一期一会の音楽 〜「ギンガとモニカ・サウマーゾ山形公演」に向けて 〜
「ブラジル音楽」と聞いて、皆さんはなにを想像するだろう。ある人はボサノヴァの洗練を、またある人はカーニバルのサンバの熱狂を思い起こすかもしれない。それが一般的な「ブラジル音楽」に対する認識なのだと思う。
しかしながら、ブラジルは移民によって成立した多民族国家であり、その多様な民族が混じり合うことによって歴史を、そして文化を育んできた国だ。文化的背景の異なる者達が、あの広大な大地に住まうことによって、ブラジル音楽はボサノヴァやサンバだけでは語り尽くせない、実に多種多様なベクトルを獲得した。そしてその人種や文化の混交が、他に類を見ない特異な才能を持つ音楽家を輩出する土壌ともなったのだ。
2019年4月6日に山形で公演を行うギンガとモニカ・サウマーゾは、そんなブラジル音楽の現在を代表する音楽家である。ブラジル音楽ファンであれば、この二人を知らない者はいない。
ギンガは作曲家でギタリスト。歌も歌う。ブラジル音楽ファンは彼を、エルメート・パスコアル、エグベルト・ジスモンチなどの巨匠とともに、ブラジルの三大変態作曲家と呼ぶ。もちろんその独創性に驚愕や畏敬の念を込めて「変態」というのだ。常識を覆す摩訶不思議な旋律や和音の展開は、神秘的でありまた無上に美しい。唯我独尊のようでいて、ブラジル音楽の多様な歴史が内包されている。最も来日を待ち望まれていたアーティストだ。
モニカ・サウマーゾは現在のブラジルを代表する女性歌手。その声の魅力に惚れ込んだ渡辺貞夫さんが、2017年に自身の公演の歌い手として彼女を日本に招聘したことは記憶に新しい。大らかな包容力と妖精的なオーラを帯びた歌声は、他に並ぶものがいない。ギンガの音楽の最良の表現者でもある。
さらにこの二人と共に来日する管楽器奏者、テコ・カルドーゾとナイロール・プロヴェッタもブラジルの今を代表する実力者であり、多くのセッションにおけるファーストコールである。この4人の公演が、なんと山形で行われるのであるから、全国のブラジル音楽ファンは信じがたい思いなのだ。この公演が如何に貴重な公演であるか、少しは理解していただけたろうか。
ここまで書いて、彼らの音楽を文章で表現しようとすればするほど、その本質から離れていく気がする。文章だけではおそらく、複雑で難解な音楽のように感じる方もいるかもしれない。しかしどうか彼らの音楽を頭で考えずに、感じてほしい。ジャンルなんて考えるのは無駄だ。彼らの紡ぎ出す、経験したことがないミステリアスな、身震いするほど美しい音楽に、ただ身を委ねてほしい。
山形公演の会場は、歴史の「気」に溢れる文翔館議場ホール。彼らの音楽に「場」の力がさらなる魔力を加えることは必至である。
音楽は一期一会です。ぜひこの公演を逃さないでください。
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Guinga & Mônica Salmaso Japan Tour 2019 山形公演
日時:2019年4月6日(土) 開場:16時30分、開演:17時30分
場所:文翔館議場ホール (山形市旅篭町3-4-51)
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