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地域と未来のために種を蒔く。Bake&Restore活動報告

2018.12.20

reallocal神戸を運営する神戸R不動産が事務局としてサポートしてきた、西宮市船坂の茅葺屋根修復ワークショップ・Bake&Restore 

昨年の夏頃から地元の実行委員会のみなさんと一緒に取り組んできたプロジェクトが、今年11月にひとつのサイクルを終えた。 

reallocal参加者募集クラウドファンディングの告知を行ってきたので、ひと区切りついたこのタイミングでBake&Restoreの活動結果を僕たちの視点で報告したいと思う。 

地域と未来のために種を蒔く。Bake&Restore活動報告
Bake&Restoreは、茅葺屋根の材料になる小麦を育て、その小麦から作った小麦粉でパンを焼き、残った部分(茅)で屋根を葺く約1年に渡って開催されたワークショップ。写真は修復中の様子。

少しずつ分かってきた茅葺古民家の現状

いまでは郊外でも目にする機会が減ってきた茅葺古民家。訪れる者からすると、茅葺古民家がある風景はとても郊外らしく、「遠くに来た」という満足感を与えてくれる。ほっとする風景を眺めながら、心の隅で「こういった景色が残っていて欲しい」と思ったことがある人も多いのではないだろうか。 

しかし、遠くから眺めると綺麗に見える古民家でも、近づくと実はかなり傷んでいる場合がある。こういったケースでは、古民家を相続したものの遠方で暮らしているため目が届いていなかったり、修繕費に頭を悩ませているうちに老朽化が進行し手がつけられなくなってきた、というパターンが多いようだ。 

地域と未来のために種を蒔く。Bake&Restore活動報告
老朽化が進み手入れされていない茅葺古民家は、周辺住民に火災や倒壊の危険を感じさせる。所有者だけでなく、地域にとっても悩みのタネになっている。

また、茅葺古民家のある地域では、高齢になるほど“茅葺古民家は貧乏くさい”というイメージを持つ人が多いことも分かってきた。はじめて聞いた時は少し驚いたが、新しくて高価なものを持つことが豊かさだという高度経済成長期を経験してきた世代にはそう映るのだろう。 

時代が変わり人口減少が社会問題になってきてからは、茅葺古民家のような地域で眠っている文化的資産を活用し、地域を盛り上げる動きが各地で活発になってきた。Bake&Restoreもその流れの中で生まれた取り組みのひとつだった。 

ゴールはイメージのギャップを埋めること

プロジェクトをスタートさせるにあたって、想定していたゴールがいくつかあった。ひとつは、都市住民に茅葺古民家への興味を持ってもらうこと。もうひとつは、その茅葺古民家の現状を知ってもらうこと。そして、茅葺屋根修復への最初の1歩を踏み出すこと。 

しかし、実行委員会のみなさんと話し合いを重ねていくうちに、前述したような茅葺古民家に対する都市住民と地元民が抱くイメージのギャップを埋め、両者の心の距離を近づけることが最も重要だと気づき、これをゴールに設定することとなった。 

都市住民は茅葺古民家に対してポジティブなイメージを持つ傾向があるので、ネガティブな現状も知ってもらいたい。地元住民には、ネガティブな現状から少し離れてポジティブな未来を見てもらいたい。そのうえで、茅葺古民家が持つ魅力と可能性を見つめ直す機会になれば 

こういった思いから、茅葺古民家の成り立ちや、いつのまにか失われてしまった“食べるこ”と“住むこと”が循環していた頃の暮らし方をワークショップ形式で学び、実際に約1年かけてその暮らし方のサイクルを体験するというアイデアが生まれた。そして昨年10月、船坂の畑に小麦の種が撒かれた。 

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昨年10月に開催したワークショップ第1回の様子。この日は畑に茅葺屋根の材料になる小麦の種を蒔いた。
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ワークショップでは、実行委員会のみなさんが作ってくださった昼食を参加者全員でいただく。同じ釜の飯を食べると、参加者同士や地域の人との距離が縮まる。
地域と未来のために種を蒔く。Bake&Restore活動報告
昼食後は、農家や茅葺職人といった講師から茅葺古民家の成り立ちや、いつのまにか失われてしまった“食べること”と“住むこと”の循環についての話を聞く。
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春になりと一気に育ち始めた麦の様子。
地域と未来のために種を蒔く。Bake&Restore活動報告
6月には麦の穂が黄金色に色づき、いよいよ収穫。
地域と未来のために種を蒔く。Bake&Restore活動報告
収穫後に分けられた小麦と茅。これを使ってパンを焼き、屋根を修復する。

参加者は予定通り20名ほど集まり、朽ち果てつつあった茅葺屋根にもようやく人の手が入った。さらに副産物として、船坂の方々とワークショップ講師・参加者のみなさんの繋がりが生まれたり、地域での茅葺古民家にまつわる議論が活発になった。 

人の繋がりが地域の未来を変える

実はこの副産物こそが、茅葺古民家と船坂の未来を左右する重要なパーツだった。 

もともと今回のプロジェクトで修復する面積は茅葺屋根全体のほんの一部の予定だったが、ワークショップが始まってから屋根が予想以上に朽ちていることがわかり、修復面積を少しでも広げるためにクラウドファンディングすることになった。このときに、地域のみなさんや講師・参加者のみなさんの繋がりがエンジンとなり目標額50万円を達成。 

さらに、今回のプロジェクトで修復していた茅葺古民家のオーナーさんが物件の売却を決断し、せっかく修復がはじまったのに取り壊されてしまうかもしれない、このままBake&Restore1年で終わってしまうのかという危機的状況を打破したのもまた、Bake&Restoreで生まれた人の繋がりだった。(プロジェクトに関わっていた方自らが購入を決断、引き続き修復が続けられる運びとなった)

地域と未来のために種を蒔く。Bake&Restore活動報告
茅葺職人にレクチャーを受けながら屋根の葺き替えに挑むBake&Restore参加者のみなさん。

種を蒔かないと何も生まれない

このように、紆余曲折はあったが来年以降もBake&Restoreは続いていく。ワークショップ形式ではないが、今年小麦が育った休耕田には来年も小麦が育ち、小麦は食べ物に、茅は屋根の材料になる。時間はかかるだろうが、本来かかるだけの時間をかけて茅葺き屋根は修復されるだろう。 

また、実行委員のリーダーは自らが暮らす茅葺古民家を改修してカフェを開店予定。ワークショップや昼飯会場にもなったお隣の田中邸(武庫川女子大学の古民家修復サークル・古民家族によって約10年かけて修復が続けられている茅葺古民家)でも引き続き修復が進めらるため、船坂では3軒の茅葺古民家の修復が並行して行われることになる。 

カフェがオープンすれば、船坂での畑体験や各種ワークショップも開催しやすくなるはずだ。すべてはまだ始まったばかりで、Bake&Restoreは船坂の未来のために蒔いた種にすぎず、この先その種から何が花開くかまだ誰にも分からない。しかし、種を蒔かないとそこには何も生まれてこないのは明らかだ。これらの茅葺古民家が里山地域・船坂の古くも新しい姿を作っていく拠点に育ってほしいと僕たちは願っている。 

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今年張り替えられたのは茅葺屋根のほんの一部。来年以降も修復は続けられていく。
URL

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