real local 金沢「かばやきの浅田」どじょうの蒲焼き - reallocal|移住やローカルまちづくりに興味がある人のためのサイト【店】

「かばやきの浅田」どじょうの蒲焼き

金沢ふだんの魚メシ Vol.3

2018.07.02

「かばやきの浅田」どじょうの蒲焼き

金沢で蒲焼きというと「どじょう」が定番。「うなぎの蒲焼き」も勿論食べるけれど、「どじょうの蒲焼き」が金沢の名物、ソウルフードです。居酒屋、おでん屋で一品料理として、あるいはスーパーや近江町市場でも「どじょうの蒲焼き」を見かけます。しかし、どうやら石川県内でも金沢市の他では見られない食文化のよう。「何でやろ?」と思っていたところ、ようやく専門店「かばやきの浅田」さんで、その疑問がスッキリしました。

「どじょうの蒲焼き」とキリシタン

「かばやきの浅田」どじょうの蒲焼き
「どじょうの蒲焼き」(1串130円)は、芳ばしく焼けた表面はサクサクで身はやわらかく、秘伝の甘辛ダレとの相性抜群。甘たるくないので、何本でも食べられる。

「かばやきの浅田」さんは浅野川のすぐそば、横山町の住宅街にあります。扱っているのは一年中「どじょうの蒲焼き」のみという、生粋の専門店。地元の人が昼食や夕飯のおかずに買い求めたり、有名料亭や茶屋街のお茶屋さんも夏になると郷土の名物料理として提供するため仕入れて行くそう。また、「ひがし茶屋街」「兼六園」から徒歩圏内なので、少し足をのばして1串、2串とおやつ感覚で楽しむ観光客も増えています。

「かばやきの浅田」どじょうの蒲焼き
店主の浅田博子さんは、創業の父、母の後を継いで3代目。

「金沢のどじょうの蒲焼きは、幕末・明治初期に長崎の浦上から金沢藩預けにされたキリシタンが、卯辰山に籠っていた時に食うや食わずの生活の中で、精のつくものとしてどじょうを捕り、醤油をつけて焼いたのが始まりといわれています。加賀百万石の城下町なので腹開きは切腹に通じて縁起が悪いからと、背開きにしたと伝わっています。卯辰山には、そのキリシタンの記念碑もありますよ」と3代目店主の浅田さん。

え、キリシタン!?  思いもよらない来歴にビックリ!!  のほほ〜んとビール片手に「どじょうの蒲焼き」を頬張っている、そこの金沢人さん、その由来をご存知でしたか? 金沢から山越えした富山県の南砺市(福光・城端など)でも「どじょうの蒲焼き」を食べるので、この関連性も気になっていました。てっきり山越えして、山の文化が金沢に伝わったのかと。

「かばやきの浅田」どじょうの蒲焼き
1串にどじょう1〜1.5匹を使用。芳ばしい香りが食欲をそそる。

「詳しくはわかりませんが、富山の人は商売上手だから、金沢の蒲焼きを取り入れたのかもしれませんね。一昔前は金沢市内に何十軒も「どじょうの蒲焼き」専門店があったんですが、今ではうちくらい、他はうなぎ・どじょうの蒲焼きを販売するお店が数軒残るのみ。浅野川のそばにも、何軒もあったんですよ」

「かばやきの浅田」どじょうの蒲焼き
卯辰山公園の「長崎キリシタン殉教者の碑」の説明には、弾圧で信仰を翻さなかった浦上村のキリシタンのうち、政府による明治2年の金沢藩預けの5百余人は、明治6年に送還されるまで、卯辰山の花菖蒲園と湯座屋敷の牢舎に幽閉されていた。・・・と書かれている。場所は横空台・望湖台そばの駐車場から徒歩130m。

もう、B級なんて呼ばないで!!

「かばやきの浅田」どじょうの蒲焼き
唐揚げなどで食べるどじょうより、太くて大きい蒲焼き用。

「今は上質のどじょうを手に入れるのも難しく、石川県でも養殖に力を入れてますが、各地から良いものを選んで仕入れてます。かつては、田んぼや小川に生息していたどじょうも、今では数も減って、農薬などの心配もあるため天然物ではなく安心な養殖物を使っています」

スーパーや魚屋で桶に入ったどじょうが売られていることがありますが、それは味噌汁や唐揚げなどに使う小ぶりなもので、蒲焼き用は開いて串に刺せるビッグサイズ。とはいえ、うなぎに比べると小さな1匹1匹を背開きにして串を打つのは大変な作業。さらに、一番の繁忙期は真夏の土用の丑の日なので焼きの作業も大変です。

「かばやきの浅田」どじょうの蒲焼き
テイクアウト専門だけど、店の入口のベンチで食べることもできる。

「夏は『見ているだけでも暑そうで気の毒やわ』とドージョウ(同情)してくれる人も多いんですよ(笑)。けど、やっぱり夏の滋養強壮にはぴったりの食べ物だし、病院のお見舞いや出産後の女性へお土産にされる方も多いですよ。100歳まで元気だった私の母は『どじょうは元気の源だから、あんた達も毎日食べなさい』とよく言っていました」

「かばやきの浅田」どじょうの蒲焼き
長年注ぎ足しながら使っているタレは、上品でコクがある。

金沢に移されたキリシタンが精をつけるために食べ、街に売り歩いたのが始まりという金沢の「どじょうの蒲焼き」。貴重なタンパク源、栄養源であったとともに、その美味しさこそが舌の肥えた金沢人に定着した理由なんでしょうね。

浅田さんの蒲焼きは素材にもこだわり、タレに使う醤油・砂糖・水飴・日本酒も上質なものを使用しているので、上品であっさりした中にも深み・コクがあるのが特徴。どじょうは脂もうなぎより少なく、タレも甘みが控えめなので、食欲が落ちた夏場もパクパク食べられます。「どじょうの蒲焼き」を金沢のB級グルメと呼ぶことがありますが、この手間暇、素材、料亭でも供される味わい、これは決してB級とは呼べませんね。

 

名称

かばやきの浅田

業種

どじょう蒲焼き専門店

住所

石川県金沢市横山町18-10

TEL

076-263-3917(予約がおすすめ)

営業時間

9:00〜19:00(なくなり次第終了)

定休日

日曜(予約販売は可)

アクセス

北鉄バス「横山町」バス停から徒歩約4分

「兼六園」「ひがし茶屋街」から徒歩約15分

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