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YIDFF2019レポート 日台国際共同プログラム「ともにある Cinema with Us 2019:災害とともに生きる」

2019.10.30

山形国際ドキュメンタリー映画祭(YIDFF2019では、開催から6日目となる1015日夜、山形市内のダイニングバー・ブルーノにて、特集プログラム「ともにある Cinema with Usで招待した監督やその他ゲストを招いての交流パーティー「台湾ナイト」が開催されました。

YIDFF2019レポート 日台国際共同プログラム「ともにある Cinema with Us 2019:災害とともに生きる」
「台湾ナイト」のようす /photo: Minoru Nasu

30周年を迎えた今年の映画祭では、東日本大震災の起きた2011年から続く震災記録映画特集プログラム「ともにある Cinema with Us」において、本映画祭では初となる日台国際共同プログラム(共催:台湾文化部・台北駐日経済文化代表処台湾文化センター)を展開。ともに歴史上多くの災害に見舞われてきた日本と台湾両国で制作された12作品を上映しました。折しも会期中に台風19号が列島を直撃し、多大な被害が全国各地にもたらされ、上映スケジュールやパネリストの参加旅程にも大きな影響が出ることとなりました。また作品上映の他、「災害とともに生きる台湾と日本における映像記録運動の現在」と題して、デジタルメディアへと移行する今日の状況下に、災害を記録すること、表現することを日台両国の映像作家や研究者がともに議論するシンポジウムも開催されました。

YIDFF2019レポート 日台国際共同プログラム「ともにある Cinema with Us 2019:災害とともに生きる」
山形美術館で行われた「災害とともに生きる」シンポジウムのようす(山形国際ドキュメンタリー映画祭提供)

パーティーの冒頭で、台湾文化センターセンター長の王淑芳さんは「今回のテーマは『災害とともに生きる』ですが、災害は日本と台湾にとって避けては通れない問題です。先週末の台風19号発生においても、台湾の人たちは日本の痛みを我が事のように案じ、1日も早い復興を祈っています。そして今回上映された作品を通して、台湾と日本とがより助け合っていくよい関係が築けることを願っています」と挨拶しました。

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挨拶する台湾文化センターセンター長の王淑芳さん /photo: Minoru Nasu

本映画祭で上映された12作品は下記のとおり。日本側からは、東日本大震災から8年が経過した今も、被災地に滞在しながら人びとの姿を記録し、作品へと昇華して各地で上映を行なう日本の作家たちの活動を紹介。台湾作家の作品の選定に協力した台湾国際ドキュメンタリー映画祭ディレクターの林木材(ウッド・リン)さんは、本プログラムでは2009年に台湾各地を襲ったモーラコット台風とその被害について取り上げた作品が選ばれているとし、これらの作品は「被災者の心のうちへの旅に私たちを連れ出し、彼らがそこにどう意味を見出そうとしたかを示してくれるだけでなく、台湾ドキュメンタリーの多様さをも見せてくれるだろう」との言葉を寄せました。
(取材:那須ミノル、文:井上瑶子)

【作品紹介】

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春を告げる町
HIRONO

日本/2019/日本語/カラー/デジタル・ファイル/130
監督、撮影:島田隆一 助監督、録音:國友勇吾 編集:秦岳志 整音:川上拓也 音楽:稲森安太己 製作:広野町、JyaJya Films 配給:東風

東日本大震災以降、刻一刻と変わり続ける福島県広野町の景観が長期にわたり記録されている。本作は、これまで/これからも広野町で生活するさまざまな人びとの想いを描くことによって、震災、原発事故が広野町に生きる人びとと町に何をもたらしたのかを、映像に残すことを目的に制作された。そして作品全体を通して、日本の今そのものが語られようとする。(「災害とともに生きる」特集チラシより。以下同)

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この空を越えて
Over The Sky

アメリカ、日本/2019/日本語/カラー/デジタル・ファイル/42
監督、撮影、編集:椎木透子 録音、整音:エリック・サントス 提供:Toko Shiiki Imagery

東日本大震災による被害と原発事故の影響に苛まれながらも、被災から1ヶ月後に練習を再開した福島県南相馬市立原町第一中学校の吹奏楽部。生徒たちの音楽への熱意とそれに懸命に応える顧問の阿部和代の姿を追い、音と想いが紡がれていく。2017年、かつて水爆実験に遭遇した史実を元に作曲された「ラッキードラゴン」を携え、彼らは東京での音楽祭へと向かう。

