【篠山】造り手の思いをまっすぐ届けるワインショップ
自然派ワインと全国のこだわり食品「葡萄屋晴治郎」
今晩のおかずはお肉。たまにはワインも一緒に楽しみたい。それなら、ちゃんとお店で選ぼうか。―そうして今、あなたは一本のワインを手に取った。そのワインにどんな思いがこめられているのか、その時あなたはどのくらい知ることができるだろうか。
「葡萄屋晴治郎」。古風な名前が印象に残るこのワインショップは、篠山城下町の中でも一番賑わう通りに面して店を構えている。ガラス張りのモダンな雰囲気のお店だが、2018年の夏までは、同じ城下町の中でも伝統的な町屋が残る通りの古民家で営業していた。店の名前はその時に名付けられ、今の店舗に引き継がれている。
実は丹波市の酒屋「リカーランドひかみや」の姉妹店である「葡萄屋晴治郎」。元々の「ひかみや」から分かれて、新しくワインショップを開いたのはなぜだったのだろう。オーナーの谷垣 裕二郎(たにがき ゆうじろう)さんに聞いてみた。
「日本酒でもワインでも、こだわって作られているものを掘り下げていったら、その深さに魅了されていくわけで、「ひかみや」でもたくさんお酒を売っているけど、自分の売りたいものだけ、薦めたいものだけを売ろうと思うと難しい。だから、自分たちのやりたいことだけをやるお店として始めたのが「葡萄屋晴治郎」」。
谷垣さんが魅了されたお酒を厳選して売るためのお店。どおりで、マニアックなお酒も多いわけだ。
日本酒でもワインでも、興味を持ったらまずは作る工程が気になって仕方ないという谷垣さん。各地の酒蔵に何度も通い、住み込みで研修にも行った。ワインに興味を持ち始めてからは、海外のワイナリーにも行くようになったという。その中でも印象的な旅が、20代前半で訪れたドイツのワイナリー。その旅には、一人の同行者がいた。
「今は奥丹波の杜氏さんで、当時は別の蔵元で杜氏をしていた青木杜氏の下、住み込みで酒造りを教わっていた時期があったんです。研修後、僕がドイツのワイナリーを巡る話をしたら、青木杜氏が『わしも一緒に行こか』って。それで、日本酒のプロを横に携えて、ワインのプロの話を聞いて、日本酒のプロの突っ込みが入って、ワインのプロの返しが入るっていう、めっちゃ濃い時間を過ごした。日本酒のプロが来たんやったらこれも飲んでくれ、これも飲んでくれ、みたいな感じで、普通に行ってたら出来へんような体験をめちゃできて」。
同じ醸造酒と言っても、ワインと日本酒では原料も作り方も全く違う。けれどその時、谷垣さんはそれぞれの造り手たちの間に同じ情熱を感じたという。この情熱を、彼らが作品に込めている思いを伝えたい。「葡萄屋晴治郎」のこだわりは、そこにある。
「造り手の思いを、なんの脚色もせずに、ストレートにお客さんに伝えたい。その、伝えたい事の間に、アルコール飲料っていう媒体がある。」
「葡萄屋晴治郎」が篠山にオープンして今年で6年目。谷垣さんにはやってみたい計画がまだまだある。2019年の3月から「葡萄屋晴治郎」で開催される「満月Bar」は、満月の夜だけ開かれる自然派ワイン中心のお洒落な立ち飲みバーだ。
そして、月に一度、篠山のイタリアン「カーザ デラ アミーチ」とコラボするワイン会。店頭で商品を買うだけではなかなか伝えられない、そのお酒の歴史や文化、作り手たちが掛けた思い。どちらのイベントも、目の前のお酒をより楽しむために、もう一層深いところまで連れて行ってくれる。興味があれば、ぜひ問い合わせてほしい。
ワインも日本酒もビールも、基本的な造り方や原料は古くから大きく変わることはない。伝統的な流れの中に、新しい要素を少しずつ加えて、より美味しく、これまでになかった新しいものを生み出そうという造り手たちの努力と情熱と愛情があって、進化を重ねてきた。「葡萄屋晴治郎」はそうやって生み出されてきた作品と造り手たちに敬意を添えて、私たちにまっすぐ届けてくれるワインショップなのだ。
篠山に来た際は、ぜひ立ち寄ってみてほしい。あなたが好きになるお酒がきっと見つかるはず。