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変わらない手仕事、進化するデザイン/籐工芸品メーカー「ツルヤ商店」

2019.02.17

※終了しました。

ほっと心が和む、手仕事のあたたかさ。
使い込むほどに愛着がわく、素朴な質感。

明治40年創業、老舗の籐工芸品メーカー「ツルヤ商店」は創業以来、日々手仕事でバスケットや椅子、枕などの籐製品を生み出してきた。

ツルヤ商店の四代目・代表取締役の会田源司さんに、その歴史と製品に込める思いについてうかがった。

変わらない手仕事、進化するデザイン/籐工芸品メーカー「ツルヤ商店」
東北唯一の籐工芸品メーカー「ツルヤ商店」代表取締役の会田源司さん

「籐(英名:ラタン)」とは、熱帯地域のジャングルに自生するツル性の植物で、日本には平安時代から伝来したといわれている。竹と似た質感もあり、長年日本で親しまれてきた。

明治40年、初代はアケビのツルや葡萄の皮を使ったカゴや鞄などのつる細工品をつくっていた。大正に入り、次第に材料が籐へと移り変わり、つる細工を応用した籐工芸品の生産が本格的に始まっていった。

変わらない手仕事、進化するデザイン/籐工芸品メーカー「ツルヤ商店」
昭和30年代頃の資料。当時はベビーブームで、ゆりかごや歩行器など、子供用製品の生産が盛んだった。

プラスチックが高価だった昭和40年代後半までは、加工しやすく、軽くて丈夫な籐が重宝され、国産の籐製品が日用品として広く使われていた。ツルヤ商店では、温泉旅館から客室用の椅子の注文を受けるほか、仕事の8割は東京のメーカーの下請けをしていた。籐製品ブームの追い風もあり、需要は右肩上がりだった。

しかし、次第にアジアから大量生産の波がおとずれ、形勢は変わっていく。会田さんが23歳で家業に入った頃はすでに安価な輸入品が氾濫し、籐製品といえば、輸入品の“アジアン雑貨”というイメージが広がりつつあった。仕事は減り、関東を中心に同業者が籐製品から撤退したり、廃業する姿が目立ってきた。

変わらない手仕事、進化するデザイン/籐工芸品メーカー「ツルヤ商店」
山形市宮町に社屋をかまえるツルヤ商店

ところが、ツルヤ商店では創業から変わらぬ「自社製造の国産・手工業・中量生産」を掲げてきた。なぜ逆境の中、その信念が貫かれているのだろうか。

「品質には絶対の自信があった」と会田さんは言う。

下請けだからダメージを受けたが、直接小売店や使い手と繋がることができれば、生き残る道はあるのではないか。

当時はインターネットが普及し始めた時期。IT化が進むにつれて、その対局にある手作業の魅力は増していくのではないか。

山形には地道で丁寧なものづくりに適した気質がある。手作業の感性は守りながら、現代の居住空間に合うデザインを生み出していけば、需要はあるのではないか。

こうした仮説を立て、会田さんは大きく舵を切った。手仕事はそのままにデザインを磨き、オリジナル製品をつくっていこうと決めた。いまから30年前のことだ。

変わらない手仕事、進化するデザイン/籐工芸品メーカー「ツルヤ商店」

自社でデザイン改良を続け、次第にゲストデザイナーとのコラボレーションが始まっていった。

ツルヤ商店にはいくつかのデザインシリーズがある。

道具としての使いやすさを追求し、改良が重ねられた「籐源郷」シリーズは、どこか安心する落ち着いたデザイン。

プロダクトデザイナー・小野里奈さんの女性ならではの視点が入った「hairu(ハイル)」シリーズでは、籐かごがよりシンプルで小ぶりなサイズに生まれ変わった。

インテリア設計事務所「トネリコ」の米谷ひろしさんがデザインしたモダンなシリーズ「ami」や、トラフ建築設計事務所とコラボレーションした事例もある。

軽やかに進化していくデザインを支えるのは、老舗の技術力だ。どれだけデザインのバリエーションが増えたとしても、「曲げ」「編み」「巻き」といった基礎の製造工程は変わらない。100年以上にわたり引き継がれてきた技術を柔軟に組み合わせることで、新しいデザインは生まれていく。

変わらない手仕事、進化するデザイン/籐工芸品メーカー「ツルヤ商店」
ギャラリー・ショップ「つるや品物店」。穂積繊維やエフスタイルなど、他社の商品もセレクトされている。

ツルヤ商店の改革はデザインに止まらない。次は、製作所をまちに開こうと考えた。

下請け時代には、使い手やお客さんの顔を見る機会はなかった。まずは自分たちの手仕事や商品について、周辺の人に知ってほしい。そして誰でも気軽に商品に触れられる場所をつりたいと、2009年に現在の宮町に社屋を移し、ギャラリー&ショップ「つるや品物店」オープンさせた。

