オーケストラがきっかけで海外から移り住むことになった演奏家たち
海外から金沢に定住。それぞれの暮らし方
オーケストラ・アンサンブル金沢の特徴のひとつに国際性の豊かさがあります。演奏会を海外で行ったり、外国の指揮者や演奏家を招いているだけではなく、入団のために金沢に移り住むことになった海外出身の団員の方が多くいます。
そこで今回、フランスから来られたドゥミヤックさんと、韓国から来られたソンジュンさんに、金沢での暮らしについてお話を伺いました。
ヴィルジル・ドゥミヤックさん(Virgile Demillac/ヴァイオリン)
ドゥミヤックさんは、フランスのトゥールで子供時代を過ごしました。フライブルク(ドイツ)とバーゼル(スイス)で音楽キャリアを積み、現在31歳。2013年秋、オーケストラ・アンサンブル金沢への入団に伴って、金沢へ移住しました。
フライブルク時代から同じ先生に習うヴァイオリンの仲間だった日本人の彼女と昨年8月にご結婚。彼女とは長いおつきあいだったため、いつか日本へ行くのは当然と思っていたそうです。
「仮に4日オフがあれば、2日金沢・2日大阪という感じですね」。
フリーの音楽家として大阪で活躍する彼女と、金沢のオーケストラ所属するドゥミヤックさんは、お互いに2つの都市を往復する暮らしを楽しんでいます。
ドゥミヤックさんにとっては自転車で生活ができるという点で、金沢はヨーロッパの中規模都市であるフライブルクやバーゼルと、かなり同じ感覚で暮らせるとのことでした。
「オーケストラの仕事が忙しいのですが、21世紀美術館のそばにある石川国際交流サロンで日本語のレッスンを受けています。自転車かバスで楽に行けますよ」。
「よく行くカフェのマスターが、日本語の新聞から情報を教えてくれます。そんな親切が、とても助かります。また、あるとき郵便局で声を掛けられたのがきっかけで、地元の年配の方とも友達になりました。その方のご家族に剣道の達人や書道の達人がいました。それで書道もやってみましたし、今は剣道を続けています」。
音楽は国を超えていくとはよく言われますが、ドゥミヤックさん自身が軽やかに、金沢の人や文化を堪能して、ここでの生活の豊かさを楽しんでいます。
キム・ソンジュンさん (Sung-Jun Kim/チェロ)
「越してきた当初はだいぶ肩に力が入っていましたが、このごろでは街にも慣れて友達も増え、ずいぶん気持ちが楽になりました」。そう語りはじめたソンジュンさんは、金沢に来て4年目です。
「金沢は音楽家にとって、たいへん住みやすい街です。大きな都市ではないのに、とても国際的なオーケストラがあります。さまざまなところから来る素晴らしい指揮者の下で演奏ができます。暮らしにお金が掛からないのもよいです。ソウルや東京で演奏家をしている友達の話を聞くと、生活費を稼ぐために教えるなどの副業をしなくてはならなくて、自分の時間を取るのに苦労しているというのです。でも、金沢でわたしはゆったり過ごせます。練習する時間が十分に取れるということが、音楽家にとっては何より良いことです」。
―― 団員としての仕事の他にも、地元の演奏家との共演を多くされているでしょう。忙しくないですか。
「それでもまだ時間はあるし、楽しくやっています。地元のいろいろな人と関わることで教えられます。音楽的にも新しい回路が開かれます」。
―― 音楽以外の趣味は。
「外食かな。金沢は食のクオリティが高いです。店のマスターと親しくなると、店に行くのもまた楽しくなります。好きなお店は日本料理の『いたる』、スペイン料理の『アロス』。イタリア料理の『Takamazzo』もすごくおいしくてサービスもよくて大好きです!」
「演奏家は集中力が大事です。自分をコントロールする力が問われます。私の場合、精神的な支えになっているのはキリスト教徒としての信仰です。市内の教会で、司祭やまちの人と一緒になって交流し、コミュニティに参加できます。このことを含めて、いろいろな意味で、今、金沢は自分にとってとても住みやすいのです」。
「じつは、引っ越し魔かもしれません。金沢に来て4年になりますが、既に市内で2回引越しをしていて、来年また引っ越そうと思っているところです。不動産屋さんなんですよね? 逆に聞きますけれども、金沢ではどこがお勧めですか?」。
最後は逆にご相談を頂くという、思いがけないない展開になりました。
ドゥミヤックさん、ソンジュンさん、今年の演奏も楽しみにしています!
お二人の職場の記事もあります。
「オーケストラ・アンサンブル金沢 ~「わたしのまちのオーケストラ」のある歓び」 併せてお楽しみください。