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未来につなぐために~赤浜 震災から7
Fight for the Future

日本/2018/日本語/カラー/デジタル・ファイル/52
監督:小西晴子 撮影:小西晴子、古戸英彦、山内大堂、辻井潔 編集、整音:濱口文幸記念スタジオ/安岡卓治、川久保直貴 製作会社:ソネットエンタテインメント 配給:ドキュメンタリーアイズ

東日本大震災における22メートルを超える大津波と火災で壊滅的な状況となった岩手県大槌町。国と県は、津波対策として、高さ14.5メートルの巨大な防潮堤の建設を提示するが、赤浜地区の住民はこれを拒否した。政治状況に揺られながらも、生まれ育った赤浜地区の未来のために闘いを続ける住民たち。その姿を彼らの郷土への想いとともに映像は記録する。

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飯舘村に帰る
Return to Iitate Village

日本/2019/日本語/カラー/デジタル・ファイル/55
監督、撮影、編集:福原悠介 製作:島津信子、福原悠介 協力:3がつ11にちをわすれないためにセンター(せんだいメディアテーク) 提供:ペトラ

東日本大震災による原発事故の影響で、思いもよらず避難しなければならなかった福島県飯舘村の人びと。避難指示が解除され、6年以上続いた仮設住宅での暮らしから、村に帰る選択をした村民たちは、かつての村の様子や帰村後の暮らし、村への想いを語る。語りを聞き、身ぶりを捉えた映像の記録。

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Photo: Tomomi Morita

二重のまち/交代地のうたを編む
Double Layered Town / Making a Song to Replace our Positions

日本/2019/日本語/カラー/デジタル・ファイル/81
監督:小森はるか+瀬尾夏美 撮影、編集:小森はるか、福原悠介 録音、整音:福原悠介出演:古田春花、米川幸リオン、坂井遥香、三浦碧至 作中テキスト:瀬尾夏美 ワークショップ企画・制作:瀬尾夏美、小森はるか 提供:Komori Haruka + Seo Natsumi

2011年の東日本大震災後、小森はるかと瀬尾夏美は、陸前高田で生活をしながら制作を続けた。本作は、2人がワークショップのかたちで4人の出演者を募り、町を訪れた彼らが、人びととそこにある風景へと関わる過程を見つめ、記録している。震災の体験が共有される機会が減りゆくなかで、瀬尾の制作したテキスト「二重のまち」の物語とともに、新たな出会いと対話が展開されていく。

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心の呼び声
Somewhere Over the Namasia
無聲的呼喚

台湾/2012/ブヌン語、中国語/カラー/デジタル・ファイル/58
監督、編集:蔡一峰(ツァイ・イーフォン) 撮影:蔡一峰、張育瑋(チャン・ユーウェイ)、呉学禹(ウー・シュエユー)、張天明(チャン・ティエンミン)、張嵩岳(アレックス・チャン) 音楽:希本・伊斯南冠(シプン・イスナクァン) 提供:蔡一峰

高雄県の那瑪夏(ナマシア)地区。台風モーラコットによる土石流災害を生き延びたブヌン族の人々は、どこで生活を再建するか決断を迫られる。別の土地に移住するか、再び故郷に戻るか、あるいは転売が許されない無償の被災者支援住宅に一生暮らすのか。しかしいずれを選択しても、「故郷の山に帰る」という彼らの願いは変わらない。

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カナカナブは待っている
Kanakanavu Await

台湾/2010/カナカナブ語、中国語/カラー/デジタル・ファイル/95
監督:馬躍・比吼(マーヤウ・ビーホウ) 脚本、編集、エグゼクティブ・プロデューサー:莎瓏・伊斯哈罕布徳(サローン・イシャハブトゥ) 撮影:張煥宇(チャン・ホワンユー)、李漢文(リー・ハンウェン)、陳金泰(チェン・チンタイ) 音楽:温子捷(ウェン・ズージエ) 製作、提供:龍男・以撒克・凡亜思(ロンナン・イサク・ファンヤス)

高雄市を流れる楠梓仙(ナンズーシェン)溪(川)のほとりに暮らしていた、400人ほどの少数原住民族カナカナブ。台風がもたらした土石流の被害により避難を余儀なくされた彼らは、再び故郷に戻り、自分たちの手で困難な家の再建に取り掛かる。父祖伝来の地で、部族の本来の暮らしと誇りを取り戻すべく奮闘する彼らの姿を記録。

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洪水の後で——家についての12の物語
Twelve Stories about the Flood 

台湾/2011/中国語/カラー/デジタル・ファイル/60
監督、編集:許慧如(シュウ・ホイルー) 撮影:姫俊銘(ジー・ジュンミン) 音楽:巴奈・庫穂(パナイ・クスェイ) エグゼクティブ・プロデューサー:陳怡如(チェン・イールー) 製作:古国威(グー・グオウェイ) 提供:許慧如

台風モーラコットにより大きな被害を被った高雄県那瑪夏(ナマシア)地区の南沙魯(ナギサル)部落。被災し、家を失った原住民の人々の、その過酷な現実、悲しみ、絶望を12の物語として記録した。

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故郷はどこに
Out of Place

台湾/2012/中国語/カラー/デジタル・ファイル/78
監督、脚本:許慧如(シュウ・ホイルー) 撮影、製作:姫俊銘(ジー・ジュンミン) 編集:陳恵萍(チェン・ホイピン) 提供:許慧如

一家のルーツが台湾原住民の平埔(ピンプー)族であるかもしれない監督の夫とその家族。その可能性を探り、自らの民族的アイデンティティについて思いをめぐらす。一方、台風によって大きな被害を受けた被災地・小林(シャオリン)村では、その平埔族の文化の継承が危機に瀕している。「故郷」の探究と喪失をめぐる思索の旅路。

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台湾マンボ
Formosa Dream, Disrupted

台湾/2007/中国語、台湾語/カラー/デジタル・ファイル/145
監督:黄淑梅(ホアン・シューメイ) 撮影:林立翔(リン・リーシャン)、楊重鳴(ヤン・チョンミン)、王宝蓮(ワン・バオリエン)、黄淑梅 編集:楊凱諺(ヤン・カイエン) 共同製作:呉乙峰(ウー・イフォン)、李中旺(リー・ツォンワン)、郭笑芸(グオー・シャオウィン)、李雅芬(リー・ヤーフン)、林錦慧(リン・ジンホゥイ)、陳亮丰(チェン・リャンフォン)、李佳音(リー・ジアイン)、黄鈺珊(ホアン・ユーシャン)、林秀華(リン・ショウファ) 提供:黄淑梅

台湾921大地震とそれに伴って発生した大規模な地滑り・土石流により、壊滅的な被害を受けた南投県中寮郷。清水(チンシュイ)村に隣接する12の被災世帯は、山に近い別の土地を借り、一刻も早い家屋の再建を望むが、郡政府の頑迷な官僚主義と規制に阻まれ続ける。監督は彼らの長く苦しい闘いに同伴し、被災者救済に対する政府の硬直的な姿勢を浮き彫りにしていく。YIDFF 2005「大歩向前走台湾『全景』の試み」にて前作『中寮での出会い』(2005)を上映。

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子どもたちへの手紙
A Letter to Future Children

台湾/2015/中国語、台湾語、日本語、ルカイ語/カラー/デジタル・ファイル/96
監督:黄淑梅(ホアン・シューメイ) 撮影:頼育章(ライ・ユーツァン)、黄淑梅 編集:蔡宜芬(ツァイ・イフン) 提供:黄淑梅

1999年の921大地震の被災地を撮影していたとき、監督は深夜、地滑りに襲われる夢を見る。10年後、その悪夢はモーラコット台風によって現実のものとなった。そして過去の植民地時代より現在に至るまで、この美しい島の自然が為政者や人々によってどのようにぞんざいに扱われ、損なわれてきたかをたどり、その負の記録を未来の世代へと伝えていく。

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帰郷
Coming Home

台湾/2018/中国語、パイワン語/カラー/デジタル・ファイル/99
監督:黄淑梅(ホアン・シューメイ) 撮影:楊重鳴(ヤン・ツォンミン)、頼育章(ライ・ユーツァン)、荘栄華(チュアン・ロンファ)、陳香松(チェン・シァンソン) 編集:蔡宜芬(ツァイ・イフン) アニメーション:林欣昉(リン・シンファン) 提供:黄淑梅

台風モーラコットによって壊滅的な被害を受けた南部・屏東(ピンドン)県の山岳地域。原住民族のルーツを持つ人々が、災害によって先祖伝来の土地が失われ、部族の伝統文化も消えてしまうという危機感から、自然豊かなその土地に戻り、子どもたちに言葉や伝統文化、生活の知恵、そして部族の魂を伝える教育活動を始める。