ここで得たお客さんからの声や反応を、製品づくりに反映している。

変わらない手仕事、進化するデザイン/籐工芸品メーカー「ツルヤ商店」
hairuシリーズのバスケット。無垢仕上げができるのは、素材にこだわったツルヤ商店の自信の表れ。

ツルヤ商店の象徴的な商品といえば、バスケットだ。昔からお風呂場に置く脱衣カゴとして、現代ではリビングルームやベッドルームに置く収納アイテムとして、時代を問わず日常生活に求められてきた。最近では海外からの需要も高く、すっきりしたデザインのhairuシリーズが特に人気だ。

その大きな特徴は、塗装をかけない無垢仕上げにある。ラッカー(石油系を原料とする速乾性の塗料)で仕上げれば、汚れやカビが付きにくい利点はあるが、hairuでは優しい手触りとナチュラルな素材感をいかしている。白っぽい色から深い飴色へと、見た目の経年変化も楽しめる。

プラスチック製でもバスケットとしての機能は満たせるし、安価で扱いやすいかもしれない。それでもあえてこのバスケットを選ぶ人は、暮らしにこだわりを持つ人であろう。手入れをしながら使うことで愛着が増し、そのたたずまいにホッと安心する存在になっていく。

物と向き合い、愛着を持ち、長く大切に扱うこと。ツルヤ商店の製品に触れていると、そんな考え方が育まれていく。

バスケットのほか、デザイン性の高い椅子やハンガー、枕なども全国の展示会や海外から引き合いがあり、山形の伝統工芸技術として注目を集めている。

変わらない手仕事、進化するデザイン/籐工芸品メーカー「ツルヤ商店」
ギャラリー・ショップの裏にある製作所

現在、ツルヤ商店では、制作スタッフを募集している。

ショールームの裏にある製作所で、その仕事を見せていただいた。

「曲げ」「編み」「巻き」の作業を組み合わせながら、商品がつくられていく。例えば「巻き」は、単純作業のようで繊細な調整が求められる。伸縮性やしなりなど、素材の性質をよく理解した上で、手加減を加えながら丹念に巻いていく。

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バスケットのフレームとなる籐の茎の部分
変わらない手仕事、進化するデザイン/籐工芸品メーカー「ツルヤ商店」
素材を蒸らすことで柔らかくし、籐ならではの“しなり”をいかして巻いていく。
変わらない手仕事、進化するデザイン/籐工芸品メーカー「ツルヤ商店」
「骨」と呼ばれるフレームは、バーナーで熱をかけながら曲げていく。力が必要な作業。

現在、職人は5名。70代のベテランから、50代、30代と年齢層は幅広い。

「未経験でも問題ありません。精度が高い作業まですべて習得するのには2〜3年ほどかかりますが、すぐに始められる作業もあります。ものづくりに興味があり、黙々と手を動かすことが好きな人がいいですね。

いくつもの工程があり、みんなで作業を分担しながらひとつの商品が出来上がっていきます。手作業によって、材料から形が出来上がっていくのが一番のやりがいです」(会田さん)

変わらない手仕事、進化するデザイン/籐工芸品メーカー「ツルヤ商店」
インテリアとしても活躍する「籐ハンガー T」

ツルヤ商店で職人・デザイナーとして働く羽田康志さんは、東北芸術工科大学のプロダクトデザイン学科を卒業後に入社。ハンガーをデザインして、商品化を果たした。手頃に取り入れられる籐製品として、首都圏のライフスタイルショップからの注文が多く、人気の商品だ。

「今後も伝統の技術をいかしたデザインの提案や、新製品の開発もどんどん行っていきたい」と会田さんは話す。

コツコツと手を動かすことが好きな方、老舗の技術を継承し、新しいものづくりに挑戦したい方。“メイド・イン山形”を発信したい方。下記のフォームから、ご応募お待ちしています。

社名/屋号

有限会社ツルヤ商店

URL

http://www.tsuruya-net.com/

雇用/契約形態

①正社員

②契約社員(更新有) パート可

※①、②ともに3ヶ月の試用期間有

待遇

応相談 (パート/時間給)

社会保険(健康保険・雇用保険・労災)完備

仕事内容

①② 工房(工場)での籐製品の製作

勤務地

山形県山形市宮町5丁目2-27

勤務時間

AM8:30~PM5:30(休憩時間有り)

応募資格

特になし

求める人物像

①「ものづくり」が好きな方、あるいは、興味がある方

②何事にも前向きに一つ一つ取り組める方

③目指す方向に向けて、共に働く仲間を大切に思い、互いの成長を支えあえる方

採用予定人数

① 1名

② 1名

選考プロセス

一次:履歴書による書類選考

二次:弊社において面接

備考

採用時期は応相談