【金沢の旬ごはん】四十萬谷本舗の「かぶら寿し」〜お正月にはこれがなくちゃね〜
お正月といえば、おせち料理にお雑煮。さらに、金沢ではお正月に欠かせないのが「かぶら寿し」です。年末が近づくと各家庭で手作りしたり、ご贔屓にしているお店で購入したり、お歳暮としても人気があります。石川県は「発酵王国」とも呼ばれ、さまざまな発酵食品がありますが、その代表ともいえる加賀百万石・金沢の冬の味覚。今回は、明治8年創業の発酵食品の老舗「四十萬谷本舗」さんで「かぶら寿し」についてうかがいました。
野菜と魚を一緒に漬ける「かぶら寿し」
まさにユネスコ無形文化遺産な “和食”が食卓を彩るお正月。おせち料理には長寿祈願の海老、子孫繁栄を願う数の子、先を見通す蓮根、富を願う栗きんとんなど、定番の縁起ものをはじめ、その土地ならではの郷土色豊かな伝統料理も並びます。金沢を中心とした旧・加賀藩の地域では、それが「かぶら寿し」です。
–「かぶら寿し」について教えてください。
「寿し」といっても握り寿司ではありません。お酢で味付けした寿司飯を使うのではなく、「熟鮓(なれずし:魚を塩と米飯で乳酸発酵させたもの)」や「いずし(魚と野菜を塩・米・麹で漬け込んだもの)」の一種です。塩漬けしたカブに、塩漬けしたブリを挟み、米麹で漬け込んだ石川県伝統の発酵食品で、乳酸発酵による優しく豊かな味わいと香りが特徴です。地域や家庭によっては、ブリの代わりにサバを使うこともあります。
–「四十萬谷本舗」さんの「かぶら寿し」は、カブがしっとりシャッキリ、麹の甘みが上品で優しい味。中のブリの旨みが濃厚で、まるでブリの生ハムみたいですね。
一般的には2週間ほどブリを塩漬けしますが、「四十萬谷本舗」では天然の寒ブリを半年〜10ヶ月ほど塩漬けしたものを用いるので、今年の「かぶら寿し」に使用しているのは、前冬に水揚げされたものです。じっくり塩漬けすることで、ぎゅっと旨みが凝縮されています。塩抜きしてからカブに挟み、南砺市福光の「石黒種麹店」さんの米麹をベースに造る専用の糀で1週間〜10日ほど本漬けします。
-「石黒種麹店」さんは日本で数少ない種麹店で、ものすごい発酵パワーがある麹なんですよね。
そうです。うちの店では先先代より前からの長いお付き合いです。とても美味しく仕上がり、身体にもいいんですよ。
–カブも特別なものですか?
地元の契約農家さんと、自社ファームで育てた石川県産の「百万石青首かぶ」です。農事部を立ち上げ、自社ファームでの生産量を増やしていっています。大玉で肉質が緻密でやわらかく、「かぶら寿し」にとても適した品種です。
–金沢では「大根寿し」も食べますよね?
「かぶら寿し」がハレの日のご馳走なら、「大根寿し」は日常のケの食べ物で、大根とニシンを麹で漬けたものです。身欠きニシン独特の香ばしい風味と、発酵の旨みが持ち味で、「かぶら寿しより、大根寿しが好き」とおっしゃる方もいらっしゃいます。
–大根の上にニシンがのった姿が、棒寿司やバッテラみたいで面白いですね。
加賀藩では「かぶら寿し」や「大根寿し」は、武家や庶民に親しまれ、年末年始の贈答や挨拶に用いたり、おもてなし献立の一つとされてきました。加賀藩の儒学者・金子有斐(かねこ・ありあきら)の日記にも、文政9年(1826年)1月3日に「雪降る、魚屋小兵衛方より鰤のすし(かぶら寿し)来る風味よろし」や、1 月5日に「雨天、鶴来町屋よりにしんのすし(大根寿し)来る」とあります。
熟鮓は東南アジアから稲作と共に日本へ伝わったといわれ、平安時代の文献にも見られます。寿司飯と魚の現代の「握り寿司」スタイルが誕生するのは、江戸時代後期になってからで比較的新しいんですよ。
–体験教室もやっているそうですね?
伝統的な町家の姿をとどめる本店で、冬季は「かぶら寿しの漬け込み体験」(参加費:税込3,780円/11月1日~15日、1月~3月中旬)を予約制で午前・午後の2回開催しています。漬物の試食をしながら「かぶら寿し」の話をお聞きいただき、1人につき約6枚程度の「かぶら寿し」を漬け込んで頂きます。
4月~10月の毎週土曜(6月23日~7月31日を除く)には「糀漬け体験教室」(参加費:税込2,160円)も行なっています。どちらも漬け込んだら、そのままお持ち帰り頂くか、宅配便で発送もできるので、地元の方にも観光の方にも楽しんでいただけます。
–店舗の奥に広がる建物の歴史ある佇まいや、お庭も素敵ですね。次は体験教室にも参加してみたいです。
はい、お待ちしています。体験教室では、私や社長が歴史・発酵食品について解説した後、当社の発酵文化研究員で職人のスタッフが丁寧に「かぶら寿し」作りをお教えします。ぜひお手製の「かぶら寿し」を楽しんでみてください。
名称 | 四十萬谷本舗 弥生本店 |
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URL | |
住所 | 石川県金沢市弥生1-17-28 |
TEL | 076-241-4173 |
営業時間 | 9:00~18:00 |
定休日 | 第1日曜 |
アクセス | 駐車場7台 金沢駅より北鉄バス(泉野三丁目経由)「沼田町」バス停より徒歩5分 |
備考 | <直営店> ■めいてつエムザ店 石川県金沢市武蔵町15番1号 めいてつ・エムザB1 TEL 076-260-2405 営/10:00-19:30 ■アトリオ店 石川県金沢市香林坊 1-1-1 アトリオB1 TEL 076-220-1068 営/10:00-19:30 ■百番街店 石川県金沢市木ノ新保町1-1 金沢駅百番街あんと内 TEL 076-260-3737 営/8:30-20:00 ■金沢南店 石川県野々市市上林5-5 TEL 076-248-8090 営/10:00-18:00 |