里山で始まった賃貸住宅プロジェクト【後編】
福岡県八女市上陽町の久木原(くきはら)地区という里山エリアで始まった賃貸住宅プロジェクト。【前編】では、そのあらましをお伝えしました。
移住促進などの施策では移住希望者にいかに地域をPRするかが注目されがちですが、本プロジェクトでは賃貸住宅の建設を通じて「地域の理解」と「受け入れ態勢の醸成」を重視してプロジェクトが進められてきました。今回はその取り組みの2つのポイントと地域社会に現れた変化をテーマにお届けします。
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地域との関係性づくり
本プロジェクトが始動するにあたって一番時間をかけた点はいかに地域の理解を得てともに同じ方向を向いて連携していけるか。
里山ながや星野川(以下、星野川)竣工後の近隣住民へのアンケートでは、当初、反対および静観が約6割、賛成と断言していただけたのも約1割。また、建設敷地は廃校になった小学校跡地のグラウンドということで地域の象徴的な場所でもあり、その点でも地域にとって大きな出来事でありました。
「アンケートで上がった声」
建設前の姿勢や懸念>
・賛成は一部、反対および静観が多い状況
・あまり関心がない
・景観が損なわれる可能性がある
・移住者と地域住民の摩擦が心配
・すぐに他の地域へ出ていってしまうのではないか
・賛成派も含め地域への影響に不安がある
・入居者が来るのか疑問である
・事業者へ対しての不安
やはり静かに平穏な時間が流れていた小さな集落に、しかも小学校跡地にいきなり賃貸住宅を建てたい!なんて、地域にどよめきが起こるのは当然です。
ただ、一方では過疎化や空き家問題など地域に対しての問題意識も持っている方も少なくなく、建設前のプロジェクト始動段階から時間をかけて何度も話し合い、お互いの考えていることを共有していったことで事業に対する理解を少しずつ得られることができました。
ここで特に大事なのは、自分たちの都合だけで先を急がず、地域の意思決定のスピード感に合わせて信頼関係をつくっていくこと。たとえ時間がかかったとしても、まずは人として自分が地域の方々と本音で話し合える関係性をつくることが、結果としてその後の展開においても物事をスムーズに運んでいくためのベースとなりました。
民間主導、行政サポートの態勢
本プロジェクトは補助金などを使っていない民間主導の事業プロジェクトであるものの、ソフト面で八女市(行政)と連携している点も大きな影響がありました。
八女市では林業の再生に力を入れていたこともあり、建物に地元の木材をふんだんに使うことで地産地消のモデルケースとして期待できること、また、小学校跡地の利活用や過疎地域の活性化という側面からもプロジェクトに賛同し、林業関係者や地域とのつなぎ役としてサポートをしてくれました。結果的に、地域と民間企業と行政というそれぞれの立場で地域の活性化協議会を結成することに。事業者としても、協議会の結成は、建てるだけで終わりではない地域コミュニティーにコミットした事業スタンスであることを地域に理解してもらうためのわかりやすい表現方法にもなりました。
前述の通り、特に地域住民からすればいろいろな不安を抱えた状態で、いわゆるよそ者の民間企業が地域に入っていくのはそれなりのハードルもあり、その点、行政という立場の人が絡んでいることで安心感が得られ、スムーズに話し合いの場が持てたことは、お互いの信頼関係を築いていく上で大きな利点となりました。
補助金に頼らない民間主導、行政サポートの態勢は、行政にとっても財政負担が少なく健全な上、民間のアイデアやノウハウを活かしながら地域のためのサポートができるメリットがあり、民間企業にとっては活動をしていく上で地域からの信頼を得られやすいというWin-Winの関係性ができるため、このような官民の連携は地域課題に対する取り組みとしてひとつの有効的な手法として考えられます。
さらには、民間企業は知恵を出ししっかり稼がないといけないので持続的な事業成果が求められ、それが結果的に持続可能な地域社会への近道となる可能性があるとも言えるかもしれません。
地域に起こった変化
このプロジェクトを通して、地域においてはいろいろな変化も起きてきました。
当初不安が大きかった地域住民も、地域に馴染めるか心配だった移住者も、お互いに日常的な交流や地域行事での共同作業などを快く受け入れ、地域コミュニティーの活性化が進んでいます。交流会ではみんなで公民館に料理を持ち寄ってごはんを食べたり、自然とお互いに顔の見える関係性もできつつあります。また、過疎化の地域には独居の高齢者も少なくなく、みんなでごはんを食べるというそれだけでもイキイキとした表情をみせてくれる。
ただそれは、地域の皆さんが前向きな気持ちで同じ方向を向いていてくれるからこそ。その一歩を踏み出せたことそのものが大きな変化でもあるのです。
その変化は、具体的な形としても動きを見せ始めました。
今度は地域主導で交流会イベントが企画されたり、遊休農地で入居者と一緒にたまねぎ栽培することを提案してくれたり、更には地域の空き家を地図にまとめて情報提供してくれたり。(ちなみに一般の不動産情報でも行政の空き家バンクでもほぼ情報は上がっていない)
そんな現場での出来事を通じて、「地域の理解」と「受け入れ態勢の醸成」を重要視してきた結果として、地域住民や移住者、関係者みんなの充実度が向上していることを実感します。
自然豊かな環境で田舎暮らしができる場所そのものは全国各地どこにでもあるものですが、その中でも、より具体的な動きを持って地域が前向きに進もうとチャレンジしている八女市久木原地区の取り組み。
様々なシーンで地方創生が謳われる今日において、いろいろなヒントが見えてくるような気がします。
物件詳細はこちら:「里山のミライをつなぐ集合住宅」
八女市のエリアガイド:「八女を知る、エリアガイド入門編」
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