。


写真提供:東北芸術工科大学