ピッツァとワインのお店「フラム」
エリアリノベーションが広がるシネマ通りと旅籠町をつなぐ交差点に、新たな拠点としてピッツァとワインのお店「フラム」がオープンした。
ガラスのドアを開けると、まず一番に大きなピザ窯が目に飛び込んでくる。窯の前では店主の近藤隆幸さんがピッツァを仕込み、焼き上げる姿を見ることができる。
生地をのばして具材をのせ、赤い炎が揺らぐ窯の中に滑り込ませる。なめらかに流れるその動きは、まるでライブショーのようだ。3分も経たないうちに一枚のマルゲリータができあがった。
フラムでは、ピッツァの源流と言われるナポリピッツァを提供している。ピザ窯も本場のナポリから船便で輸送されたという。ピッツァのおいしさの最大のポイントは、出来たてを食べること。窯から出てきたばかりのピッツァは、トマトソースとモッツァレラチーズがぐつぐつと生地の上で踊っている。
店主の近藤さんは山形市で生まれ育ち、高校卒業と同時に東京の調理師専門学校に進学した。卒業後も東京に残りスペイン料理店に勤務した後、イタリア料理店でピッツァの技術を習得した。
20代後半に子どもが生まれ、仕事と子育てのより良い環境を求めて、Uターンを考えていた。その約5年後に山形へと戻り、ワインと洋食に定評がある地元の飲食店に勤め、2018年の夏、ついに独立して自身の店を構えることになった。
お店をつくると決めたとき、七日町のローケーションが念頭にあったという。ソムリエの資格を持つ近藤さんは、ワインの知識とセレクションを強みにしている。車社会の山形では、郊外より中心街のほうがお酒を楽しむのに適していると考えた。
もうひとつは、七日町への思いから。近藤さんにとって、この町は子供の頃からの憧れだったという。
「七日町にはいい思い出しかありません。子供の頃、母親に連れてきてもらってオムライスを食べたり、映画を見たり、大沼デパートのおもちゃ売り場でプラモデルを買ってもらったりして。
だけど今では七日町の象徴でもあった数ある映画館がすべてなくなってしまった。20年前に東京に出てから、帰省するたび少しずつ変化する町を見て寂しく思いながら、自分で店を開くなら七日町でやりたいと考えていました。少しでも地元に恩返しがしたいですから」
七日町のどこに店を構えるか。ピザ窯をシンボルとして、外から釜が見えるように配置したいと考え、路面の一階という条件は譲れなかった。パーティーや宴会用に、大人数でも利用してほしい思いもあった。そんな中、築85年のレトロな雰囲気をまとった3階建の建物と出会った。
リノベーションされた店内は、白い壁とモルタルの床、深いグリーンのタイルを主体としたシンプルな中に味わいのある内装。経年変化が楽しめる素材と雰囲気をコンセプトにしており、設計士が木の一枚板で自作したというテーブルと椅子たちが空間とマッチしている。
1階の奥にはワインセラーがあり、好きなワインを選んで、本格ナポリピッツァと一緒に楽しむことができる。
二階には結婚式の二次会やパーティでも利用できる広いテーブルがある。テイクアウトもできるため、いろんなシーンに合わせて使ってほしいと近藤さんは話す。
週末のランチでは別料金で、近所の菓子店「あうる」や「kotonowa」のケーキやクッキーなどのスイーツもセットで提供している。そのほか、山形の企業がつくる食品を取り入れたサイドメニューを考案するなど、フラムで食事をすることで、自然と地元の食べ物が体験できる。食材やピザ窯の薪、おしぼりなど、店を構成するあらゆるものを通じて、山形の店や企業と取引をしているという。
地元の店や企業との繋がりを大切にするエピソードから、フラムがひとつのハブとなり、地域の経済や食べ物、カルチャーが回遊する仕組みになっているように感じた。
これからも地元の結びつきを大切にしたいと近藤さんは話す。
「僕の場合は、家族や隣の人やお客さん、近くの店など、手の届く範囲までしか行動できない。でも、みんな一人一人が隣の人の幸せを考えたら、ぐるりと周って地球の裏側まで届くんじゃないかと思います。山形に戻ってからその思いは強くなりました。
これからも自分の出来ることから町に還元したいし、地元の人たちと仕事がしたいと思っています。特にこれからを担っていく若い世代と一緒に協調しながらやっていくことで、七日町をさらに盛り上げることにつながっていけば嬉しいです」
名称 | ピッツァとワインのお店「フラム」 |
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URL | |
住所 | 山形県山形市七日町1-4-27 |
TEL | 023-665-0066 |
営業時間 | 月曜日〜日曜日 ランチ 11:30 - 14:00 ディナー 17:00 - 23:00 ※ラストオーダーは閉店30分前 |
定休日 | 不定休 ※日曜日はディナーは休みですが、問い合わせで対応も可 |