【篠山】使う人を思い、地域に寄り添うものづくり
手作り木工ショップ”ナチュラルバックヤード”
兵庫県篠山市の篠山城跡北側に位置する商店街を散策すると、古民家が点在し旧城下町ならではの風情が楽しめる。その商店街の一角に、古民家を改修したガラス張りのレトロモダンな木工品店「ナチュラルバックヤード」が目に留まる。
ガラス越しには、木のおもちゃが並ぶ広々したキッズスペースが見える。子どもたちが木の車に乗ったり、キッチンでおままごとをしたりおもちゃで自由に遊んでいる。そんな楽しそうな雰囲気に惹かれて、お店に足を踏み入れた。
ナチュラルバックヤードを開いたのは、兵庫県三田市から隣町である篠山市に引っ越した足立伸也(しんや)さん、留美子さん夫妻。
当時築74年だった古民家を自分たちで改修し、2012年にオープンした。
木工作家の伸也さんは、お店の近くに木工房を構え、オーダー家具をはじめおもちゃなど多彩な木工雑貨を製作。
お店では、工房で手作りしたオリジナル品を展示販売するほか、オーダー家具の注文を受けている。
「木とふれあい、知育を深める。色を楽しみ、部屋を彩る」がものづくりのコンセプト。約90色のカラーバリエーションがあり、細かな調整もできるという。塗料は植物油ベースの自然塗料を使っている。「おもちゃで遊んでいると、子どもが口に入れて舐めてしまうことってあります。そんな時も心配せずに自由に遊んでもらいたいんです」と留美子さん。豊富なカラーバリエーションと安全の両立に工夫を凝らす。
ナチュラルバックヤードのものづくりは、使う人のことを思った細やかな心配りに溢れている。安全性に配慮した塗料をはじめ、例えば積み木の収納ケースは、あえて少し大きめに作り、積み木同士に隙間を空けることで取り出しやすいようにデザインしている。中には壊れてしまってもお母さんが簡単に補修できるおもちゃもある。
ナチュラルバックヤードでは、篠山産の木材を活用する活動にも力を入れており、ワークショップなどのイベントも開いている。留美子さんは「篠山の木が再び生活の中に使われるようになってほしい」と地元産材を使う思いを語る。またお店で展示販売しているおもちゃには積極的に地元の兵庫県産材を使っている。
こんな風に地域づくりにも熱心な2人。キッズスペースが商店街の通りからガラス越しに見えるのは、その思いの表れでもある。「キッズスペースを地域のみなさんのコミュニケーションの場に活用してほしいなと思っています。それでショーウィンドウからは、商品よりもキッズスペースがよく見えるようにしているんです」。
留美子さんは移住した篠山について「季節によって景色が移り変わり、四季を肌で感じられるのがとてもいいです。移住したばかりの頃、地域の人がお祭りに参加してね、と声をかけてくれました。伝統文化を守る姿勢に感動したのを覚えています。それから人とのつながりが豊かになりました。近所の人に相談すると、それやったらあの人に聞いてみたら?とつないでくれます。だから私も何か地域の役に立ちたい。そんな風に思って店づくりをしています」と話す。
ナチュラルバックヤードの木工品は丸みがあって、可愛らしく優しい風合いが印象的だ。作品にもお店にも根底には、使う人や地域にそっと寄り添う足立さん夫妻の温かさがあった。