住宅地に囲まれたサンクチュアリ「広町の森」
鎌倉に住んでいてよかったな、と思うことのひとつに、思い立ったときにすぐに自然に触れることができる、ということがあります。
みなさんは、鎌倉の南西部に、自然のままの姿が残されている森があるのをご存知でしょうか?宅地開発の波に飲み込まれそうになりながらも、市民運動によって守られた森が、「広町の森」と呼ばれる場所。まさにサンクチュアリ(聖域)なのです。
「広町の森」の正式名称は「鎌倉広町緑地」です。鎌倉市の南西部に位置し、腰越・津・鎌倉山・七里ガ浜の住宅地に囲まれた緑地です。広さは約48ha(東京ドーム10個分)、外周路をぐるり一周すると約2時間、尾根あり谷ありの気軽に歩けるハイキングコースです。
森への入口は5ヶ所。住宅地からいきなり森へ入るには少し勇気が要りますが、一歩足を踏み入れると、まるで「どこでもドア」で入ったかのように、一瞬で雑音が消えて静寂の世界が広がります。
歩いていくうちに聞こえてくるのは、鳥の声、風に揺られる葉っぱの音、ひんやりとした土の匂いと土を踏む感触、優しい緑色と美味しい空気。普段の生活では体験できない音や色にあふれ、五感が目覚めて身体が喜んでいるのを実感できます。
鎌倉市は、「広町の森」を都市林として保全することに決め、公園として利用するための整備を行い2015年に都市公園として開園しました。森の中の道は程良く整備され、湿地の中に木道が設置されたり、必要な所には階段があったりと、とても歩きやすくなっています。コース内にはあちこちに案内図や標識があるので、迷う心配もありません。
森の中は湧き水が流れ、カエルやトンボ、ホタルなどの生物をみることができます。特にホタルは、ゲンジボタルとヘイケボタルの両方が見られるということで、全国的にも珍しい場所なのです。毎年、5月下旬から7月末までの約2カ月間にわたりホタルを観察できます。ゆらゆら舞う小さな黄緑色の光を求めて、薄暗い森の中へドキドキしながら入るのも、この時期ならではの楽しみです。
春の山桜や新緑、田んぼやガマのある里山風景、蝶やクワガタなどの生き物たち、鳥やリスの鳴き声、秋の紅葉など、年間を通じてさまざまな表情を見せてくれる「広町の森」。
都市公園とは言っても、ほぼ自然のままの場所ですから、スニーカーを履いて、水やちょっとした食べ物、虫対策など必要最低限の準備をして、安全に楽しんでほしいです。
今日は森へ行こう!と思い立ったら、「広町の森」へ出かけてみませんか。一度訪れたら、自分だけの特別な場所にしておきたい、と感じてしまうかもしれません。
名称 | 「広町の森」(鎌倉広町緑地) |